第38話 赤い糸の先?
そして春。
真央は高等部に進んだ。
朝いつものように飛び乗るように電車に乗り、波瑠と待ち合わせ。
クラス替えがあっても、いつまでも友達でいようと誓い合う。
『大丈夫、また一緒になる気がするよ。私たち。』
波瑠は自信満々で言う。
『え〜、だって、今度こそ別れるんじゃない?』
『ああ、でも、きっと一緒だよ。私たち運命の仲だもん。
ついでに言うと、文弥も一緒かも…』
『え?矢上君も?』
『そう、あの関西弁男も一緒かもね。』
波瑠は『運命の…』と言うフレーズが好きだ。
出会うべきにして出会ったと思いたい。
今は『運命の人』仙台の峰夫に夢中な様子。
『私、早く大人になって、峰夫さんのもとに行きたい。』ともらす。
医師か看護師になると決めたと宣言。
『真央はどうする?』と聞いてくる。
(もちろん一緒に行くよね?)
口には出さないが、無言のプレッシャーを感じるのは自分の考えすぎか?
と思う真央だった。
学校に行くと、波瑠の言う通り、また一緒のクラス。
教室に入ると、『文弥〜!』と窓際にいた文弥を見つける波瑠。
『また、あんたらと一緒かい。』
文弥は暢気に言う。
『腐れ縁もここまで来ると気色悪いなぁ。』
『何だって!』
『こう言うのも赤い糸で繋がれてるって言うんかな。』
『え?どっちと?』
『僕は二人面倒見てもいいけどなぁ〜。』
『冗談、私は運命の人がいるから、私じゃないわ。』
『そうか、そんなら真央ちゃん?』
文弥はニヤニヤ笑う。
真央は心臓が飛び出るかと思うくらいどぎまぎする。
『まあ、冗談はそこまでにして、また一緒の記念に、たまにはこんなイベントはいかが?』
まるで真央の困惑の気持ちを察したかのように文弥はそう言うと、
制服の胸ポケットからチケットを差し出す。
見ると、デパートでの生け花の展覧会の入場券。
『うちの春の展覧会の券、オカンに配って来なさいって渡された。
鈴屋のパフェおごるからけえへん?』
『いいわよ。パフェ食べたいから。真央も行く?』
『うん、いいよ。』
『ありがとう〜。助かるわ〜。』
文弥はおどけて笑う。
中学生の時に比べると、すっかり大人びて背が伸びた文弥。
陸上部のエースと期待されてるとか。
隣のクラスからも女子生徒が彼目当てにやって来る。
運命の赤い糸の先は…(じゃあ、真央ちゃん?)と言う文弥の言葉に、
わけもなくいつまでもドキドキする真央だった。