求職
のんびり書いて行ければと思います(*´ω`*)
この世界には様々な村がある
農家で形成されている村
畜産に支えられている村
商人が賑わう村
魔道士の家系が脈々と受け継がれている村
勇者を選定する剣が刺さっている村
魔王を排出する村
そして村長しかいない村
そんな村のお話
魔王城の近くにある村
なぜ滅びないのか不思議に思う人は多いと思う
私は理由を知っている
村長が均衡を保っているのだ
祖父母である
齢70を越えようかという祖父の老体から繰り出される拳は山を割り、祖母に魔法を使わせれば海を割り
2人の身のこなしは霞のよう
そんな魔王を圧倒しかねない力を持った祖父母を恐れてか村は無事なわけである
それならば祖父が世界を救えばいいと幼い私は思ったものだが世界の理がそれを許さないらしい
国同士の諍いの渦中にある村
お互いの国から略奪の限りを尽くされ滅ぼされようなものなのになぜ無事でいられるのか
村長である父と母である
巧みな話術を使い両国を手玉に取る母と両国の流通を利用し、情報を武器に戦う父
更にと言うかやはりというか父と母も強く周辺国の一個中隊では歯が立たないため無事で済んでいるというわけだ
手玉にとっている時点で解決させればいい物をやはり世界とやらが許してくれないらしい
そんな家系に生まれた私は
村長しかいない村、ここ村長村で村長学校を卒業したあと半年ほどニート中(職業:村長)である
武も人並み以上に備え外に出れば賢者に即採用されるくらいの知識もある
顔だって悪くないはずだし。こ、こ、告白だってされたことあるし!
しかし生まれが村長なのだ
1度決められた職業の変更が出来ないこの世界において村長は村長なのである
花も恥じらう乙女の職ではないだろう
母も祖母も何が嬉しくてそんな家系に嫁入りしたのか
もういい年なのに仲睦まじい2人を見ているとまぁそう言う人生もあるのかな?とちょっと羨ましく思うけど・・・
そんな感傷に耽っていると頭の中に直接語りかけてくる人が
「ちょっと、沙耶!またお家でゴロゴロして!母さんはちゃんと見てるんですからね!いい加減村長としての自覚を持って村の一つでもこなしてきなさい!」
千里眼とテレパスとは組み合わされるとかくも恐ろしいものになるのか
プライベートはない模様
とは言え確かに半年も家でゴロゴロしていては体も鈍るというものだ
最近ちょっとお腹に気を使い始めている私には痛い話題である
依頼があるか役場まで顔を出しに行こう
服は・・・面倒だな、適当な服で・・・
「ちゃんと支度して行きなさい!ハンカチ持った?知らない人について行っちゃだめよ!」
だめか・・・はいはい、分かりました!手を振ると安心したのか視線は感じなくなった
適当な服で行ったら後で寝るまでテレパス貰いそうなのでタンスから半年ぶり位に出して来たスーツに袖を通して役場へ向かう
うん、まぁ人前に出てもこれなら問題ないだろうと鏡でメイクをする
髪は軽く首のあたりで纏めてゴムで縛る
スキンケアして、下地整えて・・・あぁどうして男に生まれなかったのだろうか、そんな事を考えながらマスカラに手を伸ばし
・・・左右の目の色が違うことに気付く
右目は燃えるような赤で左目は凍るような青
生まれついての物らしいが左右の目の色が違うのだ
生まれた時からこうなっているのであまり気にしたことはないが一般的ではないことは自覚している
「いけないいけない、外に出るんだった」
急いでコンタクトという名の魔法を目にかけて
赤色に統一する
外に出る時は必ずコンタクトをしろと親にも口を酸っぱくして言われ一番最初に覚えた魔法でもある
さて、準備は完璧だ
スーツは少しかび臭い気がしたけど気にしない
人も疎らな役場には好々爺と言う表現がぴったりなご年配の職員が笑顔で出迎えてくれた
「おや、沙耶ちゃん村長やるのかい?最近は魔王が活発になってきてねぇ物騒で依頼がよく来るようになってねぇ、そうそう!沙耶ちゃんに丁度いいのが入ってるよ。あと飴あげようねぇ」
行くと必ず飴をくれるので役場のおじいさんは好き
あぁ、なんか依頼があるって言ってたな
もらった飴の包み紙をペリペリめくり飴を舐めつつ掲示板を見ると
ビラが掲示板1面に所狭しと貼ってあった
物騒になってるとも依頼が結構くるとも言っていたけどすごい量・・・えーと、丁度いいのって・・・どれ?
「おじちゃんー!丁度いいのってどれー?」
「はいはい、沙耶ちゃんに丁度いいのね、えーと・・・これはアークデーモンの被害に抑える村長で・・・違うなぁ、人攫いの捜索これも違う。あれは魔王軍四天王を所定の位置まで追い詰める村長だし・・・あぁ!あったあった!はい、これだよ」
紙を手渡される
えーと、なになに?旅立つ勇者の最初のお使いをサポートする村長ね
「確かに丁度いいわね」
「そうでしょ、沙耶ちゃんにはちょっと退屈かもしれないけどブランクもあるしまずはこれを片付けてみないかい?」
これくらいなら1週間もあれば片付くだろう
ちょっと行ってさささーっと勇者様のお使いを依頼して終われば後任の方に引き継ぎをすればいい