ここではない別の世界
どうやったって消せやしない悲しみを無理矢理消そうとはせず
わたしはあなたを“別の世界”に住まわせる
あなたは消えたのではなく
ここではない別の世界に旅に出たのだと
そう考えることで自分を納得させる
受け入れられない現実
それを脳が理解しても
心が拒絶する
あなたは今旅をしている
ここからは見えない別の場所を
それでいい
だからあなたは消えたんじゃない
今もどこかで生きていると
そう思えば少しは楽になれる
渦の中でも世間は動き続け
生まれる者去る者は後を絶たない
どんどん更新されていく情報
その中からあなたの情報を検索してしまうわたし
知りたい衝動が抑えらない
それが真実かデマかわからなくても・・・
見たい衝動が抑えらない
喪失感しか残らなくても・・・
同じ気持ちの人に「いいね」して
やつれた顔で溜め息を吐く
夏バテのせいかなと理由を付け
一つ二つ三つ・・・
落ちる溜め息が
止まない雨になる
休憩時間 一日の終わり
ふとした瞬間 危うくなる心
何もない虚空見つめて
その奥にあなたを思い描いてしまう
時が忘れさせてくれるなんて奇麗事だ
胸に大きな穴を開けたこの「現実」を
わたしは決して受け入れられない
受け入れたら 壊れて消えてしまうだけ
向こうに伸ばしかけた手を引っ込めて
見えない虚空に向かって微笑んだ
どうやったってこの悲しみは消せやしない
だからわたしは
あなたを“別の世界”に住まわせる
あなたは消えたのではなく
ここではない“別の世界”に旅に出たんだと・・・