第39話 花園で憂う?
そして翌々週の日曜日、
真央は波留と、文弥の家の『華織流』の展覧会に出かける。
まだ屋外は肌寒いというのに、デパートのそのコーナーだけは
百花繚乱の様相で、華やかだった。
中央には桜の大木を活けた大作もあり、真央や波留は目を見張る。
『すんごい!!キレイね~。』と波留は興奮気味。
二人でキョロキョロしてると文弥が近寄ってきた。
正装なので見違えて、大人びて見える。
『よう、来てくれたんや、ありがとう。』
文弥の後ろには、文弥の母親の美佐子と兄の祐介が立っている。
『おかん、こちら同じクラスの中村真央さんと山野波留さん。』
『あ~ら、もうよく来てくださって、ありがとうございますウ~。
楽しんでいって下さいねェ。』
『はい~~。ありがとうございます!!』
文弥の母の美佐子は如才ない感じで、愛想がいい。
小柄ではあるが、上品な着物を着て、家元の奥様然としていた。
しかし言葉とは裏腹に抜け目無く辺りをうかがい、顔は笑顔なのに
目は笑っていないように真央は思えた。
兄の祐介は温厚な感じで、物静かなタイプ。
社交的な文弥と対照的だった。
文弥は真央と波留を連れて会場を一回りする。
途中、カサブランカの花が活けられてるのを見た真央は、
夕貴の誕生日パーティーに花束を持っていったのを思い出した。
豊潤な香りとあいまって、夕貴の優しい笑顔を思うと
胸が締め付けられる思いがする。
(夕貴さん、いまごろどうしてるの??)
そう物思いにふけっていたのに・・・
『じゃ、オカン、オレ、お友達とお茶に行ってまいります。』
と言う文弥の大声に、一瞬にして現実に引き戻された。
真央はしぶしぶ引きつられて、鈴屋に行った。
『ひゃ~すごい。これが噂の鈴屋マウンテンパフェね。』
真央と波留の前に、てんこ盛りに盛られたパフェが並んだ。
その頂上にはショートケーキが一つ乗っかっている。
『文弥食べないの?』
『ああ、あんたらが残した分食べたるから。ええねん。』
『やだ、私達が一つ食べるから、あんた、こっち食べなさいよ。』
『ええよ、遠慮せんでいい。ホットで十分や。』
『じゃあ、いただきま~す。』
波留と真央は美味しそうに、その塔を食べ崩す。
見た目より甘さは抑えられており、完食の勢いだ。
そして何気なく波留が言う。
『文弥とお兄さん、タイプが違うよね。』
『ああ、オカンが違うからな。』
『ごめん、余計なことだったかな・・』
『別に、ホンマの事やから。でも、オレは兄ちゃん大好きなんや。
優しいし、お花の才能あるし・・ただ・・』
『ただ・・?』
『身体が弱いんや。だから、オカンが余計な野望を抱くねん。』
『どんな???』
『大きな声ではいえんけどな・・』
文弥は声をひそめて話し出した。