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死にたいときに読むテクスト  作者: 美凪ましろ
第三章 遠野の希死念慮
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祖父二人、そしてペットを喪ったとき



 身近な人間の死に立ち会った経験の少なかった遠野ですが。


 流石にアラフォーともなるといろんな人間の死に直面します。


 遠野にとってインパクトが強かったのが。


 実の祖父の死。


 義理の祖父の死。


 ……ペットの死、です。


 順を追って説明していきましょう。実のおじいちゃんに関しては。


 がんになって。死がそう遠からず、と告知されたときに、親戚みんなを地元に集めたんです。いま思えばあれは貴重な経験でした。


 結婚して遠方に住むと、きょうだいみんなで集まれる機会なんてそうそうありませんから。……今後は。お葬式のときだけですね。


 そのときの祖父は色つやもよくて元気で。


 おんなじ話を何度も繰り返していたのを、記憶しています。一年後。


 入院して危ない、ってときに。ちょうど死の一週間前ですね。


 入院している祖父を見舞いました。


 風前の灯火。


 という表現が当てはまるくらいの、やつれ度合いでした。絶句しました。


 それから一週間後。ルーカスが点を決めて気分が高揚した帰り道ですが。母から訃報の連絡を受けました。


 うちの田舎は浄土真宗がメインでして。


 葬式は大掛かり。そして独特……でしたね。


 なーんか告別式の翌日もお坊さんがお経唱えていて。わたしは三日も休めないんで途中で抜けさせてもらいました。


 葬式のときは。遺族の席に座り。たくさんの弔問客が来るたび、立ち上がり、礼をする。……甥っ子姪っ子は幼かったはずなんですが。ちゃんと、場面に合わせた対応をしており、感動しました。えらいなーと。


 故郷を離れて十年以上が経過していたときだったので。


 ダメージは、そんなには大きくなかったです。つまり。


 元々遠くに住んでいる祖父なので。死を目の当たりにしても実感が沸かない……というか。


 いまだに生きているんじゃないかなーと思う自分も存在します。


 燃やされて骨だけになったのも、目撃したのにね。続いて。


 義理の祖父。夫の実の祖父については。


 矍鑠としたご老人でした。孫の嫁であるわたしに対してもよくしてくれる男性で。


 気前のいい、かたでした。


 ある時点から体調を崩し気味になり。三ヶ月入院の末、亡くなりましたね。


 ……あんな元気なひとでもそうなるのかと。


 ショックを、受けました。えー死ぬ間際ってみぃんな苦しむの? 怖い。怖い、と……。


 老衰で死ぬんであれば楽なのかなーと遠野は誤解していたんですが。


 結局最後は肺炎とかなにかの病気にかかり。苦しむんですよね……。


 なので。


 死ぬのが、怖く、なりました。


 ……運命の神に勝手に殺されるくらいだったら。


 先に自分で死んだほうがマシなんじゃないかと。本音で言うと、そう思うこともあります。


 続きを書く前に、ペットの死について触れましょう。


 ちょうどこれを書く二ヶ月前に、亡くなりました。小型犬です。割りと。


 十歳を過ぎた辺りからいろいろと患うようになりまして……。薬代。


 最大。一ヶ月で三万円かかっていましたね。薬で治せるものは治すという方針の病院で。


 検査費用が十五万。定期検診が半年に一度で三万。


 ……経済的には、やってられなかったです。もう二度とごめんですね。子どもがひとり居るだけでもお金がかかるので。さて。


 ペットが、死に近づいていると感じられたのは、最後の一ヶ月間。特に。


 最後の一週間は。なんにも食べられないで。


 好きな餌を手であげてみても、ふぃっ、と顔を反らす。……そんな日々が続きました。亡くなる前日。


 ケージのなかでオシッコまみれだったので風呂に入れたんですが……ぞっとするほど痩せ細っていて。これはほんとにヤバい。いますぐ病院に連れて行こうか……、とも迷ったのですが。でも車もないので緊急に連れていける状況下にない。幼い子どももいるので。なので。


 明日朝イチで連れて行こう。……と思った矢先。


 土曜の朝方に、死んでいました。


 ペットの死の場合。知らなかったんですけど、別段、病院に連れて行く必要って、ないんですね。ペット専門の葬儀会社に連絡して手続きを取るんです。


 亡くなったときは。涙も出ず。急すぎて驚きのほうが強かったです。え、まさか、こんな……と。


 もろもろの手続きを終えるとグッタリ……でしたね。


 一日中寝込むなんて日もありました。


 小型犬で、室内にいるのが日常だったもんで。無意識に。


 ペットの姿を探してしまうんです……。


 あとはまあ喉が苦しくて。食事が喉を通らない状態に陥りました。よくね。


 先にパートナーに亡くなられると。あとを追うようにして亡くなった……。


 あの話の理屈を体感しました。


 別に。自殺願望に悩まされたわけではなく。


 ただ、苦しい。


 食事のたびに喉が狭まって。つっかえている。締められている感じ。なもんで。


 内科と耳鼻科に行きました。胃カメラでも検査したけど異常なし。漢方処方されて終わり。


 一ヶ月半ほど、症状には悩まされました。いまは、元気です。


 自分がご飯を食べられなかったときに。ペットがふいっ、と顔を背けるあの事情が理解できました。


 食欲は、あるんです。


 お腹が空いてどうしようもない。


 でも、喉を、通らない……。


 食べないとわたしは怒ることもありましたが。いま思えば可哀想なことをしたものだと思います。


 ひとは、いつかは、絶対に、死ぬ。


 そして。わたしの見た限りでは、最後は絶対に苦しむ。……という現実を。


 目の当たりにすると。


 怖く、なりました。生きていくのが。


 この年になると徐々にいろんなところにガタが出てきます。健康診断で引っかかったりね。こんなのはまだ序の口。と頭では分かってはいるつもりでも。


 辛いです。


 こないだ眼科に行って衝撃的な光景に出くわしました。でっかいわっかを見て「はい0.1!」とでっかい声で宣告されているおばあちゃん……。あー年取るとそこまで行くのかと。仕事用の眼鏡を買うために行った遠野でしたが。日常生活を眼鏡なしで送れているんだからマシなほうだと、考えるようになりました。


 段々衰えていつか苦しんで死ぬくらいだったらスパッと命を絶つのも手ではないかと。


 自殺する人間の気持ちが、……分かる気がしました。でも。


『そっち側』に引っ張られないよう、努力はしています。


 何度も書いていますが。『作品』つまり、他人の考え方に触れ、視点を切り替えることが重要ですね。それに。


 例えば残り寿命が五十年だとしましょう。苦しむのが最後の三ヶ月間。……と仮定して。


 では最後の三ヶ月のために。残りの五十年間を、ずっと「死ぬのが怖い」と嘆いて嘆いて暮らしていくのか……?


 もったいないなあ。


 と思いますね。せっかく親やいろんなひとから与えられて育まれた大切な命。貴重な命を、……愛を。授かったのですから。


 五十年と決まっているなら、残り五十年を充実させて行こう。


 そんなふうに。考えるように、なりました。


 怖くないと言えば嘘になります。自分のしていることが無駄なんじゃないか。そんなふうに感じることもあります。でも。


 死は。誰しも平等に訪れます。どんな、誰であっても。


 戦争の手記を読むと苦しいものがありますね。死を目前にしても勇敢に戦い抜いた人間の勇姿。せっかく日本に生まれ育ったのですから、特に若いひとたちにはそういう本にも触れていただきたいですね。


 重苦しいのは無理というかたでも、『永遠の0』。犬村小六先生の『とある飛空士』シリーズ辺りがエンタメ小説として面白いです。


 実を言うと遠野自身。戦争の手記は、怖いので、それほど読めていません。もうすこし自分の環境が落ち着いてから……、ですね。


 *


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