海神
その後はあっさりと進んでいった
平原ではゴブリンにトラウマでもあるのか避けてスライムを倒しつつ進めていたし
特に森に入ってからはモンスターが一切出てこなかったのである
ジェノは「俺に恐れをなしたな」などと抜かしていたが私は悪い予感しかしなかった
そしてそれが現実となる
森の奥にある薬草の手前
開けた場所を陣取っていたのはドラゴンだった
「・・・え?あれ?」
ドラゴンは確か山に帰ったはず、リードもそう言っていた
そもそも聞いていた特徴と違う
透き通るような蒼い鱗にダイアモンドダストのような息
いやドラゴンなんて生易しいものではない・・・あれは海の守護龍
リヴァイアサン
・・・え!?なぜ森に!?
「汝は何ぞ?」
ドラゴンの腹に響く声に足がすくむ
「おおおおお俺はははゆゆゆゆ勇者ゼノ!」
うん顔真っ青で足ガックガクだし名前噛んだけど何とか自己紹介?出来てる辺り多少は肝が据わってる
「ふむ、ゼノか。あとはそこに隠れてる汝は何ぞ?」
そりゃバレるよね・・・
草むらから取り敢えず顔を出し自己紹介をする
「え?あ!お前は村長!なぜ貴様がここに!?」
驚きを隠せないジェノ
説明しても仕方ないし取り敢えず無視無視
「私は村長の沙耶です。あの・・・」
「無視するな!」
もぅ、うるさいなぁ
「ふむ、沙耶か、沙耶・・・沙耶・・・まぁよい、我は今、虫の居所が悪い。去れ」
にべも無い・・・とはいえ隣の勇者はというと
「そ、それは困る!俺はその先に進まねばならないのだ!」
一歩前に出るジェノ
・・・勇気あるなぁ
相手の力量が分からないだけかな?
また1歩
「聞こえなかったのかの?」
リヴァイアサンが口を開け・・・って、やば!
「ジェノ!伏せて!」
「なんっ・・・!?」
ジェノの頭を強引に下げさせると同時に頭の上を轟音が通る
「・・・ふぅ」
「いつまで、抑えている!あんなもの大したことな・・・えっ?」
後ろを向いたジェノが絶句している
リヴァイアサンの口から放たれたブレスという名の超高圧水が森の外まで綺麗に道を作っていた
「帰り道を作ってやったぞ。もう一度言う、去ね」
リヴァイアサンはもうこちらに興味がないようで頭を横にして目をつぶった
・・・
「で、なぜ貴様がここにいる」
ドラゴンから少し離れたところでジェノが切り出した
「いやー、御手並みをね?」
さすがに見てられなくて女神になったりなんだり言うわけにも行かない
「女の子がこんな危ないところに一人で来るやつがあるか!」
お、おぉ?怒ってる?
「ご、ごめんね?」
上目遣いに涙ぐむ
「う・・・わ、分かればいいのだ」
ちょろいな
「さて、どうするつもりなの?多分あのドラゴン退かないわよ?」
「どうもこうもない、奴を抜かない限り貴様から受けたクエストをクリア出来ないのだろう、やるしかないではないか」
真っ直ぐに見てくる目
あんまりにも真っ直ぐに見つめてくるのでちょっと目をそらしてしまう
「うっ・・・そ、それはまぁそうだけど・・・」
クエストをお願いした手前何とかしてあげたいが相手が悪い・・・よね
「俺は行くぞ、貴様にまだ俺の本当の力を見せていないしな
さぁドラゴンよ!この呪術を受けてもまだ強がりを言ってられるかな?」
え?まだ実は力を隠し持ってるとか!?
「ふん」
リヴァイアサンと言えば片目を開け一瞥をくれた後また目をつぶる
歯牙にもかけないと言った様子だ
「うぉおおおお!」
ジェノが後ろの木にダッシュし藁人形をセットし!の時点で私は諦めた。
「ふははははは!」
釘を打ち付ける、打ち付ける、力の限り打ち付ける
丑三つ時でもないし呪術の効果の遅さをまだジェノは知らないらしい
何より、どこら辺が勇者だ・・・あまりにもあんまりな姿に泣けてくるわ、一瞬でも期待してしまった自分を殴りたい
とは言え、さすがにリヴァイアサンの怒りを買って消し炭になる前にとめなくては
「やっぱ」
(沙耶や)
おばーちゃんからテレパス
(なに?おばーちゃん、ちょっと今立て込んでてね。あとじゃダメ?)
(沙耶の近くにミケの気配があってのぅ近くに蒼い子おらんかえ?)
蒼?・・・蒼・・・蒼い・・・鱗のドラゴン・・・
は?