表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
97/100

第97話 新しい命

その年の10月末に、涼子は男の子を産んだ。

最初の出産よりかなり年数があいていたので、涼子は不安だったが

母子共に健康。

目元が涼しげで、愛らしい子供だった。

名前は薫、夕貴が光源氏の息子の名前を付けたのだ。


そしてある日、文弥が真央の部屋で、赤ん坊の写真がゴミ箱に

捨てられているのを発見。それを拾い上げた。


『真央、この赤ん坊、ひょっとして・・』

『ええ、夕貴さんとママの子供よ。薫って言うらしいわ。』

『じゃあ、真央の弟の写真やんか。なんでほるの?』

『なんでって、私には関係ないからよ。』


すねた顔がどこか寂しげな真央。

文弥は真央の肩を後ろから抱いて、背中からささやくように言う。


『そんな寂しいこといいなや。新しい命、祝ってやったらいいのに。

ほら、ようみてみ。可愛い子やん。』

『やめてよ。文弥、そんな事言うなら帰って!!』

『ああ、ゴメン、ゴメン、機嫌なおして。真央とこうして

一緒におれるの、あと何ヶ月なんやから。喧嘩してる暇ないもんな。』

『・・・』


文弥は真央の髪をなでて、抱きしめる。

でも心の中ではきっと、この赤ん坊の写真を捨てられないでいるだろうと

信じていた。


それから、写真と一緒に捨てられていた夕貴の手紙も文弥は読んでみる。

それは直筆の手紙だった。


《親愛なる真央様へ

 お元気ですか?すっかり秋らしくなりましたが、その後お変わりありませんか?

 こちらは義母さんはじめみな元気です。

 早速ですが、10/28に涼子さんが男の子を出産しました。

 母子共に健康です。無事に生まれてよかった・・・。

 まだ認めてくれないだろうけど、あなたの弟です。

 名前は薫、桜居薫。とても可愛い、僕達の宝物です。

 また心の整理がついたら、一度でも会いに来て下さい。

 涼子さんも喜びますよ。

 季節の変わり目、お身体お大事に・・夕貴》


心優しい人柄が伝わるような手紙だった。


(なんで、こんな手紙捨てられるん?

 でも、真央にしたら・・複雑なんやろうけど・・)


そんな文弥の気持ちを知ってか知らずか

真央は憮然とした顔で言う。


『ねえ、お腹空いた、どっか食べに行こう?』

『そやな、行こか・・』


真央が新しい家族を受け入れられる日が来ることを

祈る文弥だった。








 









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ