表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
26/100

第26話 真冬の夜の夢?

目覚めた夕貴が最初に目にしたのは…涼子。

ベッドの傍らで、うつ伏せて眠っている。時計を見たら、昼の12時半。

窓からは、薄曇りの街が見えた。

個室のようで、見舞いの花が並んでいるのが見えた。


あの日、クリスマスの夜に店で倒れたのまでは覚えてる。

今井美帆の叫び声が、遠くに聞こえた。


(最後のクリスマスだから、張り切りすぎたか…)


常連客も彼が年内に辞めるのを知ってるので、店は最高潮に盛り上がっていたのだ。


(最後のクリスマス、みんな、ありがとう)


そう乾杯の音頭を叫んで、グラスを高くかがげたら、目が眩んだ。

そのまま倒れ込んでしまった。


その後の記憶がない。


(でも、助かったみたい…。よかった・・・)


夕貴は手を伸ばし、涼子の髪をなでた。

きっと疲れてるのに、駆け付けてくれたのだ。


『あれ、夕ちゃん。気がついたの?』

『ああ・・ありがとう。』


涼子が頭をあげたが、まだ眠たげに瞼をこする。


『やだ、寝癖なんかついてない?よだれなんかくってないかしら???』

『そんなの平気だよ。いつも通り、キレイだよ。涼子さん。』

『はあ〜、嘘でも嬉しいわ。そう言ってくれると・・・』


今井美帆は、締切間近の原稿があるので、病院に運ばれたのを見届けて

帰ったらしい。

美帆と入れ替わるように涼子達が駆けつけたのだ。


待合室で、真央は峰夫と共に心配そうに、夕貴の無事を祈るばかり。

幸いにクリスマスの夜と言うのに、すぐ病院側に受け入れてもらえたので

命拾いしたようだ。


夜明け近くに、3人は帰宅するが、涼子はまた翌々日の昼に

病院を訪れていたのだった。


『真央ちゃんも来てくれたんだね。』

『ええ、真っ青な顔してたわ。もうすぐ受験なのに、心配かけないでね。』

『ああ、心配してくれて、ありがとうって伝えて。』

『うん、喜ぶわよ。きっと。』


夕貴は、思い出したように言葉を続けた。


『ねえ、俺、お花畑を見てきたよ。』

『ええ?所謂三途の川ってのォ?』

『そうかも・・祖父ちゃんがいた。向こう岸に。』

『あなたの大好きなお祖父ちゃんね。手招きされたの?』

『う・・・ん。まだ来るなって。そしたら、声がした。』

『誰の?』

『・・・へへ・・秘密。』

『そう。じゃあ、勝手に私って事にするわ。親子で絶叫してたもん。

 今井先生には内緒ね。』


涼子は、いたずらっぽく笑った。


夕貴は思う。

シェークスピアの『真夏の夜の夢』ように、

目覚めた時、出会った最初の相手に恋をするのだと。


涼子がその相手だと、初めて思った。


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ