第23話 「命名:こてっちゃん」
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「ゲルド、ちょっと聞きたいんだが」
「この近くでいい武器を扱っている店を紹介してほしい」
『それなら「トリーノ商会」だな。』
『ギルドの斜向かいにある、でかい建物がそうだ』
『紹介状を書いてやろうか?』
「いやいい。トリーノ商会ならトリーノ会長と面識がある。なんとかしてもらえそうだ」
『意外と顔が広いんだな』
『で、武器は何にするつもりだ? 両手剣だとお前には重すぎるだろう。まぁ魔法だけでもなんとかなるか』
さすがはゲルドだ。俺の武器の相性の悪さを見抜いている。
「日本刀だ」
『なんだって? あれはただの飾りの剣じゃないのか?』
「日本刀を正しく使えば、俺ならどんな武器にも勝てる。いい日本刀ならな」
『そうか、手に入ったら一度手合わせさせてくれ』
「わかった、トリーノ商会に行ってくる」
ギルドの斜向かいの建物は、ギルドよりふた回りは大きかった。
受付けで聞いてみると、1,2階が防具、3,4階が武具を扱っているらしい。5,6階も説明を受けたが、関係ないので聞いていなかった。
7階まであるのはわかった。
まるで総合デパートのようだ。
ついでに「トリーノ」さんがいるか聞いてみたが、王宮へ行っていて不在のようだ。
残念なことに、受付けのお姉さんはケモミミ少女ではなかった。
今度、受付けの基本についてトリーノさんに講義しよう。
3階の隅の方に日本刀のコーナーを見つけた。
そこには6本だけ、展示されていた。
6本とも酷すぎて声が出なかった。
反りがない、刃文がない、横に反っている、何故か両刃になってたりして、6本とも使い物にならないのは一目瞭然だ。
「日本刀は、これだけか?」
俺はいつのまにか、側にいたトリーノ会長に尋ねた。
この片刃剣、日本刀は、ほとんどが古墳などの遺跡から出土いたします。
そのため、出土する剣のそのほとんどが錆びついております。
また、日本刀の造り方は伝承されておらず、錆びついているうちのましな一振りを鍛錬し直して、このように販売しております。
「鍛錬? 研ぎではないのか?」
『余りにも錆が覆っておりますので』
「他の錆びついている刀はどこにある?」
『地下倉庫にあります』
「ぜひ見せてくれ」
俺はトリーノさんに食いついた。
『かしこまりました、こちらへ』
おぉ〜と、ここにもエレベーターが。
ということは、地球ではすでに絶滅したエレベーターガールを見ることが出来るのか?
いなかった。
エレベーターガールはいなかった。
これはトリーノさんにデパートが、なんであるかを再教育しなければならない。
エレベーターで地下に来ると、トリーノさんが一番奥の倉庫を開けてくれた。
そこには、約100振りの日本刀が順序よく立てかけてあった。
どれも赤茶けて錆びついていた。
その中で一本だけ全体が真っ黒に錆びついた日本刀があった。
その日本刀を触っているとトリーノさんが、
『それは、硬い黒錆のせいで、鍛治も研磨も効きません。もう溶かすしかないかと』
「砥石はあるか?」
『は?』
「砥石はあるかと聞いている、一番目の細かい奴だ」
『は、はい、ただいまお持ちします』
何故か、刀の方が話しかけてきているようだった。
もう一つ、同じ銘の真っ黒になった脇差しを見つけた。
銘は、乕徹(虎徹)ではなく、「猫徹」。
なんでネコ? びょうてつ?
かっこ悪いので「こてっちゃん」と呼ぶことにした。
「今宵の「こてっちゃん」は血に飢えておる」
一度は言ってみたい言葉だ。
そうこうしているうちにトリーノさんと店員さんが戻ってきた。
『どうぞ、当店の最上の砥石でございます』
俺はウォーターで水を少し出すと、刃先の部分を一心不乱に研ぎ出した。
鐘一つ分は続けていただろうか?
刃先に刃文が見えてきた。
「この店に、腕のいい研ぎ師がいるか?」
『ここから4軒先の工房におります』
「頼むっ、その男をここに呼んでくれ」
『かしこまりました』
トリーノは、自ら呼びに行ってくれた。
しばらくして、トリーノと研ぎ師がやってきた。
「この刀を研げるか? 俺の腕では鐘一つ分で、これだけだ」
1cmほど、刃文が認められる程度だ。
研ぎ師の男は刀をまじまじと眺める。
『私は研ぎ師の「ザイゼン」と申します。ぜひとも、この研ぎをお任せください』
「よろしく頼む、金はいくらかかってもいい」
「こっちの脇差しも頼む、同じ銘だ」
「いつ出来る?」
『明後日の朝の鐘6つには』
「頼んだ」
「トリーノさん、この2本に合う鞘、柄そして鍔などの必要品一式を明後日までに揃えてほしい。出来るか?」
『承りました。明後日の鐘6つには全てご用意いたします』
「ありがとう、助かる」
俺は、もう一つの目的を思い出した。
「そうそう、助けついでに、奴隷商人を紹介してくれないか?」
4月26日
転生してから7日目 ギルマス亭1泊目
所持金:白金16枚、金貨14枚、銀貨18枚、銅貨1枚
⇨ 1,758万1千円)
朝食:500円、素材:1,650万円