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ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
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第94話 彼の未来予想図

その頃修平は車で郊外の都市に向かっていた。

新人候補の応援。

それが誰かは聞かされてはいなかったが、由衣と共に行くように鮫島から言われていたのだ。

由衣は鼻歌まじり。嬉しそうだ。


(パパに頼んだって事か?)


由衣は察したように振り向いた。


『これから面白いものが見られるわよ。』

『はあ?』

『あなたの未来予想図かもよ。』

『???』


由衣の思わせぶりの言葉をよそに、修平は先日の波留からの

電話を思い出していた。

真央が、母親の結婚に反抗して家を出たという。

そして矢上文弥と結ばれたとのだと波留は結んだ。


(あの彼?そうかあ・・・・)


もう東京に引っ越して長いのに、いまだに関西弁を使うのに

こだわる所に反骨精神を伺わせ、天然ボケを装う柔和な風貌が

思い出された。


(あの彼なら、真央も心配ない・・)


そう思うと、不覚にも涙ぐみそうになる修平。

自ら別れを選択していながら、今更と自嘲したくなるが、遠くから

幸せを祈る気持ちは変わらない。


『結局、文弥も菊ちゃんも、真央が好きで、私は誰にも愛されなかった・・。』

『波留・・』

『でも、今は隆史さんがいるの。来年卒業したら仙台で一緒に住むつもり。』

『そうか、波留、幸せになれよ。先生にもよろしく。』

『そうね、パパ、いまだに菊ちゃんの事、恋しがってる。たまには

 電話してあげて・・。ジジイに希望を与えてあげてよ。』

『ずいぶん、優しいな。』

『・・今頃気づいた?遅すぎ~ッ。』


波留も遠くに感じた。


そう思っていたら、いきなり横を走り去る自転車。

名前を書いたのぼりをつけており、どうやら選挙の候補者のようだ。


『ああ、いたいた、ボンクラよ。』

『え?木下さん?』

『そうそう、木下とおるってベタな名前よね。さすが代々政治家一族。』


先輩秘書の木下、いつのまにか顔を見ないと思っていたら

先々月に退職したと聞いていた。

某有名大学卒、司法試験に2回落ちて挫折。鮫島の所に拾われて

見習い秘書として働いていたが、修平が入ったので体よくリストラ

されたと噂になった。


でも久々に見かけた木下は、宣伝カーの上で力強く演説していた。

足を止める人は少ないが、話は理路整然としており、

心を打つ物が感じられるのは、自分だけだろうかと修平など思う。


『気合い入ってるじゃん。別人みたい。事務所では死んだふりしてたのかしら。』


由衣は半分正直にそうつぶやいた。

(確かに・・・別人みたい。)修平もその変貌ぶりに目を見張る。


『ねえ、修平さん。』

『はい、何でしょうか?』

『パパ、ボンクラと私を結婚させたいみたい。どう思う?』


(来た来た・・何て言わせたいの。)と思う。


『私の範囲外の事ですから、何とも申し上げられません。』

『もう、このコシヌケ・・』


由衣は半分怒ったように修平を突き飛ばす。


『お嬢さん、暴力はいけません。』


苦笑しながら、木下の姿に将来の自分の姿を見ていた。








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