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ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
95/100

第95話 一番聞きたい事

『今日はよく来てくれたね、ありがとう。嬉しいよ。』

『はあ、とんでもありません。』


先に握手を求めてきたのは夕貴。

男にしては華奢なイメージなのに、その手は温かいと文弥は感じた。

柔和な笑顔で強く握りしめられると、大概の相手は

(この人は裏切られないと思ってまうやろな・・)と

年若い文弥など思ってしまう。


高級中華の店

個室に通されると、男同士密室の会話と

言う威圧感があった。

高い天井には大振りなシャンデリア。


『作家って儲かるんですね・・・。』文弥は本心から言う。

『ハハ、真央ちゃんの彼氏だから見栄張ったの。正直な話。

僕はまだ駆け出しだから、涼子さんと共働きでないとね。ダメなんだ。』

『・・緊張して、オチオチ食べれません。』

『ううん、逆にこんな場所で、密室の男の会話をしてみたかったのさ、君と・・。』

『・・・・』


そんな目でみられると、男の自分でもコロッと参りそうなくらい

魅力的な夕貴を前に、文弥は思う。


(俺は一生この人には勝てんかもしれん)


先日も、夕貴と涼子が夫婦にこやかに笑う写真が掲載されている雑誌を

真央が隠し持っているのを知った。

涼子の新しい雑誌。セレブ主婦の読者相手の金満雑誌・・


(アンタ、それをどんな思いで、真央が見てるか知ってんの??)


文弥はそう思いながらも、食という欲望には勝てず、

ご馳走を食べ尽くすのについ手も口も動いてしまう。


『君は食べっぷりがいいね。見ていて気持ちいいよ。』

『ありがとうございます。』

『それより最近、真央ちゃんはどうしてるの?』


文弥は、真央が割のいいバイトとしてメイド喫茶に働いていたと

話す。


ツンデレ喫茶『ツンツン』

メニューを投げつけ、客に横柄な口をきくのがヲタクの客に受けてる。

帰る時は甘えた口調になる、その落差が面白いと言う。

今まで優等生だった真央も、人が変わったように店の中では

メニューを投げつけるのに、文弥も驚いた。

しかし変な客に目をつけられないかと心配で毎回迎えに行くのだ。


『つい先日も、僕がちょっと遅れたら、変なキモイ客に待ち伏せされて・・

 真央もそれにはこたえて、辞めたんですけどね。』

『そう、その方がいい。いつでもうちに帰っておいでと君から伝えて欲しい。』


夕貴は文弥を見つめてそう言った。

その真摯な目を見ると、文弥は一番聞きたかった事を口にする。


『夕貴さん、一つお聞きしたいんですけど・・』

『・・なに?』

『真央に、女性としての興味ありますか?』


ふいに言われ、夕貴は驚いた様子


『・・僕、新婚だよ。そんなこと聞いてどうすんの?』

『ありませんか?真央はあなたをずっと・・・』

『文弥君、その先は聞かない事にする。君もやっと真央ちゃんを

手に入れたんだろ?僕もそうさ、涼子さんをやっと手に入れた。

失いたくないもの。』

『・・・・じゃあ、全然その気持ちはないんですね?』


夕貴はそれには明確に答えず、あいまいな笑みを浮かべる。


(なんや、案外、真央にも気持ちあったりして・・・)


文弥は心の奥で、そう思ってしまった。














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