約束
「ほら、これでいいのだろう?」
薬草を手渡される
「ありがとうございます
では、お礼の品を」
って品は既に渡してるぅ!
考えてなかった・・・まずいまずいまずい!
「えーっと少々お待ちください・・・」
アイテムの手持ちはほとんど無いし、装備も・・・何か鞄に、この際何でもいいから!
鞄を漁ると硬いものに手が当たった
先日のドラゴンを追い払った時に余った魔石か
「・・・ではこちらは報酬になります」
余った魔石が詰まった袋を渡す
「これは?」
「魔力を封じた石になります。念じるだけでエアという風の魔法を放つことが出来ますが使い切りですのでご注意を」
説明した瞬間目が輝くジェノ
「俺にも魔法が使えるということか!?」
「え、えぇ」
「試しに撃ってみていいか!?」
「ど・・・どうぞ・・・
ではエアと念じて石を強く握ってください」
1つ手渡し説明をする
それをジェノは左手に握り下へ右手は広げ目の前の木に向けて
「え?その向きだと・・・」
「エア!・・・え?今なんと?」
ドゴォと言う炸裂音と共に森からジェノの姿が消えた
ジェノが今いた場所にはクレーターと言うか地面にポッカリと穴が空いている
ジェノはと言うとはるか上空まで吹っ飛んだのだろう
下に向けて風を噴射したんだから当然だ
なぜ、右手から出ると思ったのか分からないけど私の説明不足だったかな・・・
まぁなんとかなるだろう、多分きっと
後で見舞いにでも行こう
(もう出ていっても大丈夫かの?)
(あぁ、ごめんごめん。結果オーライだけどもう大丈夫ですよ)
「ふむ・・・」
がさごそと草をかき分けて出てきたのは青いロング髪の女の子
大きな瞳は少しつり目で鼻と口がちょこんと付いている
人形のような可愛さを持った幼女が目の前にいた
「・・・どちら様ですか?」
首をかしげて真面目に聞いてみる
「妾じゃ妾、ドラゴンでは街に行けないではないか」
え・・・えー・・・と
「・・・ミケ・・・ちゃん?」
「だからそうと申しておるではないか、主殿の旦那がこのような姿格好が良いと言っておってな」
じーちゃんの趣味か・・・
目線を下に向けると東の国の民族衣装
えーと、なんて言ったっけ?確かキモノとか言ったような
「何をジロジロと見ておる」
「いえ、この辺りじゃ見ない服装だったのでつい」
「ふむ、一般的ではなかったか、まぁ許せ」
クルリンと回るミケ
うん可愛い
「ま、まぁ取り敢えず街に帰りましょう。仕事が終わったら一緒におばーちゃんとこ行きますから」
「本当じゃな、ちゃんと付いてくるんじゃぞ」
そんなに怖いのかおばーちゃん
あ、あとでおばーちゃんにお礼のテレパスしとこ
「じゃあ、戻りますか!」
・・・
「そういえば街の人たちがやたらと健康的になってたんですがもしかしてミケちゃんのせい?」
「ふむ?よくわからんが泉で水浴びを良くやっておってたからその際に魔力が漏れてたようじゃな。証拠に供給が絶たれて二、三日で戻ったであろ」
全くはた迷惑で膨大な魔力だ、流石リヴァイアサンと言ったところか
街は特に騒ぎなどなかったから問題ないだろうけど本当に適応力高いなぁこの街の人
無事クエストも終わり城下町の喫茶店で約束のパフェを待つ二人
「お待たせいたしました。フルーツパフェになります」
ウェイトレスの持ってきたガラスの器に入った色とりどりのフルーツが乗った洋菓子をみて目を丸くするミケ
「お!おぉぉぉぉ!これが!」
こっちを向いて確認するミケ
「これがパフェですよ」
頷く
「おぉ・・・」
スプーンを持ち1番上のアイスを1口
「冷たいぞ!」
「アイスと言って牛乳を凍らせた菓子ですね」
「おぉ・・・」
語彙力の消失したミケ
この後一口食べる事に菓子の説明をすることになった
・・・
街の散歩も終わり城下町の入口まで来ると酒場の前を通ると人だかりが出来ているのが目に入った
「あれはなんじゃ?」
「さぁ?何でしょうね?」
人だかりをかき分けると見知った顔が
「だからそこで俺がズバーっとドラゴンを一刀両断に叩きのめしてやったのだ!」
「クエスト終わらせた実績は認めるがドラゴンは言い過ぎでしょ、旦那。
実績の詐称で高ランクの仲間を募集するのは駄目ですよ」
「なにを!そんなことは無い。ちゃんと証人も居てだな」
ジェノと酒場の店主が言い争いをしていた
「げ」
「ミケちゃん、ここはまずいので早々に立ち去りましょう」
そそくさと退散しようとギクシャクと人混みの中に混ざろうとしていると
「おぉ!そこにいるのは村長ではないか!
見ていたのだから村長からも言ってやってくれ」
ミツカッテシマッタ
ざわざわする人だかり
視線が痛い
「・・・ド、ドラゴンを一刀両断にはしてませんが運良くオイハラッテイマシタ・・・ネ・・・」
嘘は言ってないが色々な罪悪感からか片言に
「本当にドラゴンを追い払ったのか!」
「世界を救う勇者の誕生を見ているのかもな俺たち」
人だかりが色々言ってるなぁ
「そうだろうそうだろう!この俺に任せておけ!」
調子に乗っているジェノ
困ったなぁ
このまま、旅に出したら調子に乗ったこいつは
・・・まぁそん時はそん時か!
「では勇者様こちらが勇者様が指定した条件の方になります」
どうやら仲間の候補が集まってきたようだ
「一番、戦士のザップ」
マッチョだ
「二番、戦士のマリー」
マッチョだ
「三番、魔道士のサリー」
マッチョだ
ここはボディービル大会の会場か?
と言うかまだ魔力漏れてる!?と思いミケを見るものの首を横に振っているからあれは天然物らしい
観客からも「切れてる切れてる」なんてやじが飛んでる
ゆくゆくマッチョに縁のある街だなぁ
というか魔道士は職間違えてるだろ
ジェノはと言うと雰囲気に押されて固まってる
お色気たっぷりなお姉さんが出てくるとでも思っていたのだろうか、甘い甘い
ニヤニヤしながらどうなるか見ていると
「も、持ち帰って前向きに検討します・・・」
なんとかごまかす方法を考えていたらしい
「元気そうでよかったです」
「魔法を使ってからの記憶がなくて、大怪我で自宅に寝ていたのだが何があったか教えてくれないか?」
「いやー、ははは・・・」
宇宙に旅立とうとしていたなんて言いづらい
野次馬も散り散りになり人気も少なくなった酒場でジェノと再開したものの、クエスト以降常駐村長の引き継ぎなどでバタバタしており結局見舞いには行けなかったので少々気まずい
ただ、あれからもう1週間も経っている
怪我は教会で直してもらえるから大怪我と言ってもそこまで時間はかからないはずだ
なんでまだ居るんだ?
「仲間を探していてな」
「へー、どんな方を希望してるんです?」
「き、貴様には関係ないだろう!」
あ、やっぱり良からぬ希望してるな・・・
「まぁジェノさんならいい人来ますよ!多分!」
「多分って!?」
・・・
村長村へ帰る日
村の人たちに見送られながら村を出立する
テトラちゃんは相変わらず元気いっぱいだし八百屋の女将さんはお土産に野菜いっぱいくれたし肉屋の親父さんはボディービルダーも真っ青になる健康的な肉体に白い歯をキラリとさせて爽やかな笑顔をこちらに向けている
「みなさんお元気で!」
出会いがあれば別れもある
ちょっと寂しいが
今度は旅行で遊びに来ようかな?
なんて考えているとミケが指を指して
「あれはなんじゃ?」
ゴブリンが5匹くらいで何かを殴っているのが見える
「人・・・かな?」
「目障りじゃな、水でも出そうか?」
ミケがブレスを撃とうとするのを手で制す
ミケのブレスなら余裕でお釣りが来る感じに一掃できそうだが殴られている方も一掃しかねないから軽い魔法で何とかしよう
不意打ち気味だが人助けかもしれないし許して欲しい
「雷雲よりいでよ
サンダー」
右手からゴブリンの1体に向け閃光が走る
「ギギー!」
次の瞬間にはゴブリンのウェルダンが完成した
気づいてこちらを威嚇するゴブリンににっこり笑い他のゴブリンに次はお前だ、というポーズを取るとあっさり逃げ出してくれた
「さて、誰かは分からないけど大丈夫かな?」
確認した顔は見知った顔で
ジェノが気絶していた
「・・・まだ500mもたってないのに・・・」
・・・
ミケにお願いして回復魔法を掛けてもらうと
「俺はまだやれるぞ!」
よくわからん叫び声とともにジェノが飛び起きた
「む!ここは誰だ!私は何処だ!」
頭を強く打ったらしい
「気絶していたんですよ、何やってるんですか?仲間は?」
「貴様は村長!なぜここに!?」
「それよりも1人なんですか?仲間募集してたじゃないですか」
仲間の1人くらいいるだろうと辺りを見回すも自分たち以外には1人もいない
「なかなかこの俺に着いてこれそうな奴が居なくてな
1人は手続きまで済んだのだが出発間際に辞退し出すし・・・」
あー面倒くさい奴と思われたのね
「なんの不満があるのだ・・・実力としては申し分ないだろうに・・・もう1人は手続き前に金払いのいい方に行ってしまうし・・・」
肩震わして涙声になってる
世知辛いなぁ
このままだと確実に死ぬなこいつ・・・
流石に関わった人間が死ぬのは夢見が悪い
大きくため息をつきつつ
(あー、お母さん?いる?)
(あら、なーに沙耶?)
(村長の仕事暫く休んでいい?)
(どうしたの?お腹痛くなった?)
(いや、お腹は痛くないけど勇者調子づかせちゃって・・・このままだと死にそうだからフォローのためについて行きたいんだけど・・・駄目?)
(・・・)
(お母さん?)
(あらあらまぁまぁ!お父さん!聞きました?沙耶がボーイフレンドですって!)
いや、違・・・
(お父さんそんな男認めませんよ!)
(お父さん話がこんがらがるから出てこないで!)
(はい・・・)
(お母さん、違うからね!仲間が出来たらすぐに帰るから!)
(えぇえぇはいはい、分かってますって)
・・・分かってないな、これは
「ミケもちょっと寄り道いい?」
「パフェまた食べさせてくれるなら良いぞ」
「わかりました」
何かにつけてパフェを要求されるのは年頃の娘のお財布事情としては辛いものがあるが仕方ない
経費で落ちないかな?
「仕方ないなぁ、途中までついて行ってあげるわよ」
「え?それは本当か!?」
目をキラキラさせて涙目でこちらを見るジェノ
捨て犬かな?
「途中までよ、途中まで」
「この際村長でもちびっ子でも何でもいい!ようこそ我がパーティーへ!」
「ちび・・・沙耶、こやつにブレス撃ってよいかの?」
ちびっ子に反応してミケに耳打ちをされる、まぁ見た目はちびっ子だしなぁ・・・
「まぁまぁまぁ・・・あ、ジェノには正体秘密でお願いしますよ」
「ぐぅ・・・それ位分かっておるわ」
「おい、何をこそこそ話している!これから俺の輝かしい冒険譚が始まるのだ、気合を入れろ」
「「お、おー」」
二人と一匹の冒険が始まった
途中までは貯めていましたが後半は一気に書くことが出来ました
初めて一つの話を完結できて嬉しいです
何分初めてですので誤字、脱字、表現の稚拙さ、設定の不備など目に余るところもあると思いますがどうぞ宜しくお願い致します。