シリアルキラー・その①【活き造り】
男は足に感じる痛みで目を覚ました。目覚めたばかりでまだ意識がはっきりとしない。部屋の天井を見る。ここは灯りの少ない薄暗い部屋であることがわかる。しかし、なぜ自分がここにいるのか男にはそれが思い出せなかった。やがて男の意識が鮮明になるにつれて、自身の置かれた状況に恐怖を感じた。男は部屋の中央にある台の上に両腕を広げた状態で、ワイヤーで固定されていた。その為、体の自由が利かない。恐らく両足も……。いや、男は気づいた……自身の両足の膝から下が無くなっていることに。痛みと恐怖で男は叫んだ。しかし男の声は声にならず、うぼぉぉ~と獣のような低い呻きとなった。声が出ない!?男は益々、恐怖した。何故なら男の舌は切り取られ無くなっていたからだ。
「うぼぉぉぉおおお~うぼぁおおぁぉ~!!」
恐怖と絶望で男は叫び続けた。
「そんなに叫ばなくてもいいだろう?薬を使って、さして痛みもないようにしてるんだから」
錯乱する男に誰かが話しかけてくる。
「本当は味に影響するから薬なんて使いたくないんだけど、まあ、僕の優しさだよ。痛いのは誰だって嫌だろ?」
"誰か"は優しく落ち着いた声で男に説明を続ける。
「誰でも急に旨いものを食べたくなる瞬間ってあるだろう?それが寿司だったりピザだったり、僕の場合は、君を食べたくなったんだ。それもどうしようもなくね!」
「んぶぅぅぅ~!!うぼぉぁ~!!」
男は"誰か"が説明する事の意味が理解できずただただ混乱している。
「ああ、ごめんごめん。舌が無いからうまくしゃべれないんだね?そんなに叫んで、怒ってるのかい?安心して!鮮度も良いし刺しで食べたんだけどね、君の舌はとっても美味しかったよ!思い出すだけでヨダレが……。さて今日は君のどこを食べようかな?」
「ん~~~!!んぶぅぅぅ~~!!」
"誰か"はそう言うと美しい装飾の付いたナイフを取り出し男へと近づいて行った。