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死にたいときに読むテクスト  作者: 美凪ましろ
第四章 それでも死にたくなったら
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環境を変える



 以降は。


 ここまで読んでも。希死念慮が止まらないかた向けの対処法を述べていきましょう。


 遠野の場合を例に挙げますと。


 たかーいところにエスカレーターでのぼると。


 ふ、と下を見たときにぞくっとすることがあります。ああわたし。


 こっから飛び降りたらどうなるんだろう……。


 とりあえずそんなときは。視点を変えます。先ず。


 目の前のことに集中する。一階なんか見ないで自分の靴とか涼しい顔をしている他人を見て、『切り替える』。『怖い』という場所からできるだけ早く離れてはーっ、とこころを落ち着かせる。


 どんな感情にも共通ですが。――こんなこと思っちゃ駄目! ……て対処するのはアウトです。


 だって。


 思ってしまうものは仕方ないじゃないですか。


 自分の内側から流れ来る感情を、社会的通念に基づいて無理に押し込めようとすると、いずれ爆発する。かさぶたを無理に剥がそうとすると痛いでしょう? 感情というものは。流れに任せていれば。いずれ。必ずや。


 別のなにかに切り替わるので。


 焦らず、『待つ』ことですね。とはいえ。


 こっから飛び降りたい衝動、というのは、すぐに消火せねば『怖い』代物ではあるので。消火方法を述べたまでで。


 緊急性の低いものであれば、飽きるまでとことん向き合う。それもまた人生の醍醐味ではないでしょうか。


 わたしは、小説を書くようになって、随分と想像力が豊かになりました。


 ここでみんな。


 平静な顔して過ごしているように見えているけれど、その裏ではいったいなにを考えているんだろう。


 カラオケ行ってないなあ。ここでいきなし歌いだしたら論理療法? 気の狂ったひとに、思われるだろうなあ。


 その膨らませた想像力は、小説というかたちに昇華させるよう務めております。さて。


『環境を変える』と書いた二点目の意図を書いてみましょう。


 場所を変えること。


 変えられるものはとことん、変えてみること。


 子どもと一対一の生活が辛いんであれば。パートなり外で仕事を探してみて、一時保育で預けてみる。実際には働かなくともそのプロセスをするだけでも違ってくると思いますよ。引きこもりのひとであれば。


 なにか『作品』に触れる。気に入ったものがあれば、そのルーツを辿ってみる。


 吉祥寺が舞台であれば吉祥寺を訪れてみる。


 いじめのところで転校するという例を挙げましたね。どうにも日本では、『ひとつの物事を最初から最後までやりきること』が美化されている傾向にあり。二つ以上のことをこなせると『器用貧乏』って言葉で差別されがちです。ひとつに絞れと。最近では。俳優兼歌手のかたのご活躍で、そうした偏見は薄れつつあるように思いますが……。


 話を『環境を変える』ことに戻しましょう。


 髪を切る。ひとと会う。ひとりで出かける……。対処法は、一個では、ありません。


 そのひとの『型』にフィットした、ここちいい対処法が、きっと、あるはずです。人生とは。


 それを見つけるための作業、なのかもしれません。



「死にたい」と思っていても。


 いつか、結局、死ぬんです。絶対に。


 椎名林檎さんのインタビューでも指摘されていたとおり。携帯電話が流通してから、ひとびとの『万能感』が強くなって。要するに。


 自分がなんでもできる『神』みたいな存在だと誤認し。


 他人がなにかやらかせば即座に怒る――そんな人間が増えてきているように思います。おびただしいコミュニケーションの繰り返しで。


 LINEの既読。つかないと人間、不安を感じるものでしょう? (実を言うと遠野はまったくチェックしていない)なんかそのねえ。


 いずれ。わたしは。絶対に、死ぬ。その感覚が。


 希薄になっているのが現代の若者の特徴ですね。戦前を生きてきた世代と比べると違いは瞭然。戸愚呂(弟)流に言うと、『危機感が足りない』。


 別にわたしは。現状を憂う意図で書いているわけではありません。


 現状は現状。仕方ない。


 今更、携帯電話のなかった時代には戻れませんので。


 ただ、わたし個人としては。『なかった時代』『ある時代』両方を経験できて、よかったなあと思っています。携帯電話の流通していない時代の若者も楽々書けるので。


 視点をずらす。


 というのは、とっても大切です。皆さんのほうが、わたしよりも共感能力が高いので、その意味を分かっているのではないかと思います。どんな困難に直面したとて。


 世の中には、いろいろな人間が、いる。


 感じ方は、ひとそれぞれ。


 自分とは異なるものを、世間の人間は見ている――という視座。


 ピンチのときには思い浮かべてみる。そうすれば、どんなときでも、悠然と対応できるようになります。


 遠野は、まだその境地には至ってはおりませんが。


 *


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