観察
「・・・それじゃ、ちょっと村から南に行った所で薬草とってきて、こんなん」
適当に済ませて帰ろ
「・・・村長よ、ちょっと適当過ぎないか?ほら、勇者なのだぞ?もうちょっと仰仰しい感じに試練を与えてくれても良いのではないか?どこどこの洞窟に住むボスを倒してこいーとか」
ここ、最初の村なんだけど・・・
「はぁ?そこらの野犬で一苦労してそうな身なりで何言ってんの?大体・・・その装備は?」
「くっくっくっ、やはり村長如きではこの装備は分からんか」
ばさぁとマントをはためかせるジェノ
「わかるわよ!その装備してるの魔道士用の装備じゃないの!」
適性がないと加護が半減するのを知っているのか?タダでさえ少ない加護が半減ではそこらの布製品と変わらないわよ・・・?
「そしてこの毒属性の剣!」
「全然研がれてない上にあなた研げるの?」
「造作もない、ほれこの通りよ」
「右手が真っ青よ・・・」
「・・・この勇者の力に勝るとはこれは魔王すら葬りされる毒と見たな!」
「ただの軽い神経毒じゃないの、まぁ小動物くらいなら有効なんじゃない?」
「おのれ!先程から戦意を削ぐようなことばかり並べおって!貴様まさか魔王の手下か!」
「村長です!」
「「ふん!」」
「まぁいいです、ではクエストを依頼します」
クエスト
「東の森から薬草を取ってくる(採取クエスト)」
「よかろう!ならばこのジェノの力をとくと見るがいい」
そう言い残しジェノが扉を勢いよく開けて出ていった
何だったんだ・・・
まぁ・・・どれどれ、それじゃお手並み拝見してみますか
千里眼で見てみると丁度モンスターと対峙しているところだった
「どれどれ?相手は・・・ゴブリンね」
この辺りでは魔王城から遠いため本来はこれくらいのモンスターが出てくるはずな訳で・・・なんでドラゴンが居たのだろうか?
考えてても仕方ない、今はゴブリンだ
「くっくっくっ、この俺の輝かしい第1歩になれることを光栄に思うがいい!」
「ギギ?」
言葉が通じないのによく喋る
「ふっ、恐れて声も出ないか?当然だ、なんせこの俺が!30年に一度にしか現れないという伝説の勇者なのだからな!」
「ギギギ」「ギギギ」
あれ?仲間を
「あれは一週間前・・・俺の15歳の誕生日だった。俺が床につき夢の中に誘われた時、神に出会ったのだ」
「ギ!」「ギギ!」「ギギギ!」
あ、増えた
「そして神は言った、世界を救えと!」
「「「「「ギギギギギ!」」」」」
「そして俺は旅立った!さぁ!かかってこ・・・い・・・?」
ちょっとやばい・・・かな?
「と思ったが少し急用を思い出した!命拾いしたな!」
「「「「「ギ!?」」」」」
ジェノは逃げ出した
「ホッ・・・流石に多勢に無勢は不味いことくらいは知っていたか・・・」
流石に初仕事で死人は出したくないからもしもという時のためにもう少し近くで様子見ようかな
初仕事からこれは時間がかかりそうなクエストになりそうで頭が痛い
2日目
今日はもう少し近くで様子を見よう
10m位後ろにいればまぁ最悪の事態は防げるかな
このままじゃ本気で死にそうだし
「ふはははは!昨日は油断したが今日はそうはいかんぞゴブリンめ!」
「ギギ!?」
お、今日は前口上なしで行く気かな
昨日よりは進化しているみたいね
うんうんと頷く私を知ってか知らずか続けるジェノ
「今日は貴様には勿体ないがこのスペル(黒魔法)をプレゼントしてやろう」
え?スペル?
「今更後悔しても遅いぞ!ゴブリン!」
「・・・えーと、確か・・・そうだ!深淵より暗き暗黒の雷よ
我の呼び声に応じかの敵を討ち滅ぼさん!」
闇の雷を召喚する上位魔法
ゴブリン程度であれば黒焦げであろう
ただ、えーと・・・勇者って黒魔法使えたっけ?
「ダークサンダー!(サンダー・・・サンダー・・・)」
叫び声だけが平原に響く
「ギャ!?・・・ギャ?」
そうだよね、何も出ないよね
ゴブリンも何も起きないことをいい加減気づいたようで仲間を呼び出してる
「ギギギギギ!」
「「「ギギ!」」」
「ふむ、おかしい昨日徹夜で暗記したのに出ないではないか!あの本屋の親父め!騙したな!貴様らは本屋の親父の後だ!ちょっと待ってろ!」
「「「ギ・・・ギギ?」」」
「いいな!」
「「「ギ」」」
おぉ、ゴブリンが気圧されてる
勇者よりもテイマーの方が素質あるのでないだろうか?
ジェノは逃げ出した