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1.なろう作家、異世界入り

 

目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。


真っ白な地面に黒い空。植物や人工物のような物は一切無く、目線の先の地平線にはどこまでも無色の地面が広がっていた。


「夢でも見てるのかな、俺…」


テレビやネットでも見たことが無い不可思議な光景は、俺の知的好奇心よりも不安な感情を呼び起こす。


とりあえず何か行動しなければ。そうは思ったが、何をすればいいか全くもって見当が付かない。


右も左も、西も東も同じ色。真っ白。


もう俺はその場で足踏みする他無かった。


そんな時、どこからか女性の声がした。


「やっと起きたね。大丈夫だよ、そんなに怖がらなくたって」


声の主は、俺の真上にいた。


「ほぁ!?」


人間、本当に驚くとマヌケな声が出てしまう。しかしそれも仕方ないだろう。


何故なら、その声の主は一見高校生程の少女だったが、背中には荘厳(そうごん)な羽を持ち、それを上空5m程の位置で羽ばたかせていたのだ。


驚きのあまり口が閉じない俺を尻目に、少女は巨大な羽をばたつかせながら地上に降りてきた。


不思議な事にその羽は一瞬輝いたかと思うと、すぐに消えて無くなってしまった。


目の前で繰り広げられる超常現象に言葉を失った俺だが、少女は屈託のないニコニコ顔で喋り続ける。


「はじめまして!ボクの名前はヒナっていいます。この世界の管理をしている女神です」


“この世界の管理”だとか“女神”だとか、いきなり言われてもにわかには信じ難い。


「やっぱり夢だよな……」


てか、夢の方がしっくりくる。夢であれ。


俺は自ら頬をつねり、引っ張る。


イッテェ。夢ちゃうわコレ。


「ププッ。何してるんですか?夢なんかじゃないですよぅ」


自称女神はそんな俺を見てケラケラ笑っている。


が、俺の不機嫌な顔を見るなり、コホンと一息入れまた話し始めた。


「いいですか?ボクが貴方をこの世界に転移させたのには理由があります。それは戦乱の鎮静化です」


は?センランノチンセイカ?いやいや、ちょっと待て。


「俺バリバリの一般人なんですけど?いたいけな小市民に何しろって言うんだ?」


すると俺の言葉を聞いて、彼女はまた笑い声を上げた。


「一般人?何言ってるんです?貴方、【小説家になろう】ってサイトに小説投稿してますよね?シメサバ太郎って名前(ハンドルネーム)で」


「な、何故その事を!?」


事実、俺は大手小説投稿サイト【小説家になろう】に約半年前からシメサバ太郎という名前(ハンドルネーム)で自作の小説を投稿していた。


しかし、


「いや、だから何だって言うんだ。その事と、お前の言う戦乱の鎮静化って全然関係無いように思えるけど。」


「いいえ、そこが重要なんです!」


少女はピシッと人差し指を立て、顔を近づけた。


「ボクはこの世界の他に()()()()()()()を管理しています。しかし、その世界の管理にはボクも手を焼いてまして…。そこで思いついたんです!ボクのお手伝いをしてくれる人を見つけてようって。だから貴方をボクの元に転移させました!」


いや、俺の問いに答えろよ。


「だから何で転移させたのが俺なんだ…?ハッ‼︎もしかして俺に特殊な潜在能力が!?あるのか!」


「そんなものありません。」


ばっさり言うやん。ニコニコ顔して。


「正直、創作活動してる人なら誰でもよかったんですよね…。実はボクのお手伝いをしていただくにあたって、その人にはボクから特別な能力(スキル)を与えようと思いまして。で、その能力(スキル)というのが創作意欲の有る人にしか付与できないんです」


え、じゃあ俺じゃなくてもよかったのか?世界中にごまんと居る創作活動者の中でランダムで俺が連れてこられたのか?なんだよそれ。


「とんでもない確率だな…。まだ状況は飲み込めないけど、そのスキルってのは一体何なんだ?」


とは聞いてみたものの、異世界に来て女神から授けられるスキル。そんなもの大概がチートスキルだと相場が決まっている。さあ!下さいチートスキル!!


「はい。それではこれを!」


彼女が俺に差し出したのは、至って普通のノートとシャープペンシルだった。


「ん?なんだいこれは?」


「これが能力(スキル)です!貴方はこれを使って世界の戦乱を治めるのですぅ!!」


のですぅじゃねぇよ。わざわざ異世界来て渡されたスキルがノートとペン!?死ねってことか?


困惑する俺を見ながら、女神はこう言った。




「それじゃあそのノートに小説のキャラ設定を書いてみましょう!とびっきりカッコいいのをお願いします!!」




もう訳が分からなかった。

 

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