表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
69/100

第69話 冷たい彼

幸い、修平の手は処置が早かったので最悪の事態はまのがれる。

リハビリ次第で、普通の生活は出来るぐらいには回復するが、

指を酷使するピアニストとしてはもう絶望的だった。


卒業までの日々、それから慌ただしく迎えた看護科の大学の入学までの日々

真央はどう過ごしたのか、覚えていない。

ただ心のないロボットのように、周囲におされるように

消化したような日々だった。


修平は面会謝絶が解かれた後も、誰とも面会を拒み続ける。

真央が会いに行っても、修平の母親の葉子が仁王立ちになって、

愛する息子を守って、会わせてくれない。

普段は愛想がよい円満な母親なのに、目がつり上がって別人の形相。


『あなたが、修平とおつきあいしてる真央さんね。

ごめんなさい、息子はあなたにも誰にも会いたくないと

言ってるの。帰ってくださる?』

『でも、一目でもいいから会わせてくれませんか?私、心配で・・』

『心配してくださるのはありがたいと思ってるわ。でもね、修平は

事故のショックで、起きあがる気力もないのよ。』

『だから・・私が・・』


だから、自分がそばにいて慰めたい。そう思う真央。

なのに葉子に冷たく突き放すような言葉を浴びせられた。


『あのね、修平は事故のショックで将来の夢も希望も失ったのよ。

自分の事で精一杯なの。そっとしてあげるのも愛情じゃないの?

愛とか恋とか、戯れ言言ってる場合じゃないのよ!お帰りになって!!』


葉子自身も希望の星、自慢の息子である修平が不憫で仕方ない。

心身ともに傷ついた息子を守るしか頭になかった。


そのやりとりを聞きながら、ベットで1人涙ぐむ修平。


(ゴメン、真央、会いたいのに会えない。こんなオレじゃ会えないんだ。わかってくれ)


真央がうなだれて、病院の廊下を歩いていると、文弥がいた。

真央を心配してのことだが、

文弥には心細そうな捨て猫のように哀れに見えた。


(文弥、チャンスだよ・・)


波留が文弥に耳打ちする。修平はたぶん真央の所には戻らないだろう。

修平の性格をよく知る波留はそう思うのだ。

それだけでなく、真央に元気になって欲しいと思う波留。


(でも、そんな人の弱みにつけ込んで・・でも、そうだよな。)


イヤらしい・・と思いながらも文弥は、真央を放っておけない。


『真央、修平さんには会えたん?』

『文弥・・』


病院の廊下、

人目もはばからず、文弥に抱きつき、泣きじゃくる真央。


(可愛そうな真央、オレが守ったる。いやらしくったってエエんや。)

そう心に誓う文弥だった。


そして真央と文弥が病院内の喫茶店でお茶を飲んでいると、

窓際に座る1人の女性に目がとまる。やつれて思い詰めた風だった。


鮫島由衣だった。


『あの人、さっき修平さんの病室の前で見たで・・。』

『・・・?』

『お母さんみたいな人に、花束ぶつけられてた・あんたのせいで息子は・・・って

叫んでた。』

『ええ~????』


修平の事故の加害者は、鮫島由衣だったのだ。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ