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8 低ランク用階層①



side 勇次


2階層に移り、1階層から伸びた下り階段の先に真っすぐ大通りを繋いだ。

今回から低ランク用の階層を作るわけだが…いざその時になると考えることが多い。


まずは整理していこう。


レベルの低い冒険者をまずはターゲットにダンジョンを構成していくわけだが、正直、彼らに何度死なれても、コスト的に旨味がない。

つまり、最終的な目標としては、レベルの高い冒険者に何度もお亡くなりになっていただくことが重要になるため、彼らのレベル上げが最重要課題となるだろう。


それにはまず、そもそも彼らを呼び込む必要があり、そのためのエサが必要になるわけだ。

彼ら冒険者がダンジョンに潜る目的は、お金、名声、経験、出会い、戦闘、探求心、といったところだろう。

他にも、成り行きや、お母さんに言われたから、または性的欲求などがあるだろうが、ここでは置いておくことが懸命だろう。

つまり、今挙げた彼らの目的の中で、おそらく最も多い理由に対してエサを与えれば良いということになる。

ここが[低ランク用階層]であることを考えると、お金と経験を積むこと、それにプラスしてそれがより安全に手に入るなら、他のダンジョンと差をつけ、このダンジョンに呼び込むことにつながるだろう。


つまり、この階層を作るにあたって、今まで考えてきた項目を整理すると。


・通路をランダムに変更させやすい構造にする。

・奥に行けば行くほど、宝箱内のアイテムのランクを上げ、それと同時に難易度も上げる。

・低ランク冒険者とモンスター双方のレベル上げの場を作る。


ということは、基本になる。



また、1周目の経験から、何度かこの階層を作り直すことになるのでその対策も必要になる。

つまり、低ランク用階層への入り口が1つでは、改装中に冒険者が入れなくなるため、2つ以上入り口を作る必要があるということだ。

そして同じ理由で、奥に行くルートも2つ以上必要になるだろう。

難しいようなら、迂回ルートを作れるように、施設と施設の間スペースに余裕を持たせておく必要もある。

といったことも、考えておかなければならない。



さて、次はダンジョンの構造だけではなく、お金や経験のことも考えていこう。


今現在、冒険者にとってどのアイテムが価値があるのかわからない。

となると、初めは宝箱に入れるアイテムを製作時のDPが少ない順に入れ、手探りで調整していくしかないだろう。


手探りで調整していく。

つまり、まずは冒険者にとってどのアイテムが人気なのか測る必要があるのだ。

といっても、そもそも物の価値とは人それぞれだ。

こちらからすれば、需要の有り無しで価値を評価するしかないが、その需要を測るにはどうしたらよいだろうか。


直接聞きに行くのはリスクが高いので無しとして、とりあえず、価値を時間で測るとする。

その場合、例えば15分ただ歩くだけの通路を設置し、行き止まりの宝箱に回復薬を置く、という簡易的な方法がある。

つまり、100円の絆創膏があったとして、行き返り30分の時間をかければ、ただで手にはいるというと状況を作るわけだ。

つまり、100円ではほとんど人は来ないだろうが、200円の物なら、300円の物なら、という風に、時間当たりの来る人の量で価値を判断する方法だ。

もしかしたら、製作時のコストが低いのに、人が押し寄せるようなアイテムが見つかるかもしれない。


ただ、この方法は現実的ではないので、混雑の少ない、つまり引き返す必要がない一本道の構造を考えよう。

入り口と出口を決め、両方にドアを設置し、出口は内側からしか開かないようにする。

また、中に人がいる時は、入り口が開かないようにするのだ。

そして、入り口から入った人が、出口から出て行った時のみ、宝箱が補充されるという設定にする。

この場合、入り口の外に並ぶ冒険者の人数で、需要がわかることになるだろう。


いや、もはやこの構造が並ぶダンジョンでいいのではないだろうか。


室内を単純に時間がかかるというものだけではなく、モンスターや罠を設置して、難易度を調整する。

いわゆる迷宮タイプではなく、入り口が数百個並んでおり、中にそれぞれ試練と宝箱があるという構造にするのだ。

そうすれば、混雑する入り口によってアイテムの価値を判断し、試練を調整するだけで、効率的に運営できる。

冒険者は今の力量にあった試練に挑み、経験を積み、更なる価値の高いアイテムが設置してある試練を目標とするのだ。


想像してみる。


冒険者A「どうした。お前がやられるなんざ。らしくないじゃないか」

冒険者B「俺もそう思う。だが男にはな、やなねばならないことがあるんだ」

A「ほう。男にはなんて、大きく出るじゃないか。どうせあれのためだろう?」

B「どうせってなんだよ。命より大切なものだ」

A「…そうだな。娘だろう?」

B「ああ…。娘がな……。彼氏を連れて来るらしい。同業者だ」

A「それは…。だが、お前が何か言って引く女じゃあない」

B「言うとかそんなんじゃない。娘が決めたことだ。むしろ親としては喜んでやるできだ。だが俺はよぅ。ランク251をクリアしてる父親なんだと。娘を幸せにするなら最低そのランクは越えろと、その彼氏とか言う奴によぉ、言ってやるんだ。その証明にあのクロストの剣を見せながらよ」

A「なるほどな。まぁ俺は止めはしない。だがお前の娘はその剣を売ったお金を貰った方が喜ぶんじゃねぇか?」

B「違いねぇ。だが、今のうちに500ある試練のうち半分越したいんだ。そうすりゃ箔が付くってもんよ」

A「それは…本当に娘のためか?」

B「…はぁ、そうだな。もしかしたら俺自信の為なのかも知れないな。」

A「このダンジョン…リバイバルでは命は軽い。復活できるからな」

B「あぁ」

A「俺たち奥さんもいないのにな」

B「あぁ、ところで娘ってなんだよ」

C「ちょっと二人とも、Bもデスペナでもう今日はアタックできないんだから、さっさとギルド行って解散するわよ」

AB「ヘーイ」

C「それとB。私を庇ってやられないでよ。私よりあなたの方がDPS高いんだから。それに…目の前で息を引き取っていくのを見るのは、いやな…もの…だから…」

B「いや、ほら…復活したし、大丈夫だよ。もう」

C「それでも」

A「まあ待て、妹よ場所を移動しよう。邪魔になってるし」

C「そうね。でも、死んでしまうのは反対だわ。まるで、このダンジョンマスターに踊らされているようで。気持ち悪い」



はっ。AとCは兄妹で、BとCはお互いに気があるなんて…。

…違う違う。


しかし、冒険者と管理者、お互いに効率的な方法なのかもしれない。

冒険者にとっては、探索という時間を減らし、欲しいアイテムが出る部屋に挑むことができる。

管理者にとっては、複雑な迷宮を作る必要はなく、ただそのアイテムに相当する難易度に調整していくだけだ。

…それはそれで難しそうだが。


しかし、これは俺が理想としているものではない。


俺が目指しているのは、少々無駄があっても、迷宮を作り上げる。

それを、仲間と共に乗り越えていく者達の姿を見たいためだ。


あらゆるスキルや魔法を使って、時には静かに、そして荒々しく困難に立ち向かい、そして乗り越えた者に褒美を与える。


それが素晴らしいと思わないか。


…少なくとも、表向きには。


しかし、似たような場所を設置するのも面白いかもしれないな。



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