腹案
コンコン
「失礼します。」
役員室の扉をノックして入っていく田中さんの後をついていく
「フックさん、すいません田中です。今お話し良いですか?」
中は本や資料が綺麗にまとまっており、人の姿はまばら
3人ほどいる中の右端の男性が椅子から立ち上がる
「おや、田中さんお疲れ様です。」
男性の見た目は30代ほどだろうか前髪は7:3分けで眼鏡をかけた痩身で知的な男性だ
どうぞこちらへと促されテーブルに案内された
テーブルに着いたところでフックさんと言われていた男性の口が開く
「田中さん、そちら様は?」
「あ、あぁ私の故郷に居た山田さんだ。村長をやっているから一緒に話を聞ければと思ってな」
「山田です、どうぞよろしくお願いします」
「役員をやらせていただいているフックです。田中さんには大変お世話になっております。」
結構若そうな人だ
20年くらいやっていると田中さんに聞いたが…と年齢と経歴の差を考えているとフックのとがった耳が目に入った
「あぁ…私はこう見えて山田さんの5倍くらいは生きていますよ」
「エルフの方でしたか」
エルフと呼ばれる種族は大陸の中央に位置する国家ユグドに多く暮らしている種族だ。
外にあまり出たがらない種族のため、大陸南東を位置するこの街にいるのは珍しい
「何分傭兵稼業の街だからな、この街じゃ別に珍しいことでもないだろう」
確かに言われてみれば街でちょくちょくいたような気もする
自己紹介も済み、本題に入ろうとしたとき
「それで今日は何の御用でしょう?」
空気読んでくれたのかフックから振ってくれた
「フックさん今日はそろそろ以前言っていた腹案とやらを教えてほしくてな」
田中さんも完結に理由を話す
「あぁ、あの件ですか。そうですねそろそろ話しておいた方がいいかもしれません。少々お待ちください」
そういって自分の机から丸められた紙を持ってきた
ガサガサと開くと都市と国とが書かれている紙、地図だ
地図にはこの街であろう都市に丸が書いてあり、他に二つ丸が書いてあった
他にもメモ書きのようなものがずらずらと書いてある
「フックさん、こいつは?ここの街と〇の片方は古い炭鉱のようだな
あとは…これはちょっと離れるが山か?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。これこそがこの街を救う腹案になります」
「まさか今更石炭でも掘ろうってのか?あんまり質が良くないっていうんで前の代でここは廃坑になってるはずだぞ」
「ノンノン、ここはですね」
大仰にポーズを付けるフック
「金が取れるのです」
…金?
「そう!埋蔵金です!金さえ取れればこの街の財政難なんてあっという間ですよ!」
胡散臭そうだなぁ
「ふーむ、ここに赴任して5年ほどになるがそんな情報聞いたことないな、どこの情報だい?」
「以前ここに立ち寄った行商人が言ってたんですよ!なんでも金が炭鉱の入口付近にあったと証拠の金も見せてもらいましたよ
情報量は安くなかったですが…」
本当かなぁ・・・取れるんだったらその行商人で独占するんじゃないの?
「炭鉱は街の所有物ですからね!それが後でバレた時の賠償などを考えて情報を教えてくれるにとどめてくれたのでしょう!なんてすばらしい!」
何だろう、最初とキャラ変わってない?
「で、もう一つはなんだい?こっちも金が取れるってわけじゃないんだろう?山のようだけど」
「こちらは温泉です!良質な源泉があると聞きました」
聞いた?直接確認したわけじゃないの?
「えぇ、もちろん行きましたとも!
何もありませんでしたけどね!」
え?じゃあなんで?
「掘れば出るとのことです!」
「その情報はどこk」
「行商人さんです!」
なんでそんなに自信ありげなんだろう
その行商人怪しいなぁ
「なんてことを!その行商人さんが色々な知恵を下さって今のこの街があるですよ!
例えば生活に困っている人に対して行う生活保護や外の人を受け入れる政策、他にも他の国では行われている市政を色々と教えていただきました」
なんでもかんでも取り込めばいいってものでもない気がするんだけど…
「まぁ悪い制度でもないしなぁ」
田中さんも同意しちゃってる
使い方次第ではあるし個々の制度が良いのは分かるのでここは深く追求しないようにしとこ
よくそんな素性のわからないような行商人の話信じるなぁ
「その行商人さんはいつ来られるのです?」
「数年に一度、ひょこっと表れてふらっとどこかへ行ってますね」
怪しすぎる。
「そんなわけで近々クエストとして張り出すので山田さんも是非ご参加いただければと思います!」
路銀稼ぎも必要だしまぁやるのは構わないけど…
…
「それじゃ、またなんかあったら来てくれや」
「わかった!田中さんもなんかあったら教えてね」
さて、役場での話し合いも終わったし宿屋に帰ろう




