表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
61/100

第61話 あふれる思い

『修平さん、怒らないで聞いてくれる?』


初めてにしては、長いキスの後、真央は修平に聞いた。

まだ会って間がないのに、ごく自然に抱き合った気がする。


『なに?』

『波留に聞いたけど、波留のパパの愛人だって本当?』

『・・そんな変な奴とはおつき合い出来ませんってこと?』

『・・・そんなつもりじゃないけど・・怒った?』

『全然。そんな風に言われてるのは知ってる。ただ・・』

『ただ?』

『半分はやっかみだ。先生がオレを可愛がってくれるのを

妬いてるんだ。』


波留の父親の山野は優れた音楽家であると共に、コンクールの審査員の常連で

新しい才能を見いだすと、公私ともに面倒を見て、世に出すのを

信条としているような人物。

彼に見いだされて音楽家として名をなしている者はたくさんいる。

しかし世の常で、才能を持つ者を妬む輩はその数十倍いるのだ。

修平も最初はよくいじめられたのだ。


『お前が今度のお小姓か?』とあからさまに言われることもある。


ただ山野に才能を見限られ、捨てられたと思いこんだ弟子のうちの何人かが

セクハラを受けたと吹聴したり、

波留に乱暴を働いたとして半殺しにされ、手を焼かれたと言う噂もあった。


『先生は純粋に才能ある者を育成することに生き甲斐を感じてるような人だ。オレは尊敬してる。』

『じゃあ、波留のママにも愛人がいるのは本当?』

『ええ?真央チャン、意外に好奇心旺盛なんだ。』


修平はうすら笑うが、でも目は笑っていない。


『それは本当だ。先生公認の愛人がいる。』

『・・・どうして?』

『・・真央チャン、世の中には、君の知らない事がいっぱいあるのさ。』


(先生の名誉のために、その理由は言えないよ)


修平は真央を抱き寄せながらそう思った。


その後、文化祭で展示した真央の油絵は、学生のコンクールに出品され

高校生の部で、銅賞を獲得したので、

祖母の由子と母親の涼子が展示場にやってきた。


『最近、真央、好きな人が出来たみたい。』と由子。

涼子と二人で出かけるのは久々なのだ。


『へえ~どんな人。』

『音大の学生さんだって。この間、うちに来て、ご飯食べて行った。

きれいな食べ方をして、感じのいい子よ。ただ、』

『ただ・・?』

『何気に真央の部屋をのぞいたら、二人で抱き合ってキスしてたからびっくりした。』


(あ~ら、私も自分の部屋で、いっぱい悪い事したわよ)


涼子は由子と楽しげに話していたのに、真央の油絵の前で言葉を失った。


(このモデルは夕ちゃんなのね・・真央、あなた

まだ夕ちゃんを思ってるのね・・)


真央の思いがあふれた絵の前で、立ちすくんでしまう涼子だった。


































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ