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夢見の村人  作者: 結記
3/6

雨が突き刺さる日

その知らせが来たのは、どしゃ降りの雨が降る日だった。

ボロボロになったガレスが、荷物のように村長の家の前で捨てられていた。

それに気づいたのは、帰りを待っていた彼の妻だった。狂ったように哭くその声につられて、雨のなか村人たちが集まる。駆け寄ると、息も絶え絶えな、ガレスと視線が合わさった。その唇がゆっくりと動く。


『すまない』


世界が止まる音がした。


気づいたら、目の前に彼の妻がたっていた。いつも気丈にたち振る舞う彼女の顔は、涙と雨でぐじゃぐじゃになっていた。

じわじわとやって来る頬の痛みと、彼女の赤く染まった手を見て、叩かれたのだと気づく。のろのろと視線を合わせると、また彼女の瞳から涙が溢れていた。


「貴方のせいよ。貴方が、予知夢なんて見なければ……!貴方が、……貴方がぁ……」


崩れ落ちる、彼の妻。駆け寄る、彼の父。


「すまない。アスラン。今は……」


そう言う、彼の父に「いいえ、いいえ」とうわ言のように返していた、と後から教えられた。

気づいたらどうやって帰ったかもわからない、二人の家で踞っていた。


ガレスが大ケガを負って帰ってきた。

『すまない』というメッセージ。

つまり、それは。それは………





その日、夢を見た。

愛しい恋人。大切な彼女。アンナと結婚する夢を。

でも、それはどろどろと崩れて、花嫁のアンナは、あの勇者の手の中で。



『貴方のせいよ。』



そう口が動いたきがした。




それでも、僕は。


ぼくはなにもできない。



「僕に、力があれば。」



叶いもしない望みを吐き出して、瞼を閉じた。


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