表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人兵器が愛を知る方法  作者: たてごと♪
【4】狂乱
43/66

〔4-1〕100

 目の前にある紙切れに書かれた、文字が信じられなかった。


 それは期末テストの成績表で、そこには軒並み90以上の数字が並んでいたのだ。

 うち二つに至っては、100とある。


 小学校を卒業したが最後、70以上の得点には縁が無かった筈だった。

 もちろん、採点済みの答案は先立って返却されているのだから、それはあらかじめ判っていた筈ではあるのだが、いざこうして一覧として眺めてしまうと、これはもはや。


 何が何だか、わからない……。


 確かにあれから、リリィからいろいろとみっちり叩き込まれはした。

 しかしそれも別に、徹夜するほど長時間だったという訳でもない。


「大切なのは毎日継続する事であって、長時間連続する事ではありません」


 そんな事を言っていた。


 そのリリィの教え方とは驚いた事に、関連するものは教科書に書いていない事まで絡めて、何でもかんでも教え込むというものだった。

 知識量が増えるのであれば、覚え切れなくて効率が下がってしまうのではないか、と思ったけれども。

 つまりリリィが言うには、問題に対して必要な解法が出てこないのは、その問題と解法をつなぐ情報が欠落しているからだ、との事。

 だからそれをまんべんなく補完すれば、覚えた筈のものが出てこないような事はそうそう無い。

 そういう寸法らしかった。


 しかし、それがどれだけ完璧だったとしても、あの短期間のうちに高校入学以来の範囲を総ざらいした訳だから、何か抜け目があるだろうと思っていた。

 それでもすべての答案のすべての項目を埋める事はできたので、まあ赤点だけは無いかな、程度の認識だった、の、だが……。


 まさか、こんな結果になってしまうとは。


「宮前くん……凄過ぎだよ?」


「いや……僕にも、何がどうなっているのか……」


「でも実力でしょ? カンニングした訳じゃないよね?」


「それは、まあ、そうだけれども……」


「オリヒコ。よく頑張りました」


 そんなねぎらいを掛けてきたリリィには、少し前に制服が支給されていた。

 夏服のそれは半袖に短目のスカートで、手足が隠れるのを嫌う彼女にも充分許容範囲だったようだ。

 それは、とても似合っていて。


 初めて見た時にはちょっと見とれてしまったが、そういえば松平瑞穂はあまり焼き餅を焼かない。

 それどころか一緒になって見とれていたから、ケンカにもならない。

 僕も随分いい身分だと思う。


 その彼女はリリィに話し掛ける。


「リリィちゃん流石。私もやせ我慢してないで、一緒に教えてもらえばよかったかな?」


「ミズホ。あなたはどうして辞退しましたか?」


「あー、いやあ……そんなに高得点に興味は無かったし、勉強漬けになるのも何となく嫌で。でも、こんなの見せられちゃったら……私って現金なのかな?」


「明日の終業式をはさんで、明後日から夏休みです。せっかく住まいを共にしているんですから、これから少しずつ一緒に勉強していきましょう」


「よろしくお願いします、リリィ先生!」


「ミズホ。先生とは云えないでしょう。同時刻の生まれなんですから」


「あ。何かそれ、宮前くんにも似たような事言われたよ? ってかそれが、私が決定的に口説かれちゃった理由の一つなんだけども」


「それは、知っていますよ」


「え。えええええ。どうしてそれ……あ。それ……み・や・ま・え・くーん?」


「あ、いやその……」


「ミズホ、私がそれを知ったのは別経路ですから、オリヒコを咎めないでください」


「別ですと? 誰かなー、それ……って、他に誰も居なかったじゃん! えええええ、別経路ー?」


 松平瑞穂は両手の五指を髪に突っ込んで頭を抱えつつ、悩み入ってしまった。

 うーん、何だかなあ。


 っつーか、はっきり判ったのは今だけど、やっぱりあの告白もどうやってかして覗いてたんだな、リリィは。

 まあそんなの、今となってはどうでもいいんだけどさ。


「ところで住まいといえば、昨日の夜に驚くほど都合のいい物件を見付ける事ができました。ネット経由で見学を申し込み済みですから、今日これから行きましょう」


「へえ! 見付かったんだ。リリィちゃん、探すの苦労してたよね?」


「そうですね。探す範囲を大胆に広げて、それに伴って転校をしてしまう事も検討していたんですが、その物件がちょうど昨日、入居者募集になったんです」


「そっか。その物件はどれくらい都合がよかったの?」


「戸建てに比べれば手続きは簡便ですが、それでもマンションへの入居には一ヶ月から三ヶ月くらい掛かるものです。ところがそこは即入居が可能との事で、契約を交わせば一週間を待たずに入居できるものと思います」


「へええ」


「未成年者のみの入居も許可されていますし、間取りは……これはむしろ上等過ぎるんですが、まあ仕方ありません。ライフラインは随時開通可能との事ですし、近隣の商店や交通も充実しています。後は実際に見学してみて、遮音性やその他の事に問題が無いか確認するだけです」


「なるほどー。ちなみに、場所はどこなのかな?」


「すぐ近くです。最寄りは隣駅ですが、ここからだと自転車のほうが早いかも知れません。そこに決まったら自転車も買いましょう」


「おおー。何かワクワクしてきましたー」


「それと、ミズホ。あなたのノートPCに私が作成したマンション関連の資料やブックマークが、かなりの量になっています。それは大丈夫でしたか?」


「あ、それは全然問題無いよ? OKOK。それよりも……」


「約束は守ります。あなたの文書フォルダにはまったく触れていません」


「うん。私もリリィちゃんが約束破るとか思ってないけど、それでも頼みますよ? あれ見られたら私、多分普通に死ねるので」


 ホント、どんな文章書いているんだろうなあ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ