神の一部。その一端
3話目です
1人では何も出来ない赤ん坊の体では唯一の手段としての声がでなく、意思を伝える手段が無く本当に苦労したが俺も1歳(精神年齢18歳)になり、1人でたって歩くこともできるようになった
1年過ごして最近少しわかったのだが右目から見られるこの霧のようなモヤ、これは任意でON/OFFを出来て(練習が必要だった)
右手でのみ触ることが出来る。
本で得た知識や家族の会話を聞く限りこれはマナ(魔法を使うためにはこのマナに指令を出すと魔法が発動する)だと推測している
「るー!」
ガシィッ!
……びっくりしたぁ…
いきなりアリアが後から飛びついてきたので1歳児の体幹では耐えられず一緒にそのまま顔から布団にダイブすることになった
『ありあ、びっくりするじゃないか』
「えへへー」
この世界の赤ん坊は成長が早いのかアリアは簡単な文ならなんとか理解できるようだ
他はどうか知らないからなんとも言えないが。
ああ、それにしてもアリアは今日も可愛いなぁ
思わず口角が上がる
フィリアもグリアも新しい娘ができたようにアリアを可愛がり、ヘリオスもモネも妹のようにアリアを可愛がっている
俺もアリアの母ナタリーと、遅れて漸く状況を理解したアリアの父ダーリオもまだ少し困惑しているもののよく構ってくれている
意思疎通のために何枚も何枚も紙を消費できるほどこの世界は紙の価値が安くはない。
そのためグリアが何度書いても魔力を流せば文字が消えると言う│魔道具を惜しみなく与えてくれた。
魔道具自体リーズナブルで庶民でも買えるのだがここまでの性能となると│失われた遺産であるダンジョンからの排出物、過去の遺産出なければ不可能である。こちらは馬鹿にならないほど高い。
というのも、基本この世界は詠唱無しにはそこまで強い魔法が使えない。普通の魔道具は《点火》や《水》など生活魔法が簡単に使える程でしかない。
魔法は魔力で空間上のマナに指令を出して魔法を発現させるため、魔力操作は詠唱が出来ずとも使えるので魔道具は使える。
だから俺は魔法を使えないただし、魔力は身体の中に血管のように張り巡らされており、それをポンプのイメージで魔力の循環を早くすることで身体強化の魔法を使うことは出来る
俺の魔力は一般成人男性の約10倍で年齢を重ねる事に魔力は増え、一定の年齢になると増加は止まる。まぁ、魔力の持ち腐れって奴だ。
なぜ魔力がそこまで多いのかというと右目の神眼と呼ばれる眼が俺の一般的な赤ん坊の魔力を底上げしている
神眼とは神の身体が12の部位に分かれていて、それぞれの特性を扱えるようになる│贈り物であり、《│神の一部》と呼ばれている。俺のはそのうちの左目だ。
部位は両手、両足、両目、声、舌、耳、頭、鼻、体の12部位に別れている
今確認されているのは右腕、左腕、右目、体、声、そして俺の右腕も《神の一部》だった
つまり俺は右眼と右腕を持っているということだ。《神の一部》の2部位持ちは俺の他に一人いるらしい
ここまでは文献や父親などの会話を見聞きして得た知識で具体的にどの部位がどんな能力を持つかはわからない
今俺自身のことで分かるのは眼でマナを見て(ON/OFFできる)右腕でそれを触ることが出来る…ということだけ
「るー、ぉかし!」
「ルークス様〜お菓子の時間ですよ〜」
首を縦に振り肯定の意を表してからアリアの手に引かれて…お菓子の匂いに引かれて歩く
この甘い匂い…今日はチョコクッキーかな?
「るーちゃん。アリアちゃん。おてて洗ってきてね」
『はい』
「は〜い!」
今度はマリーに連れられて、手を洗いお菓子お菓子と上機嫌なアリアをほっこりとした目で見ながらフィリアの元へ戻るとたった今焼きあがった熱々のクッキーが運ばれてきた
流石に1歳児の舌には熱すぎるのでしっかりふーふーと冷ましてもらったあと食べたがメイド陣の焼くクッキーは流石というべきか一般に売られているものとは甘さの加減や焼き加減が比べ物にならない。しかも幼児の体にも気を使っているのだろう。
3時のティータイムが終わると眠気が襲ってくる
うとうとしてるアリアと共に寝室へ運ばれると瞬く間に眠ってしまった
「飛!こいつは抑えておく…早く行け!」
『司郎…だが!』
「いいから行け!あれを止められるのはお前だけだ!」
『くそ…っ…頼んだ!』
「《━━│炎の精霊よ我が求めるは全てを焼き尽くす│神の炎》!!!!!」
『アリア!目を覚ませ!』
「何かと思えば…神の使者か…くだらん。《我が望みは世界の消滅│終焉》」
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…
『待機魔法発動《転移》さらに…《転移》。そして《絶対空間》』
「…っ!貴様ッ!!離せ!」
『《召喚:神器グングニル》アリア…くそおおっ!』
「グハッ……貴…様己ご、と…」
『っは!…てめぇ、に俺の女を…っくれてやるくらいなら…いっそ一緒に死んでしまった方が…いい、ね!!』
「止めろ…止めろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…
「…る……ん!るー…ゃん!」
…はっ!?…なんだ!?何事だ!?
「どうしたの!?怖い夢でも見た!?」
寝起きの頭を無理やり回転させて状況を確認すると慌てた様子のモネが心底心配そうに俺を抱き抱えていた
「怖かったね…大丈夫。みんな居るよ」
抱きしめてヨシヨシと背中を摩られる
…涙……?俺泣いてる?え、意味わかんねぇ。
え、夢…?
それにしてははっきりしてたような…
確かこんな風に指でマナを触って…
えっと…何書いてたっけ…ぐ、グ…グングニル…?
マナで文字をかけるみたいだ…これに魔力で指令を流す…?
[持ち主が許可していないため、グングニルの強制召喚はできません]
何コレ?
要実験だな
『大丈夫』
「ほんと?怖くない?」
首を縦に振り涙を拭うと安心した様な顔で再び抱き抱えた。
後から部屋に入って来たヘリオスはアリアを起こして意識が朦朧としたアリアを抱き抱えていた。
夕暮れ辺りなので恐らく夕飯ではなく散歩だろう
見慣れた湖を一周する
丁度いいや。少し実験していこう
『ヘリオス兄さん。魔法をみせてください』
「まほう!」
アリアもちょうどいい感じで同調してくれてヘリオスも色良い返事をくれた
「よし、じゃああそこで水魔法でも使おうか。湖なら水もあるし消費魔力が少なくて済む」
『やったー』
「わーい」
「いくよ?《大いなる水よ癒しの力を降らせ│聖雨》」
湖の水が一部分持ち上がり光を帯びると雨のように降り注いだ。濡れはしないけどなんだかスッキリした。寝起きのだるさも消えていい魔法だ
「わぁ〜!きれい〜」
『おおっ凄いです兄ヘリオスさん!』
流石ヘリオス…凄い
魔法名も分かったし使ってみるか
空間上のマナを指に集中させるイメージでその指で空中に文字を書く
『《聖雨》』
そしてそれに魔力を流してみる
[魔力確認。指定の魔法を発動します]
「!?」
「わー!また!」
「え!?なに!誰!?」
おおーーー!
魔法が使えた!
モネもヘリオスも俺たち以外の別の人物が使ったのだろうと予想して辺りを見回すが誰もいない
ちょんとヘリオスの足をつつく
「なんだい?ルークス」
俺!と言うように指で自分も指す
「…まさかルークスが今の聖雨を使ったの?」
こくこくと頷くとまさか!と言う顔になったが、何より疑って捨てるより聡明なルークスは状況を確認するため俺に質問をしてきた
「ルークスは声が出ないはずだけどどうやって魔法を使ったの?」
言うより実践した方がいいだろうか
『《聖雨》』
「これは…?」
マナを凝縮させて書いた文字はやはりほかの人にも見えるのか
アリアがさっき文字のある場所を凝視してたから若しかしたらとは思ったが…あ、これもう紙要らなくね?
『教えて貰った』
「誰に?」
『分からないです』
「いつのこと?」
いつ、と言われてもなぁ夢で見ただけなんだけどなぁ…そのまま書くか
『分からないです。けど夢で見たんです』
「夢?夢でそのなんだろう…文字?詠唱を使わない魔法を使う方法を教えてもらったの?」
『あ、えっと教えて貰ったと言うか見たのを真似して…』
「ふむ…ルークス。他の魔法も使えるかい?」
『分からないです』
「僕の魔法を起語だけで発動したとなると…もしかしたら起語だけ分かればなんでも使えるのか…?」
おお、正直詠唱とか厨二ぽくて嫌だったんだが起語(魔法を発動させるための魔法の名前。今回の場合は【聖雨】が起語)だけで魔法を使えるのはありがたい。
「じゃあ僕の知ってるものをいくつかやってみようか━━━━」
結果として使えたのは水と炎の魔法だけだった。しかし、2属性持ちはそれなりにいるのだが炎と水、光と闇、水と闇、氷と炎など反対の属性を持つ属性を併せ持つ魔法使いは少ないのだとか。
「ルークス。僕の知ってる魔法は基本の属性のみだ。派生や無属性魔法の方についてはからっきしだからルークスが他にどんな魔法を使えるのは僕にはわからない。だから父上に聞いてみてはどうだろうか?」
おお、そうか。元冒険者やっていたなら珍しい魔法使いを見たりしたことはありそうだな
「今日のことは夕食の時に父上に伝えておいてルークスから話をした時にしっかり状況を理解できるようにしておくから」
出来る兄を持つと心強い…!なんという頼もしさ!
「ね、ねぇ?さっきから何してるの?水と炎の魔法が飛び交ってたけど…」
「姉上。それは今日の夕食の時に父上と母上と一緒に夕食の時にでも話そうと思います。恐らくは例の件に関わることかと」
例の件…?
「分かったわ…そういうことならるーちゃんもアリアちゃんももう帰るわよ」
「はーい!」
『はいモネ姉さん』
「あ、もうるーちゃん。お父様とお母様がいない時はモネおねーちゃんでしょ?いつもそう言ってって言ってるじゃん〜」
あー…恥ずい…この年になっておねーちゃんは恥ずい
言わないと終わらないし実際に言う訳では無く書くだけだからマシだが…
『モネおねーちゃん』
「ん〜!恥ずかしがるルーちゃん可愛い!」
そんなモネにぬいぐるみを抱えるように両手で抱き上げられて帰宅した
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