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ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
50/100

第50話 花とミツバチ

『アンタを見てると、私、歯がゆいわ。』

ある日の放課後、波留は文弥にそう言う。


文弥は長距離の練習を終えて、更衣室に戻って行くところ。

彼は春から、短距離から転向したのだ。

有力選手が抜けてからは、文弥はクラブの期待を背負ってるが、

波留は待ちかまえて、不満を投げつけるように言う。


『それは、すんまへんな、ご迷惑おかけして・・でも、アンタに文句いわれるの

オレ、全然わからんのやけど。』

文弥はむっとして、波留に言い返す。


『真央、最近モテモテよ。長々走ってる場合じゃないと思うけど。』

『あのな、オレ、これでも陸上部の期待の星なの。もうすぐ大会もあるし、

女に狂ってる場合ちがうねん。』

『でも、隣のクラスの相沢も気があるみたいだし、他にもぞくぞくいるのよ。』

『・・・真央、その中の誰かとつきあってるん??』

『それはまだみたいだけど・・』


波留は口をつぐむが、心の中ではこう言いたい。


(菊ちゃんも狙ってるのよ~???)と。


それを知ってか知らずか

文弥は流れる汗をぬぐうこともなく言う。


『忠告、ありがとう。でも、真央は好きな人がおるみたい。』

『へっ?アンタ、聞いたの?』

『この間の日な、オレ、真央を家まで送ったんや。』


波留と修平を別れた後、互いに意識してか

ぎこちなく、会話もはずまない。

でも、文弥はめげずに、真央を家まで送ったのだ。


真央の家には、祖母の由子がいた。

由子は急な訪問にもかかわらず文弥を歓迎してくれた。

まだ若い祖母に文弥は驚いたという。

夕食を共にと言われて、文弥も一緒に和やかに食べていると、

真央の母親の涼子が帰って来た。


『それがまたきれいな人や、でもな…。』

『でも、なに?』

『えらいよそよそしい親子でびっくり。継母やけど、うちのオカンと兄ちゃんの方

 がよっぽどハートフルや。』

『プッ、ワラ人形母が?』

『ああ、真央が何か淋しそうで、男にほっとけないと思わせるのは

 あの母親のせいやと思った。』

『あんた、私だってくすぐるでしょ?』

波瑠は胸をはる。


(私だって寂しい女だよ・・)


『冗談はやめて。オレ、早よ帰る。』

文弥は、シラケた顔をして立ち去ろうとする。

波瑠は、文弥の腕をつかんだ。


『真央に好きな人がいるって、なんでわかったの?』

『オレ、みたんや。真央の部屋で。』 

『男がいたの?』

『まさか、男と写ってる写真見ただけ。』

『あんた、部屋まで行って、KISSもしなかったの?』

『…大きなお世話!それに真央は年上が好きみたい。写真の人はえらい年上やった。』

『ゲッ!じゃあ、菊ちゃんの方が有利じゃん!』

『なに!?アイツもか!』


文弥が目をむいたのが、波瑠には愉快だった。


(まるで、花とミツバチ)


真央という花を修平と文弥に競わすのも面白いと波留は思ったのだった。

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