VRMMO まいちゃんとの2人組(後)
まいちゃんと南門に着くと、人でごった返していた。
(アップデートは朝方だった筈だけどなあ。ゲームに参加している人数が多過ぎるせいなのかな?仕事をしている人は夜するだろうからかな?)
「大勢いるね。まあ初日の東門も凄かったけど。」
「そんなにいたの?」
「うん。走るのはもちろん、歩くのも止まりながらになる位だったよ。」
「行かなくて良かった・・・」
「あはは。じゃあダチ君先頭でお願いしまーす。」
「そうなるよね・・・」
自分が人を掻き分けるように進んで行き、すぐ後ろをまいちゃんが付いて来る。そうして門をくぐり外に出る。外は草原が広がっており、1本の舗装されていない道が南門からそのまま南に向いて伸びている。
「サイトにあった情報どおりだね。この道の先に次の街があるみたいだよ。それにしてもやっぱり外も人が多いね。」と、まいちゃんが言う。
(確かに。これじゃあモンスターと戦えないかも。)
と思っていると、昨日4人で街中を歩いていた時に感じた物凄く強い視線を再び感じた。すぐに其方に振り向いてみると、少し離れた所に1人の戦士っぽい格好をしたプレイヤーがいた。ただ、その顔は「スマイルを浮かべた仮面」が付けられており顔は確認出来なかった。そのプレイヤーは自分が見ている事に気付いたのか、人ごみの中へと行ってしまった。
「どうしたのダチ君?」
「いや、何でもないよ。(何か不気味だけど、今の所何もされていないからまいちゃんに言う必要は無いだろう。)こんなに人が多かったら道なりに歩いていたらモンスターと戦えないかも知れないから、少し道から離れた所を南に向いて歩いてみる?もしモンスターが多かったら道沿いに戻っても良いだろうし。」
「そうだね。少し危ないかも知れないけど、モンスター倒してレベル上げて落としたアイテムをママにあげたいしね。お弁当作ってもらったし、新しい景色が見れるのはどっちも同じだしね。」
と言う事で、道から少し離れた所を南に進む事にした。自分が先頭になり少し進むと、初めて見るモンスターが2匹、ゆっくりと此方に向かって来た。盾を構えつつ観察してみると、『草人形 抜かれた雑草が集まった植物体 移動可能・手にあたる部分で叩いて攻撃してくる。レベル7 HP30 属性?? 弱点??』との事だった。
(あれ?ドロップ品情報は?)
と思いながら草人形からの攻撃を盾でガードする。『ガンッ』と言う、草がぶつかったとは思えない音と衝撃が伝わる。ウルフの突撃が少し優しくなった位の感覚である。その後、まいちゃんが、
「よーし!昨日覚えた魔法でいっちゃうよー。ヒートボール!」
まいちゃんが杖を上に掲げると、その杖から昨日見たのより大きい火の玉が弧を描いて草人形にぶつかる。そのまま一匹は全身を焼かれて消えていった。
(まあ、火には弱いだろうなあ。攻撃はまいちゃんに任せておいてもいいけど、自分も大剣スキル上げたいから攻撃してみるか。)
そう思い草人形の攻撃を防御した後、大剣で草人形を斬りつける。しかし2割程HPが残ってしまい、そのまま草人形の攻撃をグリーブで受けてしまう。脛をほんの少し蹴られた様な感覚がありHPが5%位減る。そのままもう1度大剣で斬りつけて戦闘が終了した。ドロップ品(薬草(そのままでは使えないらしい)や食用雑草等)を拾っているとまいちゃんが、
「さっき攻撃されていたけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。痛みはほとんど無かったからね。HPが少し減った位。」
「あ、じゃあ癒魔法で回復させるね。」
と言うと、攻撃を受けた脛に両手を近づける。すると白く光る玉が手のひらに現れ、脛に暖かさを感じた。HPは少しずつ(毎秒1%位)回復していった。
「よし。全快したね。ダチ君のHPバー、左側が少し白いけど何かあるの?」
「ありがとう。多分、スキルでHPが10%上がっているからだと思う。というかそんなに魔法使ってMPとか大丈夫?」
「HPを上げるスキルとかあるんだ。ダチ君にうってつけだね。MPは大丈夫だよ。ヒートボールやさっきの癒魔法はそんなに消費しないし、MPは少しずつ回復してくるから、ヒートボールや癒魔法のヒーリングを連発しない限り大丈夫だよ。」
その後はまいちゃんの癒魔法と自分の大剣スキルも上げる為に、盾でガードし火魔法で数を減らして、大剣でダメージを与え傷付いたら癒魔法で回復という戦い方で進んで行った。因みに、観察でドロップが分からなかったのが気になりステータス画面から観察スキルの説明を見てみると『アップデートの際、モンスターのドロップ種類が多くなった為、ドロップ情報は削除致しました。その代わりにステータス画面に『図鑑』の項目を設けました。戦った事のあるモンスターや手にした事のあるアイテム等の情報が自動で更新されていきます。観察スキルを所持している場合にはそれで得た情報も更新されます。ドロップ情報は実際に戦ったモンスターが落としたアイテムのみ記載されます。』との事だった。
それから時々戦闘しながら南へと歩いて行った。モンスターは1~3体位までだったので2人でも対処することが出来、気付いた時には道が見えなくなっていたが問題は無いと思いそのまま進んで行った。そして前に海が見え始め、断崖になっている所までたどり着いた。
「すごい綺麗な海だねー。高い所から見てるから遥か遠くまで見えるね。」
「そうだね。まさに絶景だね。これで夕焼けとかだったらもっと綺麗なんだろうな。」
「確かにそうだよね。いつかは朝昼夜も出来たらいいなあ。」
と言いながらそれぞれカメラで写真を撮っていく。
まいちゃんは「波打ち際にも降りてみたいなあ。でもここからじゃ降りれないし・・・」と言いながら崖から遥か下の砂浜を見た後、辺りを見渡している。
(よく下を覗けるなあ。怖くないんだろうか?)
と思っていると、「あ、あっちに下に向かってる小道があるよ。」と声がかかる。行って見てみると、崖から下に蛇行しながら伸びている1人分位しかない幅の小道があった。
「ここから下に行けそうだよね。という事で行ってみよー。」
とまいちゃんは嬉しそうに先に下に降りて行った。その後ろを付いて行こうとした時、後ろに気配を感じ振り向くと門の所で見た戦士っぽい格好をしたプレイヤーがいた。1人で立ち止まって此方に仮面の顔を向けている。戸惑っている様に見える足取りで此方に歩み出しだ瞬間、
「ダチ君早く行こー。」
と下からまいちゃんの声がかかる。
「え、あ、うん。」
と曖昧な返事をして仮面から視線を外しまいちゃんを追って下に降りる。
(なんかめちゃくちゃ怪しかったけど襲ってくる感じじゃ無かったな。どう考えても門からつけて来たんだから怪しいけど。)
小道ではモンスターは現れず、下まで降りることが出来た。小さい入り江みたいな感じで、右側は崖が海まで出ており、左側は波打ち際まで崖が出てきているが、崖の向こう側には行けそうな感じだった。
「東門からの砂浜より小さいけど、プライベートビーチって感じでこっちもいいかも!」
と言いながら、まいちゃんは嬉しそうに波打ち際に走って行っている。
(ゲイ用のビーチもこんな感じの所にあるのかな?)
と思いながらまいちゃんを追って砂浜に入ろうとした時、横に立て札が立っている事に気付いた。文字が書かれていたので読んでみると、『注意!この砂浜には周辺のフィールドに現れるモンスターより強いモンスターが現れます。特に職業ランク1のプレイヤーは危険です。』と書かれていた。
(どの位強いのか分からないけど、すぐにまいちゃんと合流して砂浜から出た方がいいだろう。)
と考え、すでに波打ち際まで行っていたまいちゃんの所に走って行く事にした。その途中、右前方の砂浜の砂が少し盛り上がったように見えた。顔だけ向けて見ていると、砂の盛り上がりが高くなりやがてまいちゃんよりやや高い身長の人型になった。足首から下は砂に埋まっている様な感じだ。走りながらそれを見ていると、
「きゃーー!」
と、まいちゃんの声が波打ち際から聞こえてきた。走る速度を一気に上げながら前を見ると、まいちゃんの前方に2体の砂人形が現れていた。
(くそっ!まだ距離があってすぐには行けない!)
と頭で考えながら全力疾走に切り替える。砂人形達は滑る様な速度でまいちゃんに近づいていった。まいちゃんは怯えているのか、少し後ずさりする事しか出来ていなかった。あっと言う間に近づいた砂人形の1体が片手を振り上げたかと思うと、腕が刃物になった様な感じでまいちゃんに斬りつけようとした。まいちゃんは怯えながらそれを回避しようと1歩後ずさろうとした時、足を滑らせて尻餅をついてしまう。結果、砂人形からの攻撃を避ける事が出来た。だがまいちゃんは怖いのだろう、その場から立つ事も出来ずに戦慄しながら砂人形達を見上げていた。もう1体がまいちゃんに斬りかかろうとしている。
(後ちょっとでまいちゃんの所に行けるけど、あの攻撃には間に合わない!)
と目の前のまいちゃんをすぐに助けることが出来ない事に苛立ちながら全力疾走を続ける。砂人形がまいちゃんを斬りつけた時、まいちゃんは杖を握り締めながら両腕を上げ、顔と上半身を防ごうとした。そして『スパッ』と言う音がした後、まいちゃんの頭の上に表示されているHPが7割程削られた。まいちゃんは腕を下ろしたかと思うと、両手首を握り締めながら、
「う・・うう・・・」
と呻きながら倒れてしまった。
(相当痛かったんだろう。毎日ラグビーしている自分でも1割で少し痛みがあったのだから、今まで痛みと無縁だったのであろうまいちゃんの7割は気絶してもおかしくない筈だ。)
最初に攻撃した1体が倒れているまいちゃんに再び斬りつけようとしていた。
(あれには間に合う。だがどうする。大剣で斬りつけても1発で倒せるとは思えないし、あいつらとは戦わず逃げるのが最善だろう。確かシールドプッシュは押し飛ばす効果があった筈だ。こんな時に初めて使うスキルに頼るのは不安だけど言ってられない!)
盾を前方に構え斬りつけようとしている砂人形に向かって突進していく。そしてぶつかる直前に
「シールドプッシュ!」
と叫ぶ。瞬間、盾が『ドクンッ』と鼓動した様な振動があった。盾が砂人形にぶつかった時『バチィン!』と言う音が鳴り、盾がぶつかった砂人形が、その後ろにいた砂人形を巻き込みながら勢いよく数m吹き飛んだ。驚きながらも素早くまいちゃんをお姫様抱っこで抱えてすぐに小道に向いて走り出す。そのまま砂浜の真ん中位まで来た時に、最初に自分が見ていた砂人形が左前から此方に向かって来た。両腕でまいちゃんを抱えている為、盾を構えることが出来ずシールドプッシュが使えない為、自分へのダメージ覚悟で左腕に付けている盾でまいちゃんを守りつつ砂人形を素通りする。砂人形は擦れ違った直後、自分の背中に斬りつけてきた。背中に少し切られた様な感覚が有り、2~3割程HPが減った。
(このくらいのダメージと痛みなら大丈夫だ。)
と、確認しながら全力疾走で走り続ける。しかし数秒後に再び背中に切られた感覚があった。振り返って見ると砂人形が追いかけて来ていた。
(向こうの方が速いのか。なんとか保ってくれたらいいんだけど。)
と思いながら走り続ける。だが後もう少しという所で再び斬りつけられHPが2割程になってしまう。
(かなり痛みも増してきたな。最悪、大盾を裏返してまいちゃんを乗せてアンダースローで投げるか?)
等と考えていると前方から、
「モウ少シダ!ソノママ走リ続ケロ!俺ガ少シ時間ヲ稼グ!」
と機械を通した様な声が聞こえ、先程見た戦士っぽい格好をしたプレイヤーが此方に向かって走って来ていた。驚いて声が出なかったが、そのままプレイヤーを交わして小道に向かって走る。その後は砂人形に攻撃されなかったので無事に小道までたどり着いた。まいちゃんを草の上に寝かせた後、先程のプレイヤーを確認する。プレイヤーは正面から砂人形の攻撃を盾でガードしながら此方に向かって後退りしていた。自分達が無事な事を伝える為に、
「此方は砂浜から抜け出しました!」
と大声で伝える。それを聞いたプレイヤーは、砂人形の攻撃を防御した後すぐに此方に向かって走り出した。砂人形も追いかけて来たが、プレイヤーが砂浜から出ると追いかけて来るのを止めて、ただの砂になったかの様に崩れていった。
まいちゃんは今も両手首を押さえながら倒れている。痛みのせいか、目もギュッと瞑っている。以前スライムから手に入れたポーションをまいちゃんの両手首に掛けてみる。するとポーションを掛けた所が白く輝き、HPが2割程回復した。持っていたポーションを全て使いまいちゃんのHPを全快させると、痛みが無くなったのか、まいちゃんは両目をゆっくりと明けて腕を擦り、少しした後ゆっくりと上半身を起こす。そして傍にいた自分を確認すると、
「うわーーーん!痛かったよーー怖かったよーー!!」
と自分に泣きながら抱きついてきた。
(とりあえず痛みと傷が回復したのは良かったんだけど、どうしたらいいんだ。剥がすのも可哀想だし。)
と思いながら、
「無事で良かったよ。」と声を掛ける事しか出来なかった。
数分後、落ち着いたのかまいちゃんが自分から離れた。涙で台無しになった顔のまま、
「ごめんねダチ君、危ない事を起こしちゃって。あたしがちゃんと立て札を見ていたら良かったんだよね。」
と俯きながら謝ってくる。
「まあ今回は無事で良かったよ。おれも昨日の砂浜にはモンスターが現れなかったから先入観があったし。次からは新しい所に行く時は注意しながら進むという事で良いんじゃないかな?」
と答える。その言葉にまいちゃんは
「・・・ありがとう。」
と言いながら此方に顔を上げる。すると、
「あ、ダチ君すごくHPが減ってる!回復させるね、・・・ヒーリング!」
と杖を上に掲げると自分の身体の周りに白い光の玉が複数表れ、身体が暖かくなりHPが7割位にまで回復した。背中の痛みも無くなった。
「ありがとう、まいちゃん。さて、今日はもうママの所に帰ろうと思うんだけど、まいちゃん立てる?」
「それが、腰が抜けちゃったみたいで・・・」
「うーん、まいちゃんは抱き抱えれるけど、帰り道のモンスターがなあ。」
と悩んでいると、
「デハモンスターは私ガ倒ソウ。私モ街ニ戻りタイカラナ。」
と先程のプレイヤーが話しに入ってくる。見ると何時の間にかHPが回復していた。
(回復アイテムでも使ったのかな?)
「えと、ダチ君。この人は?」
「おれがまいちゃんを抱き抱えて逃げている時に、砂人形の足止めをしてもらったプレイヤーだよ。あ、お礼を言ってなかった。助かりました。ありがとうございました。」
とプレイヤーに向かって頭を下げる。まいちゃんも
「ありがとうございました。」
と言いながら頭を下げる。
「イヤ、偶然通リカカッタンダ。2人共無事デ良カッタ。」
(偶然ねえ・・・。まあ助けてもらったのだし、まいちゃんもいるのだから追及は止めておこうか。)
と思いながらまいちゃんを抱き抱えて小道を登る。その途中まいちゃんが
「ちょっと今日は疲れたから、街に着くまで寝てても良いかな?」
と言ってきた。
「良いよ。疲れただろうし。」
と伝え、
「ありがとう。じゃあお休みなさい。」
と言って目を閉じた。そして小道を上り終えた時には静かな寝息が聞こえてきていた。
「デハ俺ガ先頭ヲ歩クカラ、ソノ後ヲ付イテ来てクレ。戦闘ニナッタラ少シ離レテイテクレ。」
「分かりました。お願いします。あ、おれはダチと言います。」
「ダチ・・・カ。俺ハブシト言ウ。」
「ブシさんですね。」
とやりとりをした後、北に向かって草原を歩いて行く。ブシさんは神経を集中して注意しながら歩いているからか、仮面と機械音声も合わさって話しかけにくい雰囲気が漂っている。特に見るものも無いので前のブシさんを眺める。
(あらためて見てみると、体型は自分より1回り小さいけどかなり大きいしガッチリしているなあ。背は180位あるんじゃないかな?体重もそこそこ有りそうだ。今まで見てきたプレイヤーの中では1番好みだな。顔と声が分からないのが残念だけど。装備は普通サイズの剣に、普通サイズの盾、他は自分と同じ重装備で正に戦士っていう感じだ。それでも重そうにしている様には見えないから筋肉・体力もあるのだろう。)
その後ふと上を見てみると『職業ランク2 修練戦士』となっていた。驚いて説明を見てみると、『修練戦士 武器のスキルをある程度上げた戦士。攻防のバランスが良く、近戦戦闘において覚えたアクティブスキルが役に立つであろう 職業補整 総攻5%上昇 総防5%上昇』となっていた。
(補整とか付くんだ。つまり武器のスキルをかなり上げているって事かな?)
と言う事で観察スキルで見てみると、『近戦武器(剣)初段・身体能力 初段・統率・光魔法(補助)』のスキルを持っていた。
(初段って言うのがかなりスキルレベルを上げた証拠って事かな?統率ってのは複数で戦闘する時に使うのかな?)
と考えていると、目の前のブシさんが立ち止まり、
「モンスターガ此方ニ向カッテ来テイル。少シ下ガッテイテクレ。」
「分かりました。気をつけて下さい。」
と言い少し下がる。その後、2体の草人形がブシさんの前に立ちそのまま2体同時にブシさんに向かって行った。ブシさんは盾を左側にして右手に剣を持ち、右側の草人形に勢いよく走りこんで行った。そして右側の草人形に切りつけながら左側からの攻撃を盾でガードして、右側を1撃で倒した後、盾を動かして左側も1撃で倒した。ドロップを回収した後、
「敵ハ倒シタ。大丈夫ダッタカ?」
と聞いてくる。
「はい。おかげで大丈夫でした。戦い慣れていましたね。」
「今日ハココデレベルアップノ為ニ戦ッテイタカラナ。」
「なるほど。・・・ブシさんについていくつか質問させてもらっていいですか?」
「・・・アア、イイゾ。」
「まず、何でつけて来たんですか?と言うか昨日も路地裏から此方を見ていましたか?」
「アア、昨日モ路地裏カラ見テイタ。・・・重戦士ノプレイヤーガドンナ戦イヲスルノカ気ニナッタノデ今日ハ付イテ来タンダ。昨日ハソノ職業ニ驚イテ凝視シテイタンダ。」
「(そんな理由だけでここまで付いてくるだろうか?何か腑に落ちないけど相手がそう言うのだから仕方ない。)分かりました。次に何故仮面と機械音声を付けているのですか?」
「リアルノ関係デバレタクナイカラダ。」
「(有名人か犯罪者か?でも助けてくれたのだから悪い人では無い・・・と思う。はぁ、体型はそこそこ好みなのにこれだけ怪しいとなあ。)分かりました。後は重い質問ではないんで緊張しなくていいですよ。重装備なのに動きが軽そうに見えたんですが、身体鍛えているんですか?」
「リアルデハケッコウ身体ヲ動カシテイルカラ体力ト筋力ハアル方ダト思ウ。鍛冶ノ親方ニモモッタイナイト言ワレタシナ。ト言ウカダチ君ノ方ガ凄イト思ウゾ。」
「(親方が言っていたのはブシさんだったんだ。確かにガッチリしているもんなあ。って君付けで呼んでる。まあ、いいけど。)おれもリアルで激しいスポーツやっているんでそこそこはあるかと。後、職業ランク2なんですね。観察スキルで見ましたが、初段って言うのはどうやったら取れるんですか?」
「観察スキルハソコマデ分カルンダナ。スキルヲ50マデ上ゲタラ初段ガ付イテレベルハ1ニ戻ル。職業ニ関スルスキルヲ初段マデ上ゲタラランク2ニナル筈ダ。」
「(じゃあ大盾と大剣スキルを上げたらいいんだな。けど50かあ、遠い道のりだな。)情報ありがとうございます。よく50まで上げれましたね。」
「・・・適性ガ高カッタノト、ゲームヲスル時間ガ大量ニ出来タカラナ。」
その後時々モンスターと対峙しながらも倒して通った道を引き返して行った。そして南門の入り口近くまで戻って来ることができた。
「ココマデ来タラ他ノプレイヤーモイルカラ、モンスターニ襲ワレル事ハ無イダロウ。」
「ここまで1人で戦闘してもらってありがとうございます。砂人形から守ってくれた事も含めて何かお礼したいんですが、何も無くてすみません。」
と頭を下げる。
「イヤ、オ礼ハイラナイノダガ・・・頼ミタイ事ガ2ツアルノダガイイダロウカ?」
「(何だろう。図々しい様な気がするけど聞いてみるか。)何でしょうか?」
「マズ、俺トフレンドニナッテモラエナイダロウカ?イタズラヤ変ナ事ニ使ウツモリハ無イ。強敵等デ困ッタ時ニオ互イ助ケ合エル様ニナリタインダ。仮面ヤ機械音声ヲ使ッテイテ、ストーカーミタイナ事ヲシテオイテ言エル立場デハ無イガ頼ム!」
と頭を下げてきた。
「(だから何で自分なんだ?もっと時間をかけてしている人達の方が強いだろうに。でもここで断るのもなあ・・・。はぁ、自分はどうして他人にこんなに甘いんだろう。)・・・分かりました。ただ、変な事に使ったら此方から切らせていただきます。」
「アリガトウ。後、口調ダケド敬語トカ使ワナイデホシインダ。モット砕ケタ感ジニシテモラエナイカ?」
「(そんなこと?謎過ぎて逆に怖い。まあ、いいけど。もうどうにでもなれ!)分かった。ってこんな感じでいいのかな?」
「アア、ソレデ頼ム。ッテ今フレンドカラダチノスキル見タガ、盾ト身体能力適性10デ近戦武器ガ9!コンナノ見タコト無イ!」
「え、そうなの?」
「アア。プレイヤーノ多クハリアルデ運動ヲアマリシナイノカ、身体能力ヤ武器等、肉弾戦ニ関スルスキルノ適性ハ低イ人ガ多インダ。俺ハ10人位ノ中堅チームニ入ッテイルガ、俺以外ノ前衛ノ身体能力ハ7シカナイ。8以上アレバ上位チームカラ声ガカカルソウダ。実際俺ハ剣ト身体能力ガ9アルカラ、イクツカノ最上位ヤ上位チームカラ声ガカカッタシナ。俺ガ知ル限リ9アルノハホンノ数人デ、10ハ聞イタ事ガ無イ。シカモ大盾スキルトカ存在スラ知ラナカッタスキルマデ10ダシ。コンナ前衛特化ヲ上位チームガ知ッタラ凄イ勧誘ガ来ルト思ウ。」
「そうなんだ。チーム以外のプレイヤーの適性は知らなかったからなあ。まあ、言うつもりは無いし今のチームを抜けるつもりも無いけどね。」
「俺モ言ワナイデオクヨ。・・・ジャアコノ辺デ別レル事ニスルヨ。マイチャンダッタカナ?ソノ子ヲ送ラナイトイケナインダロウシ。」
「そうだった。多分チームリーダーが心配していると思うし。」
「モシ何カ困ッタ事ヤ協力シテ欲シイ事ガ出来タラ、遠慮セズニチャットデ呼ンデクレ。逆ニ俺ガ言ッテクル事モアルカモ知レナイガナ。ソノ時ニマタ会オウ!」
と言い、門から街の中に入って行った。
(なんだか今日も濃いゲーム内容だった気がする。)
と思いながら抱き抱えているまいちゃんを起こす。
「ふぁ~あ。・・・あれ、ここは?」
「おはようまいちゃん。ここは南門前だよ。」
「もう着いたの?あ、怪我とかしてない?」
「大丈夫だよ。ブシさんが先頭を歩いてくれて、戦いも1人でモンスターを倒してくれたからね。」
「そうなんだ。あ、ブシさんは?」
「さっき別れちゃった。もう街のどこにいるかは分からないなあ。」
「お礼言いたかったなあ。」
「別れる時におれから言っておいたよ。とりあえずこのままママの所に戻ろうか。」
「そうだね。ってあたし重くない?降りようか?」
「え?凄く軽いよ。ちゃんと食べてる?って思うくらいに。それに寝起きだしまだ疲れているだろうしね。」
と言いながら街に入り、『可愛い女の子をお姫様抱っこしている巨漢』という自分の状況と周りの目を考えないようにして、魔方陣で『Bar Minority』に戻った。
戻るとママが「遅かったわね。お帰りなさい・・・って何でまいちゃんが抱っこされてるの?しかも泣いた跡まであるし!」
と言いながら此方に向かって来た。驚きながらも店内を見ると、カウンターに知らない女性が2人いて、食事しながら此方に顔を向けてきていた。
(客かな?)
と思いながら目の前に来たママに何があったかを説明した。
「・・・そんな事があったのね。まあ、無事で何よりだわ。まいちゃん、今度からは気を付けないと駄目よ?」
「うん。ダチ君とブシさんがいなかったらと思うと今でも怖いよ。」
「あ、そうだ。ママこれお弁当、結局食べなかったんだけどどうしようか。」
「じゃあ今ここで食べちゃったら?鮮度は落ちていない筈よ?」
と言われたのでカウンターに座ってお弁当を食べた。お腹一杯にはならなかったが、疲労が回復した様な感じがあった。まいちゃんも隣で食べており、ママは女性2人から料理を褒めてもらっていた。その後女性2人が帰った後聞いてみると、2人は偶然見つけただけだったらしいが、ここの料理が美味しかったらしく「また来ます。」と言ったそうだ。
「これでこの店も少しは収益が出ると最高なのよね。」
「あ、ママ。今回の戦利品です。」
と言って薬草と食用雑草を渡す。
「ありがとう。また新しい料理を作ってみるわ。」
「ママ、ダチ君。先にログアウトしていいかな?お母さんが心配しているみたいだから。」
「いいわよ。自分で歩ける?」
「大丈夫。サンドイッチで疲れも取れたみたいだし。ダチ君、今日はありがとう。じゃあお休みなさい。」
と言って2階に上がって行った。
「まいちゃん大丈夫かしら。今日の事でゲームを止めなければいいけど。」
「うーん。まいちゃんはこのゲームを気に入っていると思うから自分から止めるとは言わないだろうけど、お母さんが分からないなあ。」
「お母さんを説得できる事を祈るしかないわね。」
「そうですね。(さて自分も疲れたし、今日は終わろうかな。)ママ、おれも疲れたのでログアウトします。」
「分かったわ。今日はまいちゃんを助けてくれてありがとうね。チームリーダーとして、ブシさんにもお礼が言えたら良かったのに。」
「一応フレンド登録しているんで、また会ったら伝えておきます。」
「あらそうなの。じゃあ宜しくね。」
「はい。ではお休みなさい。」
と言い、2階の自室に戻る。そしてログアウトする為にステータス画面を開けると、4つのスキルが一気にレベルアップしていた。
(なんだこれ。気付かなかった。まず観察はレベルが上がっただけで効果は変わっていないな。次に大盾が『大盾スキルが30になり、大盾装備時の守備力が20%上昇するようになりました』、身体能力が『身体能力スキルが30になり、HP回復力が10%上昇するようになりました』、大剣が『大剣スキルが20になり、スキル『回転切り』を覚えました』となっている。大盾の20%は大きい気がする。『HP回復力10%上昇』とは、『魔法・アイテム・静止状態での自然回復等の全ての回復時の回復量が10%上昇する』事らしい。悪くない効果だと思う。『回転切り』とは、『剣を前に突き出しながら身体を1回転させて、周りの全方位の敵に攻撃する』だった。囲まれた時用という所だろうか。)
スキルを確認した後、ベッドの上で横になりながらログアウトした。
名前 ダチ
職業 ランク1 重戦士
スキル 盾(大盾) 適性10 レベル21→38
身体能力 適性10 レベル21→38
近戦武器(大剣) 適性9 レベル16→27
観察 適性8 レベル14→18
アクティブスキル シールドプッシュ
回転切り
装備 初心者用大剣 攻20+2(10%)
初心者用大盾 防22+4(20%)
初心者用鎧 防16
初心者用兜 防10
初心者用グリーブ 防10
敏捷の腕輪 防2
総攻22 総防64
肉体疲労10%軽減(身体能力)
HP10%上昇(身体能力)
HP回復力10%上昇(身体能力)
行動速度10%上昇(敏捷の腕輪)