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ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
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第34話 誰にも言えない

その頃、真央は仙台に向かう新幹線に乗っていた。

仙台の峰夫の所に遊びに行くためだ。

隣には、波留が座っている。

波留は弁当を頬ばり上機嫌。

異様なくらいはしゃいでいた。


最初真央の旅行に、由子はいい顔をしなかった。

しかし、行き先が峰尾の所で、波留と一緒なのでようやく許してもらえたのだ。

峰夫は実家の個人病院に戻り、医師として働いている。

真央も峰夫に会うのは久しぶりだったので心待ちにしていた。


『あ~、久しぶりだ。電車に乗って旅行なんて。』

『そうだね、休みって、ずっと部活だったもんね。』

『そうさ、辞めて、せいせいする~。』


中学生最後の冬休み、波留が突然ブラスバンドの部活を

辞めると言いだしたのだ。

理由は、ある雑誌の読者モデルにスカウトされたから・・と

波留は言ったが、どうも理由がそれだけではないと

真央も感じていた。

しかし、波留が辞めるとなれば、真央も部活に未練はない。

同じく、波留と一緒に部活を辞めてしまった。


『ねえ、波留。』

『なに?』

『どうして、部活、辞めたの?』


話がとぎれたとき、真央は波留に聞いてみた。

表向きの理由ではなく、真実を知りたかった。


『誰にも言わない?』

『うん。もちろん。』

『あのね、鈴木が怖くなったんだ・・・。』

『鈴木先生が?どうして?』


鈴木は、クラブの顧問だ。30代後半。

子煩悩で、優しいと評判だった。


『鈴木、私のこと、好きだったみたい・・・。』

『え???そんなこと・・・・。』

『練習が終わって、遅くなったとき・・私1人だったの。そしたら

抱き寄せようとした。』

『・・・・』


おそらく、真央が風邪で休んだ日かもしれない。


『その時は、誰かが来たから、それだけで済んだけど

 それから、怖くてさ・・・。』

『・・・はあ、びっくりした。』


教師といえども、大人の男に襲われたら・・と思うと、真央は波留の気持ちが

わかる。真央もある意味、同じ気持ちを抱えていた。


『あのさ・・ウチのママね、今度再婚するかもしんないの。』

『へえ、真央のママ、きれいだもんね。相手はどんな人?』

『同じ出版社の人らしい。でもさ・・・私の事、ジロジロ見るの。

ソレも、ねちっこく・・。』

『ヒャア、キモイ。お風呂はいってたら覗かれそうだね。』


真央は藤本を特に気に入らないわけでもない。

温厚な男で、由子も気に入ってる。

ただ、新しい父親として一緒に暮らせるかどうかはまた別問題。


からみつくような視線におびえるのだ。


その頃、涼子は藤本から別れを告げられ、うなだれていた。


『君が好きなのに・・僕も自分の気持ちがわからない。

正直真央チャンを娘として接する自信がない。

拒否?じゃない。それ以上の感情を持ってしまいそうなのが怖いんだ。』


藤本は重い口で、そう涼子に告白したのだ。

(真央を女としてみてしまうってこと?まだ、15歳の女の子なのに??)


涼子は思いもかけぬ返事に、ただ途方に暮れていた。



























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