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殺人兵器が愛を知る方法  作者: たてごと♪
【3】超人と呼ぶべき存在
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〔3-11〕確認

 聞き終われば松平瑞穂は、ほー、と溜め息のようなものをつく。


「確かに、リリィちゃんが言う事は全部正しいと思う……けど。現実として、結婚は許されてないんだよねえ。ところで、リリィちゃん結婚ダメってどうして? 束縛されるのがイヤとか、そういう事?」


「いいえ、私の好き嫌いの問題ではありません。もっと単純で、だからこそどうにもしがたい問題があります。つまり、私の籍は世界のどこにもありませんから、日本人であるオリヒコとの結婚には、書類上の手続きがどうやっても不可能なんです」


「え」


 あ、そうか。

 考えなかった。

 しかし、作られたと云うなら、籍が無いのはごく当たり前の話だ。


「そもそも結婚とは、本人たちがどうこうという話ではありません。一緒になるだけなら本人たちが永遠を誓い合うだけで充分ですし、性交に及べば子は為せますから、夫婦になるのに他の裏付けは必要無いんです」


「いや、そうだろうけど。でもそれじゃあ、きちんと夫婦になったって見られないんじゃないの?」


「そうなんです。つまり結婚とは夫婦になる事自体ではなくて、二人が夫婦である事を周囲が認めて、盛り立てていく。そういう事を本人たちと周囲の人たちの間で約束する一種の契約で、だから本人たち以外の人々が判断する話なんですよ」


「……あー」


 うーん。

 まあ、結婚と恋愛は別物、っていうのはみんな解ってるとは思うけど、ここまできちんと認識している人はあんまり居ないかも知れない。


「そういう意味では、例えば駆け落ちなんかによって結ばれる事は結婚とは呼べない筈です。にもかかわらず、見ず知らずの人間を証人に立てるだけで結婚できてしまう現代の婚姻制度は、なかなかのザルだと私は思います」


「あー……そう言われてみれば、そうかも?」


「その誰と誰が一緒になるかについて、誰と法的に特定する為のものが国籍や戸籍というものなんですが、ただ私の身の上を考えれば、新たにそれを得るのは絶望的なんです」


「難しいんだ?」


「不可能に近いです。自治体によっては、住民登録があれば籍が無くても婚姻届を受理するケースがあるようですが、やっぱり身の上の事があって、私の住民票を置いてくれる自治体があるかどうか疑問ですし」


「確かにまあ、この見た目だと日本じゃあ、みなしごにもならないね……あ。それこそアメリカとか、外国でなら?」


「いえ、身元不明の人間がまともに扱われる事が保証されている国は、ほぼ皆無です。それに、そうでない国は他の国に対して信用がありませんから、その国籍を取得する価値はありません。そういった条件はどこでも変わりありませんから、日本から出て行く意味もこれといって無いんです」


「あー、ダメなのか……」


「とにかく繰り返しになりますが、それは絶望的です。そしてそれでは周囲から、私は誰と認めてなんかもらえませんから、だから私は結婚ができないんです。あるいは、内縁や事実婚を言い張るだけなら可能かも知れませんが、その生活にはいろいろ支障が出るでしょう」


「うーん……そうなんだね……」


 と。

 ここまで僕とリリィだけでくっちゃべってしまい、置き去りを喰っていた松平瑞穂が、至極当然の質問を口にした。


「ねえ、あの……。リリィちゃんって……どういう、子、なの?」


「あー、えっとそれは……」


 ちらり。

 ちょっと迷ったのでリリィに少し目を遣ると、リリィも少しこちらに目線を送ったのち、彼女へ告げた。


「そうですね。あなたは重大な告白を、私たちにしました。だから私も、告白する事にします。私は……人間ではありません」


「……人間、じゃ、ない……?」


 その時、松平瑞穂の手にしていたケータイが鳴った。

 アラームのようだ。


「あ、あれ……もうこんな時間。ごめんなさい、その話、今度ゆっくり教えて? 私ちょっと、これから用事があります。ごめんね?」


 そう言うと松平瑞穂は、とても慌てた様子でベッドを離れては、服を身に着け始める。


「この部屋、七時までフリータイムだから。二人でゆっくりしていったらいいよ? 代金、ここ置いてくから。ごめんね? じゃあ! ごめんね?」


 そうして彼女は、疾風のごとき素早さで部屋を後にしてしまった。

 二人、残される。


「行っちゃった、な……」


「オリヒコ。お願いがあります」


「え。何?」


「確認したい事があります。その為にもう一度、私を抱き締めてください」


「え、あ、そう? ……じゃ、おいで」


「はい」


 リリィはベッドに乗り上ったが、しかしすぐには寄り添ってこない。


「どうしたの?」


「私が服を着ていて、あなたが裸のままという事を妙に思います。私も脱いだほうが、いいですか?」


「あ……あー。まあそれは、リリィの好きで」


「そうですか。では、脱ぐ事にします」


 するすると脱ぎ始めるリリィ。

 そこに少しも躊躇いは無いようだ。

 彼女は普通の女の子を目指してるんだろうけど、でもそれに近付くには……まだ道のりは遠い、かな?


 っつーか。

 女の子が男の目の前で服を脱ぐって、めちゃんことんでもない事だと思うんだけれども。

 ここまでナチュラルにやられてしまうと何か、ドキドキしない……という訳でもないんだけれど、何かが違う。


「では、お願いします」


「うん。ええと……横になったほうが?」


「そのほうが楽ではありますね」


 二人ベッドに寝そべり、抱き合う。

 その抱き心地は、松平瑞穂には悪いが、リリィのほうがはるかに良い。

 おそらく、その肉付きによらず肌の感触というものは、そんなに違いは無いんだろうと思う。

 ただ、精神的に受ける印象が大幅に違った。


「えっと……確認って、何なのかな?」


「ごめんなさい。いいと言うまで、こうしていてください」


 そう言われれば、黙って待つしか無い。


「……」


「……」


 まあ、とにかく裸身で抱き付かれる気分はいいし、ふわらかな抱き心地もいいし、良い匂いまでするし、嫌という訳では間違ってもないのだけれども。

 しかし……。


「……」


「……」


「……」


「……」


 しかしそれは、異様に長かったのだ。

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