まえがき
『毎日が退屈。薄っぺらい』
『自分の存在意義が感じられない』
『よく分からないけれど、死にたい、って気持ちが止まらない』
『プレッシャーのかかる仕事をしていて辛すぎる』
『家庭でも仕事でも責任が重くて逃げ出したい』
いろんな悩みがあると思います。
わたしの父が言っていました。――悩みを抱えとらん人間などおらん、と。
ひとりで抱えるには辛すぎる悩みがあるのなら誰かに打ち明けてみましょう。リアルの友達でも顔の見えない電話相談センターでもインターネットの匿名掲示板でも。特に女のひとの場合は口を動かすのがベストです。……過去、どちらかというとわたしは。
こと、働き始めてからは、ひとりで問題を処理するようになり。自分のプライバシーを誰かに暴露するなんて考えられないタイプでした。学生時代は結構気軽に打ち明けていたんですがね。大人になると守るものができてきてしまって。
みーんな忙しくなっちゃって、結婚や仕事でそれぞれ状況が『変わっちゃった』し、まったく同じ悩みを持つ人間なんて周りにいないし、そもそも誰のものでもない、自分の人生における問題なんだからセルフで片付けるべきでしょう。……と、割り切った考え方をしていたと思います。
自分は自分。他人は他人。というね。
でもそれは、悩みの『種類』にもよります。……わたしの場合は。出産・育児をしたことにより、周りの誰かに悩みを定期的に小出しにすることの大切さを、痛感しました。一言で言うと、ガス抜き。いまもときどき母に愚痴の電話をする日々です。
借金の問題があるなら弁護士に相談する。うつの傾向があるなら精神科医に診てもらうなど、然るべき問題には然るべき専門家というのがいるので、そういったかたに対処して頂くとして。遠野のように。漫然と。ふ、と。
ホームに滑り込む電車を見るたび。
あー飛び込んだら楽になれるのかなあ。
……と。お考えのかたはおられますかね。
やああの速度では死ねないし尋常じゃなく痛いでしょ。植物状態だと家族にどれだけ負担がかかるかってか子どもの送り迎えこれから誰がすんの。残された人間はどうなるのさ。精神的にも金銭的にも。
……と、元気なときの自分であればそんな感じで内的にレスポンスできるのですが。
ただ、虚ろな目で流れるがままに感情に身を委ねるのが常です。つくれぽの多いクックパッドレシピをチェックしたりとかね。グーグル様様です。あー夕飯なに作ろっかなと。
さて本題。
自殺願望。人生で一度たりとも感じたことのないかたのほうがレアだとわたしは推測します。平成28年の政府のデータを見てみました(*1)。日本の自殺者は年間二万人を超えます。恐るべき数字です。近年は減少傾向にあるものの、過去には14年連続で三万人を超える状況が続いていました。
平和で戦争もないはずの日本で、進んで死を選ぶ人間がそんなにもいるのです。
自殺者は40~59歳までの男性で原因はうつ病の場合が多いです(自殺者22、082人中1、739人のかたが該当)。この年代は『小説家になろう』のメインターゲットではないとは想定されますが、でも現状を憂う立場として。自殺願望の止まらない人間の一人として。
あなたは、生きているだけで価値がある。
誰の人生も、ほかの誰のものと同じでもない、プレシャス(貴重)なもの。――と。
いろいろ考え抜いた結果。そんなふうに信じるようになりました。別に、偽善者気取るわけではなくってね。本気でそう、思っています。
みんなみんな、退屈で鬱屈した毎日と、戦っています。遠野自身振り返れば輝きに満ちていたはずの青春時代だって、当時の自分は、自分が何者になるかが分からないで、遠い灯台すら見えないで真っ暗な海を泳いでみるみたいで、ものすごく苦しかったです。職業アイデンティティの確立がこんなにも大事だなんて、経験してみるまでは分かりませんでした。当エッセイが。
日々を戦う誰かのこころの栄養剤になればと。或いは。
なんとなしに。『死んでみたい』願望が消えない、遠野と同じ悩みを持つ誰かのために、なにか役立つものを提供できれば。との思いで、筆を取った次第です。――なお。
節々で匂わせてはいますが。筆者は、子どものいる兼業主婦です。ここからの話はそういった立場の人間が描く『主観』に満ちたものではあることを明かさないと、個人的にはフェアではないと感じたゆえ書きました。ただしDINKS時代も長く、我ながらそこそこ壮絶な人生経験も重ねております。なので。ここからのコンテクストは。
むやみやたらな楽観主義に満ちた代物では、断じて、ありません。……本音でトークしますとね。
超・ネガティブでリアリストの遠野は、啓発本のたぐいを読むたびに思いました。「なんだ結局恵まれたリア充の書いたハッピーヤッピーな自己満足本じゃないかよ。金返せ」……一度や二度ではありません。何度も失敗を重ねた結果、遠野は三十路を過ぎてようやく、啓発本やビジネス本を一切買わないというスタンスを構築しました。
ですので。
ものすごく沈んだ気分のかたでも読める、……読み物であることは確かです。ポジティブなかたが読むとかえって新鮮かもしれません。えーこんなに暗い人間がいるのかーと。
以下、本作の構成を説明します。
『第一章 何故ひとは自殺をしてはいけないのか』
……人間が自殺をしてはいけない理由。しないほうがいい『理由』を、三つの観点から分析します。
「死にたい」と誰かに告白すると、返ってくる台詞は大方次のうちどちらかです。
「自殺なんて絶対しちゃだめ」←倫理的な観点から
「○○ちゃんが死んじゃったらわたしが悲しい」←個人的な感情から
特に、後者の考え方は大事ではあるのですが……、それだけではなく。
わたしと、あなたは、赤の他人かもしれません。――が。
あなたが、自ら死んではいけない理由を、『理論的』に証明してみせます。
『第二章 生き甲斐を見つけよう』
……『自殺してはいけない』理由を突き詰めたあとは、人生をいかに充実したものにしていくべきか。そこに比重を置きたいところです。……思うに。
人間、生き甲斐があると、ハリが出て、人生楽しくなってきます。
恋なんか分かりやすい例ですね。既婚者は(新たな)相手にはできませんが。
なお。
趣味にはお金をかけるべきという考え方の持ち主も多いようですけど。お金をかけずとも生き甲斐を見つけることは可能ですよ。そこのところを、例を挙げて、述べていきます。
『第三章 遠野の希死念慮』
……遠野自身、長い間、希死念慮(心理学用語で言う、自殺願望のこと)と向き合ってきた人間です。
小さい頃から、自分の存在価値が信じられず、『自分なんか消えてしまえばいいんだ』と何万回も何億回も思ってきた人間です。貞子よりも自分の存在を呪っていたかもね。
多少暗い話も混ざりますが。いやむしろメインになりますが。まあこんな人間でもなんとか生きてますよと。こういう話は具体例を出したほうがピンと来るものですから、あくまでサンプルとして、参考程度に受け止めていただければと思います。
『第四章 それでも死にたくなったら』
……『自殺はいけない』という観点を述べたのちに。それでも「死にたい」読者向けに、対処法をまとめてみます。
『終章 素晴らしきかな人生』
……まとめです。
以上の五部構成となります。
『おまけ』として、希死念慮が止まらない方向けの、暗い明るいエンターテイメントも紹介しようと思っています。
さて。ここからは未知なる海に出る船旅となります。どこになにが待ち構えているか分からない。でもそれはきっとワクワクドキドキできるもの! ……であって欲しい。
楽しい旅にしましょう。
*
【出典】
*1……厚生労働省自殺対策推進室『付録1 年齢別、原因・動機別自殺者数』
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/h28kakutei_7.pdf