第1話 プロローグ
全面改訂をしています。
目が覚めると、そこは見知らぬ森の中だった。
鬱蒼とした森の中、直径10m程度の綺麗な円で森が切り取られ草原になっている。
その草原の円の中心で、俺は横になっていた。
「一体何が?」
見上げると、木々によって円形に切り取られた青空が広がっている。
太陽がちょうど真上にあるので、時間はお昼頃だろうか。
体を起こし、ゆっくりと立ち上がってみる。
円形の草原の真ん中で、深々と眠り続けていたようだ。
体の節々が痛い。
草原の周りは、高さが30mはあるだろうか、高々とした木々が鬱蒼と生い茂っている。
それらの木々が大きな森を形作っているようだ。
自分の周りをよく見ると、所々に様々な可憐な花が、咲き誇っていた。
その花の間を、蝶が蜜を探しているのか、翔び回っている。
体感温度は20℃くらいだろう。
春のようにあたたかい。
森の奥から、聴いたことのない鳥の鳴き声が響いてくる。
「ここは?いったい」
思った瞬間に、突然目の前に
【ウェーバー王国 魔の大森林】
と文字が出現した。
「うわっ」
いったい何が起こったのか。
ここがどこかと考えただけで、場所を示す文字が現れた。
文字が半透明で、視界を邪魔しない。
まるでARの体験型ゲームをやっているようだ。
落ち着け、落ち着け、一体全体何がどうなっているんだ。
よく思い出せ、そうだ、俺は、バイクの事故で死んでしまったはずだ。
一緒にいた『聖子』はどうなったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夏のインターハイが終わり、クラブ活動を引退して初めての週末。
今日は俺の18歳の誕生日でもある。
俺と俺の彼女である聖子は、初めての一泊温泉旅行にこれからバイクで行くつもりだ。
もちろんタンデムでだ。
むふふふ、おっといけない、口元が緩む。
俺の名前は『小倉馨』
現在、橘高校三年生、インターハイが終わる8月に引退するまでは剣道部の主将をしていた。
自慢ではないが、インターハイで個人全国優勝をした程の腕前だ。
オリンピックに剣道という種目があったら、オリンピックを目指すのだろうが、残念ながら剣道という種目はない。
来年は、体育系大学に推薦で入学する予定だ。
そのため、8月のインターハイが終わって暇になってしまった。
小出聖子は、同じく引退するまで、弓道部の主将を務めていた。
聖子もインターハイでの個人全国優勝の成績を持っている。
聖子は俺とは違い、学業も飛び抜けていて、文武両道の才色兼備だ。
俺と聖子、二人が付き合っていることは、学園内では周知の事実となっている。
残念ながら、二人共学内では有名人過ぎて恋の進展はあまりない。
クラブ活動に没頭していたせいで、せいぜい手をつないだことがある程度だ。
なので引退を機に、二人でこっそりと温泉旅行に行こうと、計画したのだった。
そして今日それを実行するのだ。
何人かの友人にはアリバイ工作を頼んでいる。そのため俺は、『このリア充野郎』と、ありがたい、とてもありがたい二つ名を頂戴した。
翌日。
温泉旅行がもうすぐ終わろうとしている。まだ帰りたくない気分とともに、帰宅路をバイクで走る。
もうすぐ甘い旅行が終わる。
俺は背中に聖子を感じながら、長い直線道路を、安全運転で走っていた。
聖子が横座りをしているので、スピードが出せない。
何で横座りしてるのかって?
ふふ、聞かないでくれ。
国道を走っていると、唐突に、対向車線のミニバンがパッシングをしてきた。
と思ったらそのミニバンを弾き飛ばす勢いで、大型トラックが対向車線から中央線を越えてこちらに向かって来た。
刹那、
俺は聖子の腕を掴むと、道路左側に投げ飛ばした。
道路左側は牧草地だ。
横座りしていたのも運が良かった。
しかし、その反動で俺のバイクは大型トラックと正対し、正面衝突となった。
覚えているのは抜けるような青い空と宙を舞う俺のバイク。
『ハイサイド』だ。
死ぬんだなと、思ったところで記憶が止まった。
転生してから1日目






