表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンカピスコ・ten・LOVE   作者: 天野 涙
10/100

第10話 威圧する女

それから数日後、涼子の望むとおり、今井美帆は

新しい雑誌に小説を掲載することを承諾してきた。


そして、そのうちあわせに出版社にやって来たのだ。


ほんの数年前までは、普通の派遣社員だったという今井。

某携帯サイトで書いた小説が大ヒットし、本を出版・テレビ・映画になり

彼女は多額の収入を得たことだろう。


数本の連載を抱えているが、そのどの作品もヒット。

若い女性の気持ちを等身大で表現すると高い評価もあるが、

その分不遜なまでに気難しく、彼女に振り回されて

泣かされる編集者は多いと聞く。


(来たわね、今井。いざ、勝負よ。)


涼子は奮い立つ思いで、彼女を出むかえた。


『あら、あなた、確か・・中村さんね?』

『はい。』

『よろしくね。』

『はい!!こちらこそ、よろしくお願い致します。』


今井はにっこりと笑っていた。

かなり上機嫌の様子。その顔が華やいで、美しく思えた。

緩やかな巻髪、見事なネイル

メリハリのある身体。さっそうとして自信に満ちていた。


20代後半で、180度転換してしまった人生を歩む気分は

いかがなものか・・・と涼子は想像してしまった。

それで得たものはお金?男?名声?


(夕貴効果?てわけ??)


たかが男、されど男?


今井の小説の題名は『アプレ』

フランス語で『呼ぶ』と言う意味だ。


内なる心の声に呼ばれて、出会う男女の恋愛話を書くという。

濃密な愛の物語?エロ?と涼子。


『読者層は10〜20代を想定してますが・・』

『あら・・全然平気よ。そんなの。』


つんと音が鳴るかと思うくらい今井はそっぽを向く。

それがダメならキャンセルだと言わんばかり。


結局、こちらがおれる形で話は成立した。

今井は上機嫌でまた帰っていく。


EVを待つ間、今井は涼子に話しかけてきた。


『ねえ・・中村さん。』

『はい。』

『夕貴に会わせてもらって感謝するわ。』

『・・はい?』

『彼に出会って、私の内なる声が聞こえたのよ。イメージが湧いて・・たまらないの。』


今井はうっとりとそう話す。

それが涼子が気恥ずかしくなるようなくらい

艶めかしい。

男女の営みの充実感が、透けて見えそうに思えた。

そして涼子を威圧し、

それを誇示するように、今井は微笑んでEVの中に消えた。


(夕ちゃんは、マクラはしないと聞いてたけど・・・)


夕貴は、もう今井とそんな仲なのか?

そう思うと、少なからず胸が一瞬締め付けられるように思う

涼子だった。























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ