VRMMO 砂浜に再挑戦(準備)
ログインすると自室のベッドで横になった体勢になっていた。リアルで起床した時みたいに身体を起こしながらベッドに腰掛ける。
(まず最初にする事は・・・。)
と考えながらステータス画面から設定を開いて、ドロップ品を自動で回収するように設定した。
(これで楽になるはず。さて、今日はどうしようかな。行けなかった山に行くのもいいけど、昨日でかなりスキルレベルが上がったから、今日も草人形と砂人形と戦ったら職業ランクを上げれるんじゃないかな?山に強いモンスターが居るかも知れないから早めに上げておきたいし。ただ、まいちゃんは行きたがらないだろうし、武蔵は武蔵で行きたい場所があるかも知れないから、自分1人で行く事を考えると回復アイテムがあった方が時間効率がいいよなあ。1人で街に出るのは声を掛けられそうで嫌だけどしょうがないよな。)
そこまで考えた後、1階に下りると誰もいなかった。
(今日は誰も来ていないのかな?)
と思いながらカウンターを見ると、1枚の薄ピンク色の可愛らしい紙が置いてあった。文章が書かれていたので読んでみると、
『まいちゃん・武蔵君・ダチ君へ
ちょっと買い物に行って来るわ。
そんなに時間は掛からないと思うから、少し待っていてくれると嬉しいわ。
ママより♡』
(・・・ママって男性なんだよね?オカマって凄い。自分はハートマークなんて書いた事無いなあ。・・・とりあえず待つとするか。)
そしてカウンター席に座ってぼーーーっとしていた。しかし20分経っても帰って来ない。
(女性の買い物は時間が掛かるらしいけど、オカマにも当てはまるのかな?というかメールかチャット機能で連絡を取った方が早いかな?)
等と思っていると入口の扉が開く音がして、「ふう。疲れたわー」と言う声が聞こえてきた。振り向くとママが両手に荷物を重そうに持ちながら此方に向かって来ていた。
「ママ、こんばんは。」
「あらダチ君、こんばんは。待っててくれたの?遅くなってごめんなさいね。」
「いえ、急ぐ用事は無かったんで。あ、荷物持ちますよ。」
「いいの?じゃあお願いするわ。」
そう言ってママの荷物を受け取る。ママは重そうにしていたがあまり重くは無かった。ママはリアルでは重い物を持たないのかも知れない。
「と言うか荷物を道具袋(何故か入れた物が重量・質量共に少なくなる。数に上限はあるけど。)に入れたら良かったんでは?」
「確かにそうなんだけど、何か『リアルでの買い物した気分』になりたくて。あ、厨房までお願いするわ。」
ママの後に続いて厨房に入り、買って来た食材や調理用道具等を置いた後、ママとカウンター越しに座る。
「どうもありがとう。そういえば今日はまいちゃんも武蔵君も来ていないわね。」
「まいちゃんは昨日の事があったから来ていないかもと思っていたけど、武蔵はリアルが忙しいんでしょうか?」
「確か、仕事で忙しい期間があるから数日出来ない時があるとは言っていたわよ。その代わり時間がある時はほぼ丸1日大丈夫だと言っていたわ。今日はもう夜だし、多分来ないんじゃないかしら?ダチ君は今日はどうするの?」
「(武蔵は仕事をしているのか。まあ、20代中盤~後半位だろうしな。)おれ1人なら昨日まいちゃんと行った草原と海岸にもう1度行って、スキルレベルを上げて出来れば職業ランクを上げようかなと思っています。」
「職業レベル?そういえば私、昨日職業ランクが上がったわよ。難易度の高い調理の作成技術・調理時間短縮・調理時の疲労軽減・料理の追加能力とかが良くなったわね。」
(え?)と思いながらママの頭上を見てみると『職業ランク2 修練調理師』となっていた。
「・・・ママって結構長時間プレイしているんですか?」
「そうねえ。ダチ君の2倍はしているかしらね。で、ランク上げる為に草原と海岸に行くみたいだけど、昨日まいちゃんと2人で行って大変な事になったのに、大丈夫なの?」
「(ママはリアルでは何をしているんだろう?というかママには申し訳ないけど、『負けていられない』という気持ちが生まれるなあ。)防御重視で行けば大丈夫だと思います。ただ、回復アイテムが無いので時間効率が悪いのがありますけど。」
「まあ、大きい怪我をしないなら構わないわ。そういえば確か、『ダメージを受けたり、HPが0になった時の痛覚があり過ぎる』って意見が運営の方にかなり届いたみたいで、『痛覚の軽減』が明日から実装されるそうよ。まいちゃん復帰の役に立てばいいけど。回復アイテムは店で買えるわよ?」
「(『痛覚の軽減』か。まあ、今まで大きな怪我をしたことが無い人が7割ダメージで気絶するんだから、ゲームとしては異常だったとも言えるけど。)目立ったり話しかけられたくので、なるべく外を歩きたく無いんですよ。今日見たネットの掲示板にもおれの情報が書かれていたので。昨日はまいちゃんがいたし、カメラは欲しかったので。」
「あらあら結構知られているようね。別に話しかけられる位、構わないと思うけど・・・。そうだわ。じゃあ私が作っちゃおうかしら?」
「(多分、話しかけられるでは済まずに、ママの時みたいに連行される可能性もあると思う。)え?ママ作れるんですか?」
「『道具作成』スキルがあるわよ。ただ、今まで使ったことが無いからレベルは1だけど。少し時間がかかってもいいなら、簡単な物だったら作れると思うわ。」
「じゃあ待ちますのでお願いします。」
「分かったわ。じゃあその間、メニュー表を作ったから見てて頂戴。今日持って行きたい食べ物があったら教えてね。もちろん無料で作るわ。」
そう言ってママは厨房に入って行った。手渡されたメニュー表は居酒屋で見るような手書きのメニュー表だった。表紙に『持ち帰りは1.5倍価格よ♡』と書かれており、中を開くと最初はご飯物でおにぎり・親子丼・カツ丼・カレー等。次に1品物で餃子・肉炒め・サラダ・枝豆等かなり種類があった。最後にお冷・お茶・ジュース類・お酒類とデザート類があった。そして全てのメニューには、名前の横に金額(リアルでの金額とあまり変わらない)と、『HP(MP)〇〇%回復 30分(飲み物は10分)自然回復〇〇%上昇 満腹度(大か中か小)』と書かれていた。
「ママ、この満腹度ってなんですか?」
厨房からママの声がして、「昨日のアップデートで出来たのよ。全ての飲食アイテムについているわ。飲食するとそのプレイヤーの満腹度が上がるの。最初は0で最高は100。80を超えると身体機能が落ちていって、100になると飲食を含めた一切の行動が出来なくなるそうよ。時間経過で少しずつ下がっていって、体を動かしているとより下がりやすいらしいわ。プレイヤーのリアルの胃袋や消化能力によって、同じ物を食べても満腹度の上昇に違いが出るし、時間経過での減少もプレイヤー毎に違うわ。だから私なりの感覚で大・中・小としているのよ。」
「(そんな細かい所まで実装したんだ。ていうか胃袋や消化能力なんて分かるの?まあ、前から色々詳し過ぎるゲームだけど。さて、何を持って行こうかな?うーん、親子丼かな?『HP20%回復・30分自然回復20%上昇 満腹度 大』。今日は盾スキルを上げてランクを上げたいから攻撃はいらないよな。)ママ、親子丼を持って行きたいのでお願いします。」
「分かったわ。回復アイテムと一緒に作るからもう少し待っててね。」
その後再びぼーーーっとして待つ事10分。
厨房からママが出て来て、「お待たせ。はい、まずは親子丼よ。ダチ君なら食べられると思って、大盛りにしてあるわ。」
受け取って見てみると確かに重量感があり、『親子丼(大盛り) HP25%回復・30分自然回復25%上昇 満腹度 特大』となっていた。
「(まあ、食べれるサイズだからいいけど。)ありがとうございます。」と言って道具袋に入れる。
「それからこれが回復アイテムよ。ポーションとジューズのエキスを混ぜてみたのが良かったみたい。」
5つあったので受け取って見ると、『オレンジ味のポーション HP回復量 小 10分自然回復5%上昇 満腹度 小』となっていた。
「(飲食物は%回復で、純粋な回復アイテムは数値が決まっている感じなのかな?多分満腹度が上がりにくく、最大HPが多い自分には飲食物の方が合ってるな。オレンジ味になった事で、『10分自然回復5%上昇』が付いたのかな?)5つも作ってもらって、ありがとうございます。」
「いいのよ。私もスキルを試す事が出来たし、これも作ったら売れるかも知れないしね。じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい。」
「はい。行ってきます。」
と言って席を立ち、入り口付近の魔方陣から南門入り口に向かった。
※今回は職業ランク・スキルレベル・装備に変更が無いので、省略させて頂きます。