第28話 meet a boy and a girl
そして春、真央の双葉への進学が決まった。
新しい制服が届くと、真央は心嬉しく、
涼子の希望に従い、双葉を受けてよかったとさえ思う。
真央と仲がよかった美香は、結局成績が追いつかず、公立の中学校に
通うことになったのだ。
クラスの大方も公立に進むので、美香とは自然に疎遠になってしまう。
(友情って、儚い)
春の訪れと共に、少し心寂しい日々が続いたが、
真央は、もう後を振り向かないと決める。
2月の末に退院した夕貴からも祝いが届き、涼子と真央、夕貴と峰夫の4人で
会食もした。
夕貴は、少しやつれて見えたが、顔色もよく、4月ごろから一度
年内北海道に戻って、療養すると言う。
『やだ、夕貴さん、いなくなると寂しいわよ。』
すっかり、夕貴とも仲よくなった峰夫はしょげて言う。
夕貴は、峰夫のグラスにビールをそそいで言った。
『ありがとう、そういってくれて嬉しいよ。また、北海道にも、みんなで遊びに来て。』
『う〜ん、行く、行く。』
そう言っては、口を尖らせる峰夫。笑う夕貴と涼子。
真央は、まるで夕貴の顔をやきつけるように、
じっと見つめていた。
そして迎えた入学式の日。
長い、長い、講堂での式典も終わり、新しい教室に入った新入生。
『なあ、お宅、どっから来たん?』
隣に座った生徒に、真央は声かけられる。
横を向くと、天然パーマの栗毛の男子。
色が白く、涼しげな眼。
『あんたこそ、どこから来たの?』と後ろから声がする。
振り向くと、小鹿のようなショートカットの女子生徒。
愛くるしい顔をしている。
『俺?大阪からやけど。矢上文弥言うねん。仲良くしてな。』
『へえ、大阪からでも、よく入学できたわね。コネでもあんの?』と小鹿の女子
『失礼な、ちゃんと実力やで、馬鹿にせんといて。名を名乗れ。』
『ああ、私は、山野波瑠。』
『へえ、ヤマノハル?わかりやす〜。』
『うるさい、あなたは、なんていう名前。』
ひょういと自分に振られた形の真央。
『私は、中村真央。よろしく。』
矢上文弥と山野波瑠、そして真央。
この後、ずっと3人は中高の6年間なぜか同じクラスだった。
文弥は、華道の家元の息子。
波瑠は、音楽家一家に育った帰国子女。
真央の学校生活は、こうして始まった。