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殺人兵器が愛を知る方法  作者: たてごと♪
【3】超人と呼ぶべき存在
32/66

〔3-10〕嫉妬

「……」


「……」


「……ありがとう。凄く、素敵、だったよ? 宮前くん……」


「……松平さん、も……」


「好きな人が相手だと、こんなに違うんだなあ、って……」


「……」


「そのテープが出てきた時には、ちょっとびっくりしたけど……大丈夫? それ……」


「まあ……何とか」


「……そっか」


「……」


「……ふにゅ……」


 まあ一度帰宅という事になり、それならばとリリィに言われてドラッグストアへ立ち寄って傷保護のためのテープを買い求め、それを貼る事によってラップとはお別れになっていた。

 これは一度貼ったら、はがれ出さない限りは傷が治るまでずっと貼りっ放しでいいらしく、今は本当に便利なものが売られているものである。


 何にしても、まだ二人は裸のままだ。

 やんわりしがみついてくる松平瑞穂の肌は、やはり心地がよい。


「ところで、私がラブホじゃないとダメな理由……お解りいただけました、かな?」


「ちょっと……びっくり、したかな」


 それは、声である。

 松平瑞穂の口からは、とんでもない音量の声がこぼれ出したのだ。

 こういった時に女性が声を抑えるのは至難という話ではあるが、しかし彼女のそれはそんな次元ではない。

 確かにこれでは、下手な場所だと嫌でも広範囲へ響き渡ってしまう。


「でも、エッチな女の子だなんて思わないでね? 出したくて出してる訳じゃあ、なくて……でもどうやっても、抑えられなくて……それにあれ、凄い恥ずかしいんだよ?」


「うん……」


 そこへ、ずっと傍観していたリリィが割り込んできた。


「ミズホ。一つ、訊いてもいいですか?」


「え。あ。えっとリリィちゃん、なあに?」


「実はさっき、私はとても驚いたんです。口を使って、という発想がまったくありませんでしたから。でも、そういう行為こそ、恥ずかしく感じはしないものなんですか?」


「……あー……えー……あー……」


 リリィ……突っ込まないでよ、そういうのは。

 松平さん大変だから。


「それはまあ……恥ずかしいよ? すっごい。でも、好きな相手なら……って事かな?」


「確かに愛情を示す行為としては、相手を舐めたり、相手の一部を口に含んだり、さらに甘噛みしたりするのは一般的ではありますが……しかし、相手の精液まで飲み下すというのには、少々理解が……」


 セー……その言葉をはっきり言わないでくださいー……。


「あー……それは、宮前くんだから頑張れたんだよ? 校長のは全力で拒否しました」


「つまり、それくらい好きだという気持ちを示しているものなんですか?」


「ええと……まあ、突き詰めて言えば、そういう事になるのかな?」


「そうですか、なるほど。それについて実はもう一つ、気になる事があるんですが……」


「え……な、なあに?」


「食べる為に作られている訳ではない物は基本的に美味しく感じない筈なんですが、美味しかったですか?」


 ……。


「……ふええええ……」


「ストーップ。リリィ、ストーップ。もうそれやめて。松平さん死んじゃう」


「どういう事ですか?」


「いや、もういいでしょ。僕もそれで嬉しかったんだよ。もうそれでいいじゃん」


「つまり、気持ちがよかったという事ですか?」


「はいはい気持ちよかった気持ちよかった! 後で説明するから!」


「いえしかし、こういう機会を逃したくはありません。そういえばミズホ、あなたも気持ちがよかったですか?」


「リリィってば!」


 もういい加減、強制的に物理的に、リリィの口を塞いでしまおうか。

 そう思い始めた時、松平瑞穂がおずおずと言い出した。


「あー……その……それ」


「え?」


「私もちょっと、びっくりしちゃって。ケーケンほとんど無い筈の宮前くんに、まさかあんなに気持ちよくさせられちゃうとか、思わなくて。うん」


「え……えー?」


 あれ?

 何かお鉢がこちらに回ってきた?

 特に何か頑張ったつもり無いよ?


 何か妙に、いたずらっぽそうな顔をする松平瑞穂。


「ねえ、リリィちゃんで上手くなった? もう既にヤりまくりですか? あはは、ニクいですぞエロ大魔神様!」


「あ……えっと、いや……えっと、リリィとは……そういう事には」


「……え」


 それは意外な言葉だったらしい。

 一瞬きょとんとした、のち。


「えええええええええっ?」


 一変、いきなり激昂した松平瑞穂が僕に食って掛かる。


「どうして? 何で? 一方的だったの? ちゃんとしてあげてよ! リリィちゃん可哀想じゃん!」


「それは……その」


「あーもう宮前くん正座! いーですか宮前くん? こーいう事はですね、一人でするものじゃなくて、二人で協力して作り上げていくもので……」


 何すか?

 正座って……。


 よく解らないものが始まってしまいそうになったが、リリィが割って入ってくれた。


「ミズホ、それは見当違いです。ただでさえ、奥手のオリヒコです。彼が、そんな扱いをすると思いますか?」


「あ……あー。そっか……ごめんね?」


「それに、忘れていませんか? 私は普通ではない、と言いました」


「……え」


「云うなら私は極度の不感症で、ついでに無感動症なんです。厳密に云えばまったく違いますが、大体そんなようなものです。とにかく私は、オリヒコが何を与えてくれても、何を受け取る事もできません。何を返してあげる事もできません。それは肉体的にも、精神的にもです。だから、あなたにお願いしたんです」


「え……それは……えええええ? そんな。そんなのって……」


「それは、いい結果になったと思います。あなたに感謝します、ミズホ。ありがとうございました。そして……これからも、よろしくお願いします」


「……リリィ、ちゃん……」


「……リリィ……」


 嫉妬を理解した。

 そう僕に申告した筈のリリィは、一体このセリフをどんな気持ちで放ったのだろうか。

 胸が……チクチク痛んだ。


「これからといえばミズホ、オリヒコにあなたの連絡先を伝えてあげて欲しいと思います。さっき確認した所、彼のケータイにはその登録が無いようですし、ミズホも今後それではまた困るでしょう」


「あ……そっか、そうだったね。じゃあ」


 そんな事を言われて、僕と松平瑞穂は手に手にケータイを持ち、連絡先の交換作業をする……けれど。

 えーと。


「リリィ」


「何ですか?」


「さっき確認した、って? いつでもよかった気がするけど、何でこんな時に?」


「はい。実は少し前、あなたのケータイへ通話の着信があったんです。あなたのお母様のようでしたので、ご挨拶をと思って私が応対しました。そのついでですよ」


 ……。


「ちょっとおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「何か問題ありますか?」


「問題しか無いよ!」


「どんな問題が?」


「いや、だからまず! リリィがいきなり出るとかダメだし!」


「そんな事はありません。あなたがお姉様に送った写真の件でしたので、むしろちょうどよかったかと。それにあなたたちはクライマックスに差し掛かっていましたから、あなたが出る訳には」


「クライマックス……って! そんなの放置してよ!」


「そ、それ……私の声も、聴こえちゃったんじゃあ……」


「そのようです。尋ねられましたので、状況は説明しました」


「説明するなあああああああああああああああああああああああああ!」


 帰れねえ!

 帰れねえよ夏休み!


 リリィはいろいろ物知りなのに、何で常識だけこんなに物知らずなんだよ!


 僕はもう心の中でだびだびに泣いてしまっていたが、それはもちろん松平瑞穂もだ。


「い……いきなり宮前くんのお母さんに、こんな? は……恥ずかし、過ぎるよ……?」


「大丈夫です。あなたはオリヒコの花嫁候補ですから、問題ありません」


「え? はい? は、花嫁?」


「現時点ではあなたしか相手は居ないんですよ? 私は結婚できませんし」


「け、結婚、とか……そんな。わ、私が、宮前くんと、とか……ちょっと、早い、よ?」


「はい、確かにオリヒコが十八になるまで待たなければいけないという点では、早いと云えます。でも、それだけです」


「それだけ、って……そんな簡単に……」


「そうですね。先日私がオリヒコに言った考えを、ミズホにも聞いてもらいましょうか」


「……考え?」


 ああ、あれですか。


 それから少し時間を掛けてあの、倫理がどうとかいう話。

 あれをリリィは、松平瑞穂にした。

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