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死にたいときに読むテクスト  作者: 美凪ましろ
第一章 何故ひとは自殺をしてはいけないのか
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人類愛、という観点から



 自覚しているんですが。わたし自身は非常に『共感能力』の低い人間です。



 簡単に、他人にシンクロできないんです。育ちも思想も異なる人間同士ゆえ分かり合えるのは不可能――そんな諦念がわたしの根底にありまして。どこで生まれたのかは分かりませんがおそらく生来のものかと。大人になってからの情動の振れ幅が狭めというか。世間一般の皆様よりもドライな思考の持ち主です。


 なので。


 ニュースを見て涙したり激高したりする人間が、羨ましかったりします。


 なんであんなふうに、泣けるんだろう、と。他人事を自分のことのように感じられるあの感性。不足しているからこそ、理解したいからこそ、わたしはひたすら文章をしたためているのかもしれません。


 さて。


 人間は、動物と自分たちの存在を区分けし。互いに、『共感』し合って生きていく生き物です。


 自分の所属する社会集団を、細分化し、ラベルをつけ。その集団のルールに従って生活し、かつ、集団に愛着を抱いて生きていきます。


 抽象的に過ぎますかね。フォーイグザンプル。海外旅行に行って三日も経つと。


 日本食が恋しくなったりしませんでした?


 旅行が長期であればあるほど。帰りの飛行機で提供されるカップラーメンが超絶的に旨く感じたり。遠野の場合はスーツケースからころ押しながら吉野家に駆け込みました。あれ以上に美味しい牛丼をわたしはほかに知らない。


 もういっちょ。わたしがよく使うタームなのですが。サッカーのワールドカップで日本が勝ち進むと渋谷のスクランブル交差点で大騒ぎするひとびと。決まってニュースで流れますよね。あのひとたち。普段「おれたち日本人だぜイェイ!」なぁーんて思ってたりなんかしませんよ全然。日本は。


 同一人種が多い国ゆえ、他国のひとに比べると、『自分が日本人であること』に無自覚な傾向にあります。味噌汁うめえ! もっちもちのお米最高! くらいのことは思いますがね。積極的に外国の文化は取り入れるけれども、ニッポンジン。なるワードでイメージする人種は一パターン。島国とはいえ、特殊な環境です。わたしのイメージする日本以外の島国はもっとこう、多民族国家です。日本人が。


『無自覚』のうちに『日本』という国家に『日本人』という人種に愛着を抱いている、というのが肝です。そして。


 外国でなにか事件があれば日本人の犠牲者がいないかが真っ先に報道される。ニュースをチェックする側もいないかどうかを先ず心配する。イエモンの歌でありましたね。それが普通です。


 愛情とは、取捨選択。ほかの誰よりもそのひとだけが大切で。ほかの誰かをさておいてもそのひとだけには無事であって欲しいという、ある種利己的で排他的な感情です。集団に属するということは。


 自己集団を他集団と区別し。自己集団だけにどこまでも幸せであって欲しい。それが、自己愛の正体です。


 なんつー。自己中な感情なんだっつうことにもなりますが。そこでまあみなさんはもっとビッグな集団を指標に報道を捉えるんです。――人類。


 人間が犠牲になればひとは悲しみ。


 人間が立ち直ればひとは喜ぶ。まあね。


 動物たちに対しても同じようなシンパシーはみなさん感じておられますよ。てなにが言いたいねんこの作者。てオチになりかねませんが。要するに。


 人間、自分の見聞きする範囲内で、みぃんな幸せであって欲しいと、願っているんです。


 その感情をひとびとは『愛』という言葉でカテゴライズします。まあ名称はなんであってもよいです。そういうわけで。


 誰かが自殺すればひとは悲しむし。


 自殺者の側に事情があってそれが報道されればひとは涙する。


 年齢が、低いほどに、悲しい。


 このあたりの事情。前述の通り、わたしは皆さんほど深い共感能力を持たない人間なので、敢えて書きました。この観点から。


 ひとは。他人に自殺してほしくないと、そう思っている。――『人類愛』ですね。


 もうちょっと穿った見方をすると。


 自分の視野に入る内で誰かが積極的に自殺をしてしまうと。


 人間、『不安』を感じるんです。自分の生命が脅かされないかという、生存本能です。


 本能で、人間は、他人の『自殺』を、拒むんです。――だってみんな死にたくない。殺されたくも、ないから。


 だって『自殺』って『自分に対する殺人』、でしょう?


 世の中でそれが積極的に推奨されるようになったら。自分も死ななければならないのかと『不安』を感じる。見知った人間が自殺をすれば『不安』になる。また誰か死ぬのかもしれない、と。あらゆる『不安』の渦に溺れてしまい。


 正気を保てなくなります。


 あとは、残されるのが少数になればなるほど、人間の不安の度合いは強くなります。自殺者があれだけ多いだなんて連日報道されていたら人間どうなるんでしょうね。まあその、ニュースはセンセーショナルなものが根掘り葉掘り取り扱われる傾向にありますが。不必要に不安にさせまくる内容を扱わないという側面もあるにはあると思います。わたしは積極的にはチェックしない人間なのですが。だって『不安』になりたくないから。


 ところで。いくらわたしが情動の欠落した人間だからといって。他人の自殺に嘆き悲しまないというわけではありません。


 少なくとも、これを読んだ人間が自分の人生を楽しんで生きていけるようにと。感情的にならず、論理的に説得する文脈で書いています。



 あなたが、『死にたい』と思っていると、わたしは『悲しい』。


 たぶん。みんなそうなんじゃないかなあ?



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