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殺人兵器が愛を知る方法  作者: たてごと♪
【2】MK.2と呼ばれた少女
19/66

〔2-10〕お願いします

「私は、性交渉は未経験です。もしかしたらその行為で、何かが芽生えるかも知れません」


「いや、でも……」


「それに私には、月の障りがあります。もし私にも子どもを授かる事ができたとしたら、それも何かが芽生えるきっかけになるかも知れません」


「あの……僕は、今すぐ子持ちになるのはちょっと……」


「その場合は、迷惑が掛からないように配慮します」


「いや……迷惑とか何とか、そういう……」


「お願いできませんか? ……今まで、居なかったんです」


「……え」


「私の相手は、常に強敵でした。一つ気を抜けば、こちらがやられる。そんな相手です。とても、愛を語るような余地なんかありませんでした。そして、命令が下っている時以外に、私の自由行動はありませんでした。私には、人と会話する機会がほとんど無かった。こんな話ができたのは、あなたが初めてなんです」


「……」


 それは……確かに寂しいかも知れないし、でもだからって……。


「そういえば、そこにまた一つ疑問があります。私の相手は強敵ばかり。つまり、あなたが私の標的になるのは不自然なんです。どうしてでしょうか? それともあなたは何か、特別な能力を隠していますか?」


「……いや別に、目からビーム出たりはしないけど……」


「そうですよね。私もあなたを把握する為に、しばらくあなたを監視していましたが、そんな素振りは見られませんでした」


「え……か、監視?」


「はい。あなたが常人である事を知ったので、それを確認する為に。その結果、見れば見るほどあなたが本当にただの常人だと判って、疑問は強まるばかりで……結局、一ヶ月ほど躊躇い続けてしまう事になりました」


「いや、あの、ずっと……見てたの?」


「常時ではありませんが、要所は押さえたつもりです」


 ……恥ずかしい。

 っつーか、プライバシー返して。


「例えば……何が見えたのかな?」


「驚くほど、特筆すべき点がありませんでした」


「そ、そう」


 そういう結論なら、まあ……見られてないのと一緒、なのかな?

 じゃあ、いいか……。


「強いて言うならとても……とても、たくさん。精液を無駄遣いしている事でしょうか」


 ……。


「何を見たああああああああああああああああああ!」


 何から何まで全部見られてたですかー!


 わたし泣いていいですかー!


「タオル、ちゃんと押さえていてください」


「あ……あああ。ごめん」


「だからあなたは切実に、耐え難いまでに性欲を持て余しているんだと思いました。なのに、私に対していろいろと遠慮をするのは、どうにも理解できません」


「……放っといてよ……」


「その性欲を、私の為に使ってくれませんか?」


 ……はあ。

 もう。


 ダメだこの子、早く何とかしないと……。


「えっと。あのね」


「はい?」


「確かに人にエッチな事をさせちゃうのは、性欲だよ。でも、男と女の関係とか、好きとか嫌いとか、そういうのは、それだけじゃないんだよ」


「それは?」


「人によって変わるよ。ただ、単純じゃない。そういう複雑なものが、性欲を呑み込んじゃう事なんて普通にあるんだよ」


「なら、あなたが私を向いてくれるには、何が必要ですか?」


「そんな事が丸解りになるなら……片想いも失恋も無くなるよ」


「そうですか。……そうかも知れません」


 分かって、くれた、か……。


 と思ったのは早計だったらしい。

 彼女は言葉を続けた。


「でもそれは……説得力、ありませんよ?」


「え?」


「あなたはずっと……私の服を脱がしたあたりから。準備完了しています。違いますか? それは、他の何かが性欲を呑み込んでいる状態と云えるんですか?」


 ぬああああ、きっちりチェックされてたのね……。


 何かもう、何かもうね……。


 うわーん。


「いや……これはその……いや、だから……だから、性欲だけじゃエッチは」


「気持ちも重要。そういう事ですか?」


「分かってるじゃんか。少なくとも……取りあえず、って感じでする事じゃあ、ないよ」


「それなら私は、一定期間あなたを見続けていました。その上で、私はあなたがいいと思いました。あなたでなくては嫌だと思いました。それではダメですか?」


「……」


「あなたは、私が相手では、嫌ですか? ……答えてください」


 そう言って見詰めてくる彼女の顔は、相も変わらず無表情。


 でも、今の言葉に、嘘は無いと思う。

 だから、ちゃんと言わなきゃ。


「ええと、あのね……」


「はい?」


「僕は……好きな子が居てね。まあ振られたのは、さっき言った通りなんだけれども」


「何の話ですか?」


「それでもその子を、好きなままなんだ。だから、こんな状態じゃ、君の事、ちゃんと愛してあげられない。だから、ダメなんだよ」


「……なるほど。そうですか。あなたの言いたい事は、あなたの気持ちは、解りました」


 今度こそ分かってくれた、か……。


 と思ったのも早計だったらしい。

 彼女の言葉はまだ続く。


「でもそれは……私の質問に対する答えにはなっていません。私は、していいかどうかではなくて、したいかどうかを訊いているんです。結局、私が相手では嫌なんですか? そうではないんですか?」


「容赦無いなあ……正直嫌では、ないよ? むしろ、進んでお願いしたいくらい」


「なら」


「それができないのは、今言った通りだから」


「曲げて、お願いします」


「いや……だからさ……」


「最大限の努力をする。その約束は、嘘なんですか?」


「それは……嘘にするつもりは無いけれども……それとこれとは」


「気持ちは、変えられないかも知れません。でも、変わったという事にする。その程度なら、努力で対応できませんか?」


「……そうかも知れないけれど……」


 これ、どうやって説得したらいい?

 かなりお手上げだよ?


「君は、さ。どうしても今すぐ、したいの?」


「お願いします」


 即答……。


 いや、軽々しく言い寄ってきてるだけなら、いくらでも突っ跳ねられるだろうし。

 あるいは深く考えずに、つまみ食いしてしまってもいい気がしないでもないけれど。


 この子は間違いなく真剣に言ってきてるよね……。

 うーん……。


「いやいやいや。僕も今はそんな気、起こらないし。でも君、可愛いし。そのうち君に、気持ちが向くかも知れないよ? それまで、待てない?」


「可能なら、早いほうがいいです。お願いできませんか?」


「いやいやいや。だからさ……」


 そういった問答の後。

 彼女が発した言葉は、地味ではあるが、抵抗し難い。

 そんな感じの殺し文句だった。


「例えば先に私とセックスしたら、後になってあなたの気持ちが私へ向くのが早まったりしませんか?」


「……」


 それはある。

 女の子の場合は判らないけど男なら絶対ある。

 否定できない。


 Gの後にはHがあり、Hの後にはIがある。

 そんなジョークかジョークとして成立する所以だ。

 もちろんエッチ目的だけの子だったら、性欲がはければ飽きて飽きられる可能性があるけれど、この子に限ってそれは無い。


「どうですか?」


「うーん……まあ、そういう事もあるかも知れないけれども……」


「では、お願いします。是非」


「……」


 断る言葉が見付からない。

 見付からないのだが……ふと思う。


 それはつまり、断らなきゃいけない理由が、無いからなのではないだろうか?


 だとしたら、あるいは……頷いてしまっても?


「……いいの? それで」


「私のほうがお願いしているんです」


「……」


「お願いします」


「……」


「私を、助けると思って。あなたはさっき、そうしたいと言いました」


「……」


「お願いします。どうか」


「……」


 も、限界。


 兵器だか何だか、知らないけれど。

 それでもこんなに可愛い子に、ここまで迫られたら。

 断れなくても、罪じゃないよね?

 操を立てなきゃいけない相手が、居る訳でもないし。


「うん……じゃあ」


「ありがとうございます」


 うーん……何か、いたす事になっちゃいました……。


 これでいいんだろうか。

 頭の中で、天使が悪魔に屈服する光景が展開された。

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