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元ソレッド王国に移住する

 俺は、妻達によればグリフィス国王にまんまとしてやられたらしい。

 だが、別に悪い話じゃないと全員が言うので、そのまま受ける事にした。


「でも、何をどうして良いかなんてわからないので、助けてくれる?」


 情けないけど、これが現実だ。


「「「もちろん(です)」」」


 三人共快く引き受けてくれたが、この返事の中には超常の者達の声はない。


 もちろん彼らは、俺に力が必要な事があれば無条件で最大限の力を貸してくれるが、今回の国王とのやり取りのように、人を動かす事や、人の感情に対する事など、とても苦手にしている事がようやく理解できた。


「それで、父さんと母さんはどうする?俺としては、クリスタも心配だし、一緒に来てもらえると嬉しいのだけれど」

「ああ、もちろんお前と一緒にあっちに住むぞ」

「それに、ガーグルさんや多数の冒険者とその家族、いろいろなお店を営んでいる人達も一緒に行ってくれるそうよ」


 俺の両親は、既にこの話を知っていたようだ。

 時間的におかしいので、既に国王から元王都……名前はそのままソレッド地区としたが、その統治を任される事を聞かされていたに違いない。


 そして、あの国王は、俺が断れないと知って、既に先手を打ち、移住者を選定してくれていたのだ。


 これ程の力があるのであれば、ソレッド地区も容易に統治できるはずだが、妻達によれば、俺への恩賞、恩返しとの事なので、しぶしぶ納得する事にする。


「それに、ワウチ帝国に吸収されていた国家、特にナルバ村に近い位置の国家は、ソレッド地区に庇護を求めていると聞いているから、キグスタ、頑張るのよ!」


 母さんが、無茶を言ってくる。

 統治なんてした事もないのに、できる訳がないじゃないか。


 今までのどの戦闘でも、ここまで追い詰められた事はなかった。

 涙目でヨハンを見るが、目を逸らしやがった。


 わかっていたけどな。

 

 続いて、三人の妻達を見ると、微笑んでくれた。


「皆、本当に、本当に助けて!!」


 俺と超常の者達以外が笑っているが、俺としては気が気じゃない。


 そして、俺達はソレッド地区に転移した。

 もちろん、同行してくれる全員と共に、だ。


 普通に歩きや馬車で来るには距離がありすぎる。

 これから、グリフィス王国の王都との行き来を活発にするために、この辺りも考えないといけない。


 そう思うと、生活していく中で全てが足りないと思えてくる。

 そもそも、この地区で無事な建屋はほとんどない。


 王城ですら、ワウチ帝国の面々によって部分的に破壊されている。


 修復や、新規に建屋を作る事などは、超常の者達全員にお願いすれば、即座に解決できる。


 となると、当面の問題は、

  ・王都との行き来

  ・食料の確保

  ・交易の充実

  ・防壁の作成と入国者の選別


 か?


 俺やヨハン達ではわかる訳もなく、とりあえず元王族であったナタシアに助言を求める。


「そうですね、キグスタ様の力があれば、この地区の安全は特に心配する必要はないので、先ずはその課題を解決すれば良いのではないでしょうか?ただ、これからワウチ帝国に吸収されていた人々も移住してきますので、その方達の仕事も考えなくてはいけません。もちろん、どのあたりに住居を構えて頂くかも…です」

「どれ程の人が来るかはわからないけど、この地区だけでは収まらないかもしれないと言う事?」


 このソレッド地区で人が密集しないようにする必要もあるという事かと思い、聞いてみた。


「ええ、そうです。そこで、これは私の一つの考えなのですが、グリフィス国王の王都への道中を整備し、中継地点となる町を作っては如何でしょうか?キグスタ様の力があれば、道中の安全も十分に確保できますし、道行く人々も、宿泊できる中継地点があると喜ぶのではないでしょうか?」


 有益なアドバイスをもらったので、早速思いついた事を伝えてみる。


「じゃあ、王都へ急いで移動する場合は、ワウチ帝国に顕現させていた龍達を使うとかはどう?」

「良いかと思います。でも、誰でも安易に使えるようにしては、中継の町が寂れてしまいますので、ある程度の制限は必要だと思います」


 よし、じゃああっちの国に出しっぱなしにしている龍をここに戻してもらおうかな。

 勢いで言ってみたが、あの龍達は人を乗せる事ができるのだろうか?

 それに、どの程度の時間でここと王都を繋ぐ事ができるのかわからない。


 焦らずに作業すれば良いか?


「我が君、もしよろしければ、我らの力をお使いいただければ、転移門も作成する事ができますが、如何でしょうか?」


 そうだよね、ヨハン達なら余裕だよね。


「ヨハン様、それは、キグスタ様やグリフィス国王など、限定した人々のみ使えるようにした方がいいと思います。あまり安易に長距離移動ができる事を公にするのは、人々を堕落させてしまう可能性もありますし……」


 それはそうだな。

 ヨハンも納得したように頷いている。


「なるほど、ためになります」


 本当に感心したような感情が伝わってくる。ヨハン達も人の考えなどについて勉強している最中だからな。


 とすると、とりあえずソレイユに龍について聞いてみるか。


「ソレイユ!」

「お待たせいたしました、我が主」


 全く待っていないが、いつもの事なので気にしない。


「ワウチ帝国に顕現させている龍達、今後ソレッド王国で顕現させておき、この地区と王都へ人の運搬に従事してもらおうと思うのだが、安全に人を運ぶ事はできそうか?」

「可能でございます。彼らも我が主のお力になれると、喜ぶでしょう」


「ありがとう。運搬を頼んだとすると、ここから王都まで、どの程度で到着できそうかわかるか?」

「少々お待ちください……乗せる人数や天候にもよりますが、一時間程度で到着することが可能です」


 少々間があったのは、具体的に距離を測って計算でもしたのだろうか。


 だが、普通の馬車を使用したら一週間程度、歩きなら一月程度必要になるのだから、破格のスピードだ。

 確かに、これを誰にでも制限なく利用させてしまうと、中継の町には誰も立ち寄る事はなくなるな。

 気を付けよう。


「じゃあソレイユ、これからはこのソレッド地区に力を集中したいので、今までの虫型魔獣を含めて、全て解除(・・・・)して、龍達をソレッド地区に呼び寄せておいてくれる?」

「承知いたしました」


 目の前に、五匹の龍が現れる。

 もちろん、サイズはかなり小さくなっており、愛らしい。


 だが、本来の姿は巨大で、その存在だけで武装国家と言われているワウチ帝国を完全降伏させた存在達だ。


 「彼らが、是非とも我が主にお目通りしたいとの事でしたので、ご了解を頂いていない状態で申し訳ありませんが召喚させて頂きました」


 深く頭を下げてくるソレイユ。


「いやいや、全く問題ないから。むしろ、俺達の力になってくれた龍達にお礼を伝えたかったのだから、こっちがありがとうだよ」


 嬉しそうな表情のソレイユと、キュウキュウ言いながら俺の周りを飛び回る龍達。


「きっとソレイユが既に伝えてくれていると思うけど、これから、このソレッド地区に住んでもらい、必要に応じてグリフィス王国までの人々の運搬をお願いしたい。ないとは思うけど、万が一外敵が来た場合の対処も頼みたい。よろしくな?」


 「「「「「きゅ~」」」」」


 一際高い声で了解の意を伝えてくれた龍達は、ソレイユの後ろに飛んでいき、俺の方を向いた状態で、キレイに並んでいる。


 こう見ると、ワウチ帝国からしてみれば脅威の存在であった龍達は、かわいいペットに見える。


「かわいいですね~」


 ナタシアも、龍達を見て同じような感想を持ったようだ。


 こうして、とりあえずの方向だけは決まったので、活動を開始することにして、超常の者達全てを顕現させて、作業を開始することにした。


 普通の感覚ならば相当の時間が必要なのだが、既にこの力になれてきた俺は、どんなに遅くても明日の朝には全ての作業が終わっているだろうと確信した。

今週末には、修理中のパソコンが戻ってくる予定です

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