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死にたいときに読むテクスト  作者: 美凪ましろ
第一章 何故ひとは自殺をしてはいけないのか
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経済的観点から



 ひとがひとり生きていくには、いったいいくらかかるのか。



 考えたことはありますか。


 新卒者が就職した場合を例に挙げましょう。


 首都圏の四大卒の初任給は18万~20万円。切りよく20万円としましょう。家賃は。


 都心へのアクセスの良いところでいうと七万円は固い。では水光熱費。


 それぞれ五千円~七千円としても、ガス・水道・電気でトータル一万五千円はかかりますよね。夏や冬は冷暖房代がかさむので、二万円とカウントしましょう。


 食費生活費。これが曲者で。遠野も一人暮らしを始めた当初、飲み会に毎週行っていると食費だけで五万円が消えてしまうことに愕然としました。食費、パねえなと。まあ余裕を見て六万円としてみましょう。トイレットペーパーとかその手の消耗品も積み重なれば結構な額になりますものね。


 そうすると。


 初任給の二十万円のうち十五万円が消える計算です。ものすごい贅沢をしているわけでもないのに毎月貯金できるのは五万円程度。うわあ、と。就職する前に試算した結果、わたしこれからやっていけるのか……と、gkblする日々でした。まあ当人は毎日時給の高めのバイトで働き詰めでお金貯めて呑気にヨーロッパへ一ヶ月旅行に行ってたりもしましたが。だって就職すると一ヶ月もトリップできないのは分かっていたんだもん。いま思えば行っておいてよかった。ヨーロッパでのテロ行為がもっと目立たない時代の話でした。


 そして入社してみると残業のオンパレで土日も仕事。せっかくお金が貯まっても遣う時間がねーやんという、なんだか笑えない状況の日々が待っておりました。


 さておき。


 大人ひとりが生きていくのに、月十五万円がかかるんですね。まあ幼児だったらそんなにかからないって話もあるでしょうけども、だが結局彼らは大学に行ったりして学費がものすごくかさむわけで。ともあれ、単純に、十五万円かけるの女性の平均寿命の86歳をしてみると。


 12、900、000。


 一千二百九十万円。まあそんな安いはずがない。ですよねえ。保険、学費、趣味や家電のお金を加味していませんから。


 なわけで別のソースに当たってみました(*1)。


 ひとがひとり生まれてから死ぬまでの一生にかかる生活費=2.2億円、という結果が出ています。


 やーひとひとり生きていくってすごい額がかかるんですね。注目すべきはその点と。


 それだけの額が誰かの懐に入り、顔も知らない誰かの生活を支えている。そういうことです。察しのいいかたであればわたしの言いたいことはすぐ分かるはずです。


 なにか手続きを誰かに代行してもらうサービスを依頼したことのあるかたはおられますか? 苛々するくらいまどろっこしい書き方になっちゃいましたが。メゲずに。ああいう場合に請求されるのは。


【1】手続きにかかった費用(お役所とかに支払う金額。印紙代とか)


 プラス。


【2】手数料(彼らがあなたの代わりにそれを行うことで得る利益。消費税がかかる)


 です。


(家事代行サービスとかベビーシッターとか、【2】のみのサービスも普及して久しいですね)


【2】は厳密に言うと粗利ではないです。交通費や人件費などを加味したうえで、それでも『彼らに儲けが発生する金額』が設定されております。でなければ生活していけないのでね。


 というわけで。


 2.2億円がマルッと誰かの『儲け』に繋がるわけではないです。が。あなたがお金を遣うおかげで生活が成り立つかたは、想像するよりもずっと多いはずです。彼らは。


 あなたが生きているからこそ、好きなものを買える。自由を手にする。喜びを手に入れる。


 見えないところで社会は繋がっている。


『お世話になっております』――あれはただの枕詞などではなく。


 みんなみんな、誰かの手を借りて日々を生きているんです。すごく重みのある言葉です。


 さて。


 アウトプットの次はインプットを考えていきましょうか。ひとが生きていくには最低でも2.2億円がかかるとする。ではそのひとが働き始めて稼ぐ金額ってのは――いくらくらい?


 2015年の平均年収は420万円というデータがあります(*2)。高卒と大卒のあいだを取って二十歳から定年65歳まで働き始めたとすると。かける45で。


 189、000、000。


 一億八千九百万円。となりました。まあ年齢があがると給与が高くなるという事実を考慮せぬ数値です。実際はもっと多いことでしょう。


 総合すると。二億もの金額を人間は稼ぎ、二億もの金額を遣って生きていく……。日本経済における影響力は大きいのですね。ただの一個人の消費が存在が社会にどれほどのインパクトを与えるのか。その影響力の大きさに、遠野自身調べてみてビックリしました。例えば。


 遠野は趣味のために会社の資本金を調べたりもするのですが。資本金三百万円、て会社は珍しくはないです。頑張って二十代のうちに切り詰めまくった人間が三人集まればできなくもない数値。それを遥かに超える金額を、ひとりの人間の人生が叩き出す、と。


 これはもう。


 無視できない数値ですよね。


 というわけで、経済的な観点は以上。


 ひとりの人間を社会が失うと、経済的な損失は、無視できないほどに大きいのです。


 次頁は違う切り口で攻めてみます。


 お金には代えられない、……ある、人類が必ずや誰かに抱く、或いは自分自身に抱く概念がありますよね。その話をしていきたいと思います。


 *

【出典】


*1……『マネーの達人』

http://manetatsu.com/2015/07/48710/


*2……『平均年収.JP』

http://heikinnenshu.jp/


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