あなたの瞳に映るのは……。
あなたの瞳には、いつも私以外の人が映ってる。
一体、誰を見ているの?
私は、気になりその視線を辿る。
そこに居るのは、クラス一可愛いと言われてる、彼女。
その子は、私の親友。
彼女には、年上の彼がいるのに……。
あなたの想いは、届かない。
あなたのその優しい眼差しには、彼女を映してるの?
そんな愛しそうな瞳で、彼女を見ないで…。
嫉妬してしまいそうになる。
親友の彼女に当たり散らしてしまいそうで……。
ある日。
突然、彼から声を掛けられた。
「今日の放課後、残っててくれないか?」
私は、嬉しいのと恥ずかしいので、頷くことしか出来なかった。
ふと思った。
何故、私なのだろうか?
彼が好きなのは、親友の彼女のはずだ。
悶々と考えた。
あっ、そっか…。
私が、彼女と仲がいいから、仲を取り持って欲しいって相談だ。
きっとそうだ。
半ば強引に自分の中で結論をつけた。
放課後。
誰も居なくなった教室で、校庭を見ていた。
グランドから部活動の掛け声が時折聞こえてくる。
ガラッ……。
「悪い」
そう言って、彼が声をかけてきた。
私は、その声で振り返る。
彼は、部活を抜け出してきたのか、ユニフォーム姿だ。
私は、そんな彼に横に首を振った。
「…で、どうしたの?」
私は、そう聞いていた。
心臓が、破裂しそうな位ドクドクと音をたてる。
何を言われるんだろう?
予測は出来てる。
でも、怖い。
本人の口から直接、親友の名前を聞くのは……。
「君が、好きです。俺と付き合ってください」
えっ…。
私は、思わず彼を見いってしまった。
「…だってあなたは私の親友の事を好きな…」
って口を滑らせ、私は慌てて手で口を塞いだ。
「ハァ?俺が、好きなのは、君だよ。誰が、彼女の事を好きだって言ったの?俺、そいつに訂正しに行く」
って…。
あれ…?
じゃあ、私の勘違い…なの?
エッ……。
でも、あの優しい眼差しは……。
「俺が、何時も見てたのは、彼女じゃなく、君。君の笑顔が、俺を惹き付けていたんだ」
って……。
エッ…と、それは……。
「ねぇ、返事、聞かせてもらえないかな?」
優しい眼差しを私に向けてきた。
「私も、あなたの事が、好きです。よろしくお願いします」
声が、震えたけど、なんとか最後まで言えた。
恥ずかしくて、顔も真っ赤であろう私に。
「うん。よろしく」
って、満面な笑顔を見せた。
まさか、あなたの瞳に映っていたのが、自分だったなんて……。
思いもよらぬ解答をもらったようだ。
あなたの瞳に映るのは……私だった。
〈彼目線〉
何時も気になっていた。
同じクラスの彼女。
仲のいい友達と話してる時に見せる屈託の無い笑顔。そこだけが、向日葵が咲き誇ってるように見えた。君の暖かい笑顔を自分に向けて欲しくて、時折彼女を見つめてた。
たまに視線が合うと直ぐに逸れしてしまう君。
そして、寂しそうな顔をする君をみてると抱き締めてあげたくなる『傍に居るよ』って、伝えたくなる。
ある日、勇気を振り絞って。
「今日の放課後、少し残ってくれないか?」
彼女に告げた。
彼女は、照れてたのか、俯いて頷くだけだったが、それがとても愛しくて、直ぐにでも抱き締めたくなった。
……が、今は我慢だ。
放課後。
俺は、部活に顔を出して休憩時間に抜け出した。
教室までダッシュで走り抜ける。
彼女は、廊下に背を向けてグランドを見ていた。
約束、守ってくれたんだ。
それが、嬉しくて待たせてしまった罪悪感もあって、そっと声をかけた。
「悪い」
その言葉に彼女が振り向いた。
何か、切羽詰まった感じが俺を緊張させる。
「… で、どうしたの?」
彼女の戸惑いをよそにし。
さぁ、言うぞ。
「君が好きです。俺と付き合ってください」
言った。
…が、彼女は驚きと戸惑いの顔を見せた。
そして。
「…だってあなたは、私の親友の事をすきな…」
って言葉が彼女の口から紡がれた。
誰だよ。そんな事を彼女に言ったのは!
「ハァ?俺が好きなのは、君だよ。誰が、彼女の事を好きって言ったの?俺、そいつに訂正しに行く」
俺の口からそんな言葉が出た。
何て勘違いされてるんだ。
俺は、ずっと君しか見てなかったと言うのに…。
「俺が、何時も見ていたのは、彼女じゃなく君。君の笑顔が、俺を惹き付けていたんだ」
そう、あの向日葵の笑顔を傍で見たいから、今告げたんだ。
彼女の驚いた顔が、可愛くて仕方がない。
「ねぇ、返事聞かせてもらえないかな?」
俺は不安に思いながらも、彼女の返事を待つ。
心臓、破裂しそうなほど鼓動が早くなる。
何か、死の宣告を待ってるようだ。
君の気持ち、教えて…。
「私もあなたの事が好きです。よろしくお願いします」
って、顔を赤らめて俺を見つめてくる。
ヤバイ。
めちゃ、嬉しい。
俺は、満面な笑みを浮かべて。
「うん。よろしく」
照れ隠しをしながらそっぽ向いた。
ずっと見ていた彼女を自分の物に出来た嬉しさから、抱き締めたい衝動をグッとこらえていた。