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フードフェス

10連休は長くて短い。



あぁ、僕はどれだけゴールデンウィークを無駄に過ごしてきたか。


気づいた時にはもう最終日だった。


このままでいいものか。


そんなわけがない!


なにかしなければならない、そう思い立って僕は2万円を握りしめた。


今日一日でこのお金を使い切る。


使い切らなければ帰れない。


そんな無駄な旅。


僕は朝早くから家を出たのだった。









「所持金2万円」


電車に乗り、向かった先は大阪の福島だった。


目的はフードフェス。


全国の美味しいものが集まるというお祭りで1度は行ってみたいと思っていた。


僕は今回の旅で立てたルールは3つ


1つ︰友人を誘わず1人で行うこと

2つ︰旅行中はできる限りスマートフォンで検索せず自分の足でイベントを見つけること

3つ︰お金を使い切ること


これが今回の旅行ルールだった。


電車を乗り継ぎ、福島についたのは午前11時頃だった。


改札を抜けて駅を出た僕。


早速、第1の難関がやってきた。


"ここはどこや、どっちに行けばええんや"


僕が立っていたのは出口すぐの高架の下だった。


辺りを見渡してもフードフェスの看板など出ていない。


もう一度、確認しよう。


今回の旅行のルールはスマートフォンでできる限り検索しないこと。


自分で決めたものを出だしから破るわけにはいかない。


とはいえ福島は大阪の都会である。


いろんな人が歩いている。


スーツの人、カップル、小汚いおじさん、金持ちそうなマダム。


フードフェスを目当てにしている人について行こうにも、どの人がフェス客なのか検討もつかないのである。


もう無理かもしれない。


僕は今にでもリタイアしそうになっていた。


その心を繋ぎ止めてくれたのは、とあるカップルの一言だった。


「なんか、こっちらしいよ」


男性の方がスマートフォンを見ながら進行方向を指を指している。


神の啓示かと思った。


2人が何を目指しているのか、わからない。


しかし、現状ついていく以外ほかなかった。


ここを逃す手はない。


僕は2人が歩き出すのを確認してから後ろをついて行った。


写真で見たフードフェスは広い空き地に店舗を構えた縁日のようなスタイルだった。


福島は本当に都会だ。


このようなビル群にフードフェスなるイベントが開催されているのか不安だった。


本当にこの人達についてきてもよかったんだろうか。(すごい失礼)


疑いながらもついて行った。


駅から歩いて10分ほどだった。


デカデカと掲げられた看板が目に入った。


カップルたちは嬉しそうに


「ここだね」


と、言っている。


そう、僕はフードフェスの会場につくことが出来た。


カップルは僕と同じくフェス客だったのだ。


この時、初めて心の底からカップルありがとう、と思った。


本当にありがとう。


僕は入場料を払って会場に入っていった。


フードフェスティバル。


そこは夢の国のようだった。


ラーメン、ステーキ、寿司、唐揚げ。


好きな物の屋台が軒を連ねていた。


いろいろなメニューがありすぎて目が回るんじゃないかと思うほどの店舗数。


これは来る価値があった!


しかし、僕は事前情報を何も調べてはいない。


おすすめが全くわからないのだ。


だが、何も慌ててなどいなかった。


こういうものは下手に調べるより、行列の長いところに行けばハズレはないのだ。


僕は見渡す、列の長い屋台を探して。


そして見つける。


第1の食事!


そう、ステーキ弁当!!


僕は行列に並んだ。


この日は晴天で、ものすごく気温が高かった。


太陽と人の熱気と地面の日光の跳ね返しで立っているだけで汗が出た。


これはビールを飲むしかない。


ステーキにビール。


これは最高だ。


よし決めた。


ステーキ弁当を買った後に、買いに行こう。


それにしても、フードフェスの店舗はよくできている。


事前に行列ができることを想定して商品を出している。


そのシステムのおかげで、5分ほどでステーキ弁当を手に取ることが出来た。


僕はその足で、ビールを買いに行って、テント席の空いているところに腰を落とした。


ようやくありつけた食事。


楽しみで仕方なかった。


まずはビールで喉を鳴らす。


「あぁ〜」


暑い日差しの中、冷たいビールが体を流れていく。


これは何物にも変え難い喜びだ。


朝からビールを飲んでいる。


なんて贅沢だろう。


しかし、主役は酒ではない。


僕は弁当の蓋を開けた。


赤みの残るお肉がご飯の上に並べられていて、その上からソースがかかっている。


見ただけでわかる。


これは美味い。


「いただきます」


僕は箸を割って、早速1口食べてみた。


パクッ


これは……美味い!!


唇でも噛み切れそうな柔らかい肉に、甘いソースが絡んでいて、それと一緒にご飯を食べる。


最後に、口の中に残ったソースをビールで流し込む。


格別……!


僕は無我夢中で弁当を食べた。


そして、ビールを飲んだ。


フードフェス。


なんていうところだ。


このような店が後何店舗もあると思うと、心が踊るような気持ちになった。


食べ終わるのに時間はかからなかった。


「ごちそうさまでした」


僕は席を立つ。


次の店を探そう。


しかし、僕はその時に思い出した。


正確に言うと思い出した訳では無い。思い知った。


僕が少食であるということを。


ステーキ弁当だけならまだしも、ビールを飲んでしまったせいでお腹が膨れていた。


せめてもう1品食べたい。


だが、お腹は限界を迎えていた。


もう1品食べれば気分が悪くなるだろう。


それを押し切って食べようか。


迷った挙句、僕は心の中で涙を流した。


もうこれ以上食べられない!!


悔しいが僕はここまでのようだった。


しかし、このままでゴールデンウィーク最終日を終わらせることは出来ない。


出かけよう。


僕は新天地を求めてフードフェスの会場を後にした。


「所持金残り1万7千円」



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