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一時間企画

わんこ系幼馴染とお茶会する話

作者: アオニシキ

一時間半で創作しました。

テーマは「お茶会」「犬」


 寒くもなく、暑くもない。

まぶしいほどに太陽が主張するほどの快晴という訳ではないけど、灰色で重苦しいほどの閉塞感を感じるほどの曇天でもない、青と白の空模様。

 そんな特別でもない今日はいつものお茶会の日だ。


「ソウ! 今日はシュークリーム買ってきた!」


 褒めて褒めて、とばかりにニコニコと飛んでくるかわいい幼馴染を受け止めてその頭を軽く撫でてやる。


「相変わらず嬉しそうだな」


「……ソウはうれしくないの?」


 上目遣いでこちらをそろりと伺うように見てくる幼馴染をみてプルプル震える子犬を連想しつつ、このかわいい幼馴染の不安を解消させるように笑いかける。


「そんな訳ないだろ、シロの笑顔を見てるとこっちまで楽しくなってくるからな」


「よかった! ……ね、ね、ソウは何買ってきたの?」


 そうすると本当に安堵したような顔になって、真っ赤になった顔を隠すようにすり寄って今日の甘味を聞いて来る。そんな幼馴染を愛しく思いながら彼女の好物を答えるのだった。


「僕はミニドーナツを買ってきたんだ。じゃあ、一緒に食べよっか」


「そうだね! お茶会をしよ!」


 こんな風に二人でお茶会と称してスイーツを食べる甘い甘い幸せな時間。こんな穏やかな普通の日が永遠になればいいのにと青白の空を見上げた。





 このお茶会を始めるきっかけは僕の幼馴染の井貫いぬき志論しろんの言葉だった。


「ソウ! ソウ! 聞いて聞いて! 海老鯛亭のケーキ貰ったの!」


「海老鯛亭? あの新進気鋭の職人がいるという店のケーキか」


「うん。あの安くて甘いケーキで有名なあそこ!」


「安かろうが甘いがコンセプトの場所だよな」


 通っている高校からの帰り道、日直の仕事を終えて(ぼくの名前は猪瀬いのせ早生そうせいなので井貫いぬきと出席番号が近く必然的に日直が同じになるのだ)二人でゆったりと帰ってるとき都成を歩く彼女からの海老鯛亭のケーキの話。


 僕は一応男だが別に甘いものが嫌いなわけではないし、普通にケーキとか好物なのでうらやましいと自然にそういった。すると幼馴染は少しこちらを伺う様に言った。


「え? ソウも食べる……よね? 一緒に食べよ? ね?」


「いいのか? 一緒に食べれるのならうれしいけど」


「もちろんだよ! やった!」


「でも貰ってばかりじゃあダメだよな……おし、僕のお気に入りの甘味を買っていくぞ」


「いいの? 楽しみ!」


 そんな幼馴染の喜びようを見て自然とこちらも笑顔になった。その日の海老鯛亭のケーキを挟んだお茶会の終わりに僕に寄り添って甘えてくる幼馴染は寂しそうにこう言った。


「すごく楽しかったね。もっとこうしていたいな」


 もっと体を寄せて甘えるように伺うように「あったかいの」と真っ赤になって言う幼馴染に僕は次の日直の日にまたお茶会をするように約束した。


「じゃあさ、次に日直をいっしょにするときに、甘いもの持ち寄ってお茶会しよう。今日みたいにさ」


「いいね! ありがとうね。嬉しい」


 シロと食べた甘い甘いケーキが空間に溶けたように感じた。





 目の前には僕の好物のシュークリーム。シロの好物のミニドーナツ。あとオレンジジュース。紅茶は入れるのが大変だし僕も幼馴染もあまりこだわりはないから──寒い日は紅茶だけど──今日みたいに穏やかで落ち着くような日はオレンジジュースなどのジュースを二人で飲む。

 お茶会だがお茶は出ないことは、もはやお茶会というのが口実に過ぎない事を表しているように思った。


「ミニシューもあるよ! どうぞ!」


「ほろほろ崩れるミニドーナツだ。美味しいぞ」


 二人で持ち寄ったものを軽く説明して同時に手を付ける。しばらく穏やかな時間が流れる。白い雲がゆらゆらと流れ、太陽がほほ笑むような落ち着いた天候。


「へーわだねぇ」


「そうだな」


 この穏やかな時間を噛み締めるように二人で空を見上げほほ笑んだ。



 ふと隣の気配が緊張したように感じた。幼馴染は珍しく緊張しているみたいだ。理由は……なんとなくわかる。僕も同じだから。


 だからこそ、先に言わないといけない。


「綺麗な天気だよな。青と白でさ……白い雲が、とても、きれいだ」


 しっかり幼馴染を見てきれいだと言う。きっと伝わる、きっと答えてくれる。ずっと二人でお茶会をしてきた経験からくる、安心感にも似た穏やかな感情。


「そんなシロはきっと蒼天が似合うと思うんだ」


 そんな僕の曖昧な言葉に彼女は嬉しそうに──


「私も! 白い雲が青い空とずっと一緒ならいいのにって思うの!」


 そう言って今日のお茶会の前と同じように僕に飛び込んでくるのだった。






 やっぱりプロポーズはこんな僕でも先に言っておきたいと思うのだ。


「これからも、よろしくな」


 そう言って抱き寄せた幼馴染は真っ赤な顔でも嬉しそうに


「こちらこそ! 一生、一緒だよ! ソウ!」


 と、笑いその顔を見て僕もつられて笑った。




井貫いぬき詩論しろん

早生の事が好き

猪瀬いのせ早生そうせい

詩論の事が好き


二人は幼馴染でシロ、ソウと呼び合う仲

幼馴染なのでお互いがお互いの事を把握しているし、そのせいでほとんど短縮した言葉や比喩表現でも簡単に意思疎通ができる。



 二人は日直が同じになって喜んでいるが実はそんな二人を見た先生やクラスメートが日程を合わせているという裏話。つまりこいつらは学校でも終始こんな感じ、爆発すればいい。

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