到着
そんな訳で仕事の依頼を受けたのが昨日
そして、始まりの村と言われる村にやって来たのが今
村と言うにはちょっと大きいのは隣に馬鹿でかい城が建っているからだろう
城下町のはみ出した部分とでも言おうか
そんな村の村長になるべくして赴任したわけだがどうやら村付近の様子がおかしい
この辺りは魔王城からも遠くそれほど凶暴な魔物が生息しているわけでは無いはずなのだが一ランク上の魔物をポツポツ見かける
近くの森から何やら咆哮のようなものが聞こえる・・・気がする
悩んでても仕方ない、取り敢えず依頼された村へ行こう
「うーわ・・・」
村に着くなり第一声に変な声が出た
村付近もおかしいと思っていたが村はさらにおかしかった
活気がないのだ、家という家からは負のオーラが溢れており、道に人はなく、路面のお店は全部暖簾が閉まってあり、人々の顔は暗く数える程しか歩いていなかった
原因が分からないのも気持ちが悪い、まずは代表の方に話を聞こう
「すいませーん、本日赴任してきました村長なのですが!代表の方はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」
「あぁ、村長さんかい、若いのにしっかりしてるねぇ、そしてよく来てくれたねぇ。このとおり何も無い村だけどよろしくお願いするよ。今の代表ならこの通りを真っ直ぐ行った突き当たりの役場に居るはずだよ」
「有難うございます」
なるほど、突き当たりの建物ね
道を程なく行くと真っ白な建物が見えてくる
やはり人はまばらであまり元気は無いみたいだ
受付に村長であると伝え終え、代表に会わせて下さいと伝えたところ2階の代表室へ行って下さいと室内の地図を渡された
2階へ登ると奥の扉がひらいたままでなにやら話し合いの真っ最中のようだ
聞き耳を立てるのも悪いので要件を伝えてしまおうと思い声を掛けてみる
「失礼しまーす」
「だから森など焼けばいいのだ!」
「それではドラゴンに報復してくれと言っているようなものだ!村なぞ跡形も残らなくなるぞ!」
怒号のお返事が返ってきた
「それでは黙って地価が地の底・・・おっと、可愛らしいお客様だ、迷子かな?お嬢ちゃんここは今忙しくてねぇ、申し訳ないが受付に道を聞いてもらえるかな?」
いらっ
「村長として伺った沙耶と申します、お話の途中で申し訳ありませんが代表の方はいらっしゃいますでしょうか?」
・・・そこ、顔見合わせるな、鼻で笑うな、肩をあげて此れ見よがしにヤレヤレするな
魔法の1発でも放って証明してやろうかとも思ったが一応話を聞かせてもらえる事になったので抑えることが出来た
「代表のリードです、この度はわざわざこのような村にお越しいただき誠に有難うございます」
「副代表のライタです、こんな小さな女の子が・・・村長ですか?」
こんちくしょう、まだ疑うか
「村長の沙耶です、あの」
とてつもなく悔しいので本題の前に一つ仕事をこなして認めさせてやる
「この村に何があったのでしょう?今ひとつ村に元気がないようにお見受けいたしますが」
「よくぞ聞いてくれました、実はですね」
リードとしては藁にも縋りたい気持ちだったのだろう。ちょっと促したらべらべらと壊れた蛇口の様に出てくる出てくる
「近くの森は見ましたでしょうか?あの森にドラゴンが住みつきまして、その森の奥にいた魔物が住処を追われ村付近に出没するようになり作物は荒らされ家畜は餌に・・・最近では村のものを襲う魔物まで出没する始末、お陰で村の地価も下がり城下町の方は天井知らずで」
「代表!」
「おっと、失礼しました」
「なるほど、そうしますとドラゴンを追い出せば生態系も元に戻るという事ですか?」
「えぇ、そうしたいのも山々なのですが相手はドラゴンですよ?最初は城の兵士を集めて討伐にも行ったのですが帰ってくるものもおらず」
あぁ、咆哮は空耳ではなかったのね
「申し訳ありません。来たばかりのしかも少女に言っても仕方が無いのは分かっているのですが」
「分かりました」
「そうですよね・・・無理ですよね・・・え?」
「では、成功報酬で構いませんから村長村へ申請し直していただけますか?」
「お、お受けしていただけるのですか!?いやしかしこのような少女に」
「お受けしていただけるんだ、やって頂こうじゃないか」
外の人間なんだから、成功報酬だから駄目でも痛くもなんともない
そんな心情がよく分かる表情をしているリード
対してただ最初は侮っていたが今は心配してくれているのだろうライタ
ライタの心遣いにさっきイラッとした自分に反省しつつそれでも今後の仕事を円滑にするためにもこなすべき仕事であると確信した
「ではもう少しだけお話を伺っておきたいのですがまずはドラゴンの特徴と巣を離れる時間帯があれば・・・」