表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
66/100

第66話 忍び寄る影

『真央、今度はピアノを弾く男?素敵じゃない。』


美術部の部長の鮫島由衣が声をかける。

その頃、真央は修平の絵を描いていた。

ピアノを弾く横顔が好きだったから、修平の誕生日に贈る為だった。


『この人、文化祭の時に来た人ね。真央の彼?』


真央は頬を赤らめながら頷く。


『いいなあ~、羨ましい。私の初恋の人もピアノを弾くのが趣味だったの。

だから、何か憧れちゃうのよね。』


鮫島由衣の初恋の相手は小学校4年の時の転校生。

ピアノを弾く涼しい顔をした少年だった。

由衣は好意を寄せていたが、その彼は由衣の友達を好きで片思いだった。


しかしその彼は、中学生の時に、転勤族の父の都合でまた転校していく。

淡い思い出だったのだ。


その面影に修平が似ていたので、一目見て心が騒いだ。


(だけど、後輩の彼氏・・)


可愛がっている後輩の彼、諦めるしかない。そう思っていた由衣。


鮫島由衣は実は1年留年していた。

表向きは病気療養のためとなっていたが、

中学3年の頃シンナーに走り、地方で治療を受けていた過去がある。


有力者である父親が手を回し、表向きにはなっていないが、

夜な夜な繁華街で遊び回っていた時期もあった。

リストカットも経験していた。

双葉に高校から編入してきた優衣の過去は誰も知らない。


父親を疎ましく思いながらも、結局その力でいつも守られてきた自分に

嫌悪感を抱きながらも生きてきたと思っている。


だから絵を描いているときだけが、生きてる実感がある・・

それから絵を描くことに没頭してきた。

シンナーも、行きずりの男達との情事も、リストカットもやめる事が出来たのだ。


今はすっかり更正した様子の由衣。

度々コンクールでも賞を受賞し、美大受験も目指している。

真央が美術部に入部したのも、由衣に憧れてのことだ。


表面穏やかな顔をしてるが、その心の奥底に激しい物をひめていた由衣。

そんな素顔を、その頃の真央も誰も何も知らなかった。


修平はその頃、もうすでに波留の父親の楽団で活動していたので

多忙を極める。大学にも通い、レッスンもこなし、

卒業も控え、真央に会う時間もままならぬ状況だったが、

会えない時間も、修平を思い、絵を描いていれば幸せだった真央。


でもその幸せは長くは続かなかった。





















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ