VRMMO まるで日帰り旅行
東門から外に出ると一面の草原が広がっていた。西側の草原より広く、地平線が見えるくらいである。その光景に見惚れていると、
「ダチ君何その装備!全身鎧じゃん!重そー!」
「それで歩けるのか?さすが巨漢だな。」
「大きい剣に盾ね。やっぱり誘って良かったわ。」
と後ろから声が掛けられる。振り向くと3人の服装も変わっていた。まいちゃんは短めのローブにひざ位までのスカート、手には赤い珠がついた杖を持っていた。武蔵は皮でできた軽鎧と身長よりやや短い槍を持っており、腕には小さな盾を付けていた。ママは街中時とあまり変わらず、派手ではないロングスカートで武器は持っていないようだった。因みに4人の身長は、まいちゃんはおれの盾(足から胸位まである)で足から顔まで隠れて、武蔵の顔がおれの首下位で、ママが武蔵より少し高くなっている。
「なあ、ちょっとその盾持たせてもらってもいいか?」
と武蔵が言ってきたので外して渡す。武蔵は片手で少し持ち上げたが、数秒で下ろしてしまった。
「重過ぎだ。やっぱりこの身体じゃあ無理か・・・。」
少し落ち込んでしまったので「武蔵君は武蔵君なりの戦い方で戦えばいいと思うよ。」とまいちゃんがフォローを入れている。そんなやりとりをしていると近くにいた人達が、
「なあ、あんたたち。4人でチームを組んでいるのかい?4人とも魅力的だし、海まで行くなら人数が多いほうが良くないと思わないか?もし良かったら俺達のチームに入らないか?」と言ってきた。
(魅力的の意味は、おれは戦闘面・他は外見なんだろうな・・・)等と思っていると、
「あら、親切にありがとう。でも私達4人は目に見えない力で結ばれているの。悪いけどお断りするわ。」とママが言い、加入を拒否した。
(え、そんな力で結ばれていましたっけ?ただの少数派の集まりでは?)と思ったが、おれもいまさら他のチームに入る気は無いので黙っておく。言ってきた男性はちょっと驚いてそのまま引き下がっていった。
「さ、海に向かって出発するわよ。ダチ君、先頭お願いね。」と言われる。分かっていた事なので、そのまま遠くのほうに見える水平線に向かって歩き出した。因みに外に出ると、ステータス画面からみんなの攻と防の数値が出たので見ると、
ダチ 攻22 防62
まい 魔18 防12
武蔵 攻16 防24
ママ 攻0 防14
(・・・。これはおれが悪いのかな?みんな兜やグリーブもつけて無いからかな?とにかく壁になるしかないか。)と思っていると、草むらからスライムが3匹出て来た。歩くのをやめて盾を構えると3匹とも盾に向かって体当たりしてくる。そんな中、
「よーし。ダチ君が守ってくれている間に倒しちゃうぞ。」
「ダチのおかげで攻撃に専念できるのは助かるぜ。」
と後ろから声がかかる。2人がどんな事をするのか気になるので、スライムを気にしながら片目でチラッと後ろを見る。
「行っくよー。」とまいちゃんが言うと、杖の先から小さい火の玉が出てスライムに向かって行く。火の玉が当たったスライムは焼かれたようにドロドロになり、そのまま光の粒となって消えていった。「よーし、まずは一匹。でもスライムじゃあレベル上がらないんだよね。」と言っている。
武蔵は立ち止まって、なにやら瞑想みたいな事をしていると思ったら、バチバチっと音と共に身体が少し青白く輝いた。そしてかなり早い速度でスライムに近づき、槍で素早く突きスライムを貫いた。どうやら雷の補助魔法で行動速度が上がったみたいだ。その後補助魔法の効果が切れたのか、身体の輝きが無くなり、「もう少し持続したらなあ・・・」と言っている。
残った1体はおれが盾をずらして止めを刺す。ドロップ品は回収してママに渡す。
「3人ともお疲れ様。ダチ君が入ったおかげでいい戦闘内容だったわよ。複数の敵も大丈夫そうね。」とママが言った。
(おれは防御してただけなんだけどね。)と思いながら歩きを再開する。その後、スライムやスライムより少し強めの大芋虫や大蛾等が複数で現れるが、おれが防御し(無傷である)、2人が攻撃のスタイルで倒していった。その間にまいちゃんの火(攻撃)と魔力増長がレベル10となり、より強力な攻撃が出来るようになり、武蔵の身体能力と槍も10となり、疲れにくくなり槍での攻撃力も上がった。おれは新しい敵に観察をしてみたがレベルは上がらなかった。他のスキルも同様である。(因みに昨日ウルフからの攻撃で1割減っていたHPは、立ち止まっていたり座っていると少しづつ回復するらしく、いつの間にか全快になっていた)
戦闘を何回かしながら進んで行くと、目の前に砂浜と海が見えてきた。砂浜にはモンスターは現れないのか、複数のプレイヤーが所々にいて談笑したり波打ち際で遊んでいた。
「やっと着いたー。すごい綺麗!来て良かったー。あ、写真撮っとこ。」
「確かに綺麗だな。見続けても飽きないなこりゃ。」
「ふう。疲れたわー。あら、本当に綺麗ね。でもどこか座る所ないかしら?休みながら食事にしましょう。」
まいちゃんは一般雑貨屋で買ったと言うカメラで写真を撮っていた(おれも今度買っておこう。)おれもこの砂浜から見る水平線(遠くの方に島っぽいのは見えるけど)は綺麗だと思う。本当にゲームの中だとは思えないほどだ。4人で暫く見続けた後、砂浜近くの岩場に腰掛けて食事を取ることにした。
「口に合えばいいけど、どんどん食べちゃっていいわよ。」とママが言い、道具袋から焼きそばと焼きとうもろこしを出した。「みんなの水筒には麦茶を入れているから飲んでね。後、デザートにアイスがあるわよ。」と言いながら並べていく。
(どうやってあの短時間で作ったんだろう?それに出来立てみたいに温かいし。このゲーム内容の詳細をもっと知っておくべきだったかな?)と思いながら食べていく。どちらも旨みが出ていて美味しいし、疲労感も無くなった。
その後、そこそこの量があった焼きそばととうもろこしは、おれが6割、武蔵が2割、まいちゃんとママが1割ずつ食べて、3人はおれの食う量に唖然としていたが、アイス(もちろん溶けてないし冷たい)はみんな同じ量(4個のカップに入っていた)を食べた。(おれだけ食べ過ぎかな?ってか『女性の甘いものは別腹』は本当みたいだな。)
みんな食べた後はすぐに動けないのでしばらく座りながらのんびりする。ここにモンスターがいなくて良かったと思う。しばらくした後、
「さて、そろそろ帰ろうかしらね。でもまた歩くのを考えると憂鬱だわ。」とママが言っている。その意見に同意しながら辺りを見渡すと、以前山肌の大地頂上で見たのと同じ白い光の柱が見えた。
「あの白い光の柱が多分、移動用の魔方陣だと思います。街の門や広場にあるのと同じで瞬間移動できると思います。」とおれが言うと、
「あらそうなの?じゃあ私の店まで行けたら助かるわ。」と言い、4人で魔方陣の所まで移動し、ママが魔方陣に入ってみる。
「店まで行けるみたいだから、みんな店に帰るわよ。」と言うことで4人は店に一瞬で帰った。みんな揃うと、
「今日はみんな本当にお疲れ様。私自身、外へ出てあんなに綺麗な水平線を見れるなんて実現するとは思っていなかったわ。ドロップ品も多く手に入ったし、これで新しいものが作れるわ。」
「あたしも海に行けて嬉しかったよ。戦闘も危なくなかったし。」
「俺もだな。俺は戦えてスキルを上げれたのも嬉しかったけどな。」
どうやらみんな満足しているようだった。おれも、まいちゃんや武蔵等おれ以外の戦い方を見れた事、綺麗な海が見れた事、ママが作った料理が美味しかった事で満足している。その事を3人に伝えると嬉しそうにしていた。
「じゃあ今日は色々あって疲れただろうし時間も遅いから、解散にしましょう。明日以降ログインしたら是非この店に足を向けて頂戴ね。」とママが締めくくった。おれも今日は急展開過ぎて疲れたので、2階の個室に行ってログアウトした。
名前 ダチ
職業 ランク1 重戦士
スキル 盾(大盾) 適性10 レベル21
身体能力 適性10 レベル21
近戦武器(大剣) 適性9 レベル16
観察 適性8 レベル14
アクティブスキル シールドプッシュ
装備 初心者用大剣 攻20+2(10%)
初心者用大盾 防22+2(10%)
初心者用鎧 防16
初心者用兜 防10
初心者用グリーブ 防10
敏捷の腕輪 防2
総攻22 総防62
肉体疲労10%軽減(身体能力)
HP10%上昇(身体能力)
行動速度10%上昇(敏捷の腕輪)