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第2話「常識の欠落」

 アイテムボックスの他にも魔法として他のゲームメニューを出せないか試してみたが結局アイテムボックス以外は出せないことがわかった。


「うーん、ゲームメニューはアイテムボックスしか使えないかぁ……でもまあ全部無くなってスタートにならなかっただけでもすごいラッキーなんだけど。あーでも金と重要アイテムなくなってるのは痛いなぁ……」


 AWOでのアイテムボックスは所持金、消耗品、装備、重要アイテムの4つから構成されていた。消耗品はポーションや食べ物、鉱石やモンスターの素材アイテム等が収納されていて、装備は武器や防具等とアクセサリーや服などの見た目アイテムが収納されている。そして重要アイテムには地図や国に入国する際に必要となる証明書、移動を楽にする乗り物等の旅をする上で必須な物から便利アイテム等が収納されていた。

 お金に関してはあまり気にしていなかったが証明書や乗り物が無くなってしまったことにショックを受けるのだった。


「あっそうだ、味もわかるようになったんだしとりあえずポーション辺りでも飲んでみようかな」


 ゲーマーであれば誰しも感じる疑問を解消すべくアイテムボックスからポーションを取り出し口にする。


「あっ普通に美味しい……薬みたいもんだから不味いと思ってたけどジュースみたいだなぁ」


 長年の疑問を解消して一息ついたところで本格的に人を探すことにした誠司だがこの世界がどうなっているにしろ自分の存在が異質であることを考えると今のままでこの世界を巡り歩くことは色々マズイだろうと思った。


「とりあえずゲームでの設定をそのまま使えば多少変なことを口走っても問題はないかな……ないでしょうね」


 AWOでのロールプレイを思い出し喋り方や立ち振る舞いを世間知らずな凄腕傭兵メイドに合わせることにした。そしてこの世界では「月谷誠司」ではなく「ツクヨミ」として生きていくことにした。ここに体は女、心は男の美女が生まれた瞬間である。


「そうと決まればすぐにでも森を抜けることにしましょう」


 そしてツクヨミは森を抜けるべく愛刀や魔力糸を使い邪魔な木やモンスターをズバズバ切り捨てながら走り出したのであった。


 

 その後30分程走っているとようやく森を抜けたのであった。都合のいいことに森の目の前にも町らしき場所もあった。早速その町で情報収集しようと足を向けると入り口には皮と鉄を組み合わせた門番らしき男が声をかけてきた。


「おっと、お嬢さん。ここら辺じゃ見たことない顔だけど町に何か用かい?」

「ええ、私は大陸を旅している傭兵みたいものでしてちょうどこの町が目に入ったので寄ってみようかと思いましたの」

「はえ〜あんたみたい美人さんが旅とはねぇ……てか傭兵? メイドじゃないのかい?」

「一応メイドの真似事もできますけど本業は傭兵ですわ」


 無遠慮に全身を見てくる男の視線に若干の不快感を持つがそれも自分が作った女性の魅力故に行っていると思うと自然と顔がにやけてくる。


「ッ! あ、あんたがこの町に寄りたいってのはわかったけどここに入るには証明書を発行しなきゃいけないんだが金はあるかい」


 なぜか顔を赤くして慌てた男の言葉にツクヨミは苦い顔をした。


(そういえばゲームではお金は統一されてたから考えてませんでしたけど現実になった以上通貨とかも揃えないといけないんでしたね……)


 この町に入ることができなかったら次はいつになるかわからない以上不審に思われることを覚悟でアイテムボックスを開いて金の鉱石を取り出した。


「申し訳ありません門番さん、あまりお金は持っていませんのでこの金鉱石で発行してもらうことはできませんか?」

「き、金鉱石ってあんた! 証明書発行に必要なのは銀貨3枚だからそんなの逆にもらえねえよ」

「あっ、それでしたらお釣りとかはいりませんから代わりに通貨の価値とかを教えてくださいませんか? 旅をしてるのであまり人と関わる事も少ないのでそういった常識もわかりませんの」

「いや、常識がわからないにしても証明書と情報だけで金鉱石っての釣り合わなすぎるって……」


 そうツクヨミと男は話し合いながら最終的には証明書+一般常識+男の金である銀貨10枚と銅貨30枚との交換になった。

 教えて貰ったところ、通貨は5種類あり大金貨と呼ばれる小判を少し厚くしたようなものと通常金貨と呼ばれる500円玉くらいの大きさのもの、そして100円サイズの銀貨、1円サイズの小銀貨、5円サイズの銅貨で分かれているようだ。

 価値は大金貨が日本でいう10万円、通常の金貨が1万円、銀貨が1000円、小銀貨が100円、銅貨が10円とのこと。

 取引の際は専用の秤と材質を確かめる魔道具を使うことで詐欺などができないようにしているとのこと。

 通貨と情報を貰っておいてなんですけどまだ金鉱石が本物かわからないのにここまでしてくれるなんて人がいいんですね、と男に言うとまた顔を赤くして、証明書を発行する以上不正を行ったらすぐに国中でお尋ね者になるから心配するようなことじゃないとのこと。あと、あんたは嘘をつくような人じゃないと照れたように言われたのだが会って間もないのに何を言ってんだお前はと思ったが証明書を受け取れたので特に気にしなかった。

 町に入る前に一般常識を得て、小回りのきく通貨も手に入れることができたので幸先がいいなぁと思いながら町に入るのであった。

ようやく「月谷誠司」から「ツクヨミ」として出発することになりました。

いきなり女みたい口調になって違和感を感じるかもしれませんがロールだからいいのです!

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