VRMMO Minority4人組
今自分は、オカマに腕を掴まれたまま北大通りから広場を通り、西大通りを歩いている。「恥ずかしいので路地裏を通ってほしい。」と言ったのだが、「なんでわざわざそんな狭い所を通らなくちゃいけないの?別に悪い事をしているんじゃないんだからいいじゃないの。」と言いながらどんどん歩いて行く為、どこに向かうのか分からない自分は付いて行くしかない。もちろんそんな女性(ゲイから見ても美人だと思う、オカマだが)と巨漢(しかも職業は重戦士)が目立たないわけがなく、他のプレイヤーは声を掛けては来ず、逆に道を少し開けながらひそひそ話をしている。
(ああ、自分は今まで好みの熊や鍛冶場長に出会えたり、武器や防具を扱って戦闘したり、未知の世界を冒険したり、色んなものを見る事が出来たりして運が良かったから、その反動でこんな事になってしまったのだろうか・・・。あと1日遅かったら仮面が被れたのに、もうこれじゃあ意味がない。そして自分はどこに連れて行かれているのだろう・・・。)
等と暗い思いに浸っていると、西大通りの途中でオカマは路地に入って行った。そしてそのまま路地裏を迷路のように曲がったり直進したりして進んで行った。そしてプレイヤーの誰かが借りたのであろう店の前で止まった。
「ここが私が借りている店よ。」
店の看板には『Bar Minority』と書かれていた。
「みのりてぃ?」
「・・・マイノリティー、少数派って意味よ。あなた若いんだから、せめて英単語位は覚えた方がいいわよ?」
「・・・。(しょうがないじゃないか。体育会系に英語を求めないでくれ。自分は特に英語は苦手だし。)」
「さ、入るわよ。中の2人も待っているし。」
そう言ってドアを開け中に入っていく。自分もそれに続いて中に入る。室内は「明るい感じのバー」といった雰囲気でそれほど大きくは無く、コの字型のカウンターに椅子が8席分あるだけだった。その席に間1席分空けて2人が座っており、此方に顔を向けていた。
「あ、ママおかえりー。やっぱりその人だったんだね。」
と、向かって左側の人が喋る。外見は中学生位の女の子だ。かわいい感じの子で、喋り方からして明るい子なんだと思う。
「ママおかえり。今度は捕まえることが出来たんだな。俺は始めて見るけどデカ過ぎだろ。」
今度は右側の人が喋る。口調だけだと男だと思うけど、外見は自分より少し上の女性だ。顔は中性的な感じで男女問わず見る者を惹きつける位に綺麗だと思う。口調も相まって、男装したら凄くかっこよさそうだ。因みにオカマは美人だが女性の外見にしては身長がある(175位と思われる)。そして少しおばさんっぽく感じる。30代半ばくらいだろうか?
「ただいま。今度も捕まえる為に走って疲れたわ。さ、あなたは2人の間に座ってちょうだい。色々と説明するから。」
そう言われたので、「すみません」と言い緊張しながら2人の間に座る。すると、
「近くで見ると本当に大きいーー!」
「羨ましいぜ。俺もこんなガタイだったらなあ・・・。」
と言いながら二人が腕や肩を触ってくる。
(ななな、何なんだ!何で触ってくるんだ!初対面の人にする行動じゃないだろう!たとえ自分が好みの人を見つけてもいきなりはしないぞ!)
と思考パニックになっていると、
「こらこら、その子が困っているわよ。まだチームに入っていないんだから。」
とオカマが言いながら、いつの間にかカウンター側から出て来ていた。そしてみんなの前に飲み物を出しながら、
「オレンジジュースよ。飲みながら聞いてちょうだい。私の名前はママ。この『Bar Minority』の店長で、チーム『Minority』のリーダーよ。後、みんな知っているけどオカマよ。」
ママの自己紹介をオレンジジュースを飲みながら聞く。オレンジジュースはさっぱりしており果実の味もして美味しい。泉の水と同じ様に、身体の疲れが取れる感覚もあった。ママの自己紹介が終わると、
「じゃあ次はあたしね。あたしはまい。まいちゃんって呼んでね。リアルでは中学生で、昨日ママに誘われて『Minority』に入ったんだよ。因みに同姓を好きになるレズだよ。」
がはっ!!自分はオレンジジュースでむせる。
(レレレレズ!?中学生がそんな言葉言っていいの!?っていうか自分で認めてるの!?)
また思考パニックになっていると、
「次は俺だな。俺は武蔵。呼び捨てで呼んでくれ。その方が同姓の間柄っぽいしな。性別は女性だ。まいちゃんと同じく、昨日ママに誘われて『Minority』に入った。それと、性別違和症候群だな。まあ、俺の心と身体の性別が合ってないようなもんだ。」
今度は難しい言葉が出たので冷静に考える。
(性同一性障害ってやつかな?でもあれは病気じゃ無かったような・・・)
と考えていると、
「じゃあ最後にあなたも自己紹介してちょうだい。」
とママから言われたので緊張しながら、
「僕はダチと言います。男性で大学生です。今日、ママに連れて来られました。えと、ゲイです。」
言い終わると少しの沈黙の後、
「えー、こんなに身体がすごいのに「僕」なの!?」
「なんだその1人称は!男なら「俺」だろ!」
「確かに身体と合って無いわね。気弱そうな感じを受けるわ。」
と3方向から変なクレームが届く。いや、今まで「僕」で来ているんですけど。結局話し合いの末、ゲーム内では「おれ」を使うことにされた。女性(色んな意味で)って怖い。
「じゃあ本題に移るわよ。私はこの『Bar Minority』を切り盛りしながら、チーム『Minority』のメンバーを見守りつつ時々メンバーと出掛けたりしたいの。始めたばかりでお金が無くて、『Bar Minority』の借り賃と食材代等を稼がなくちゃいけないんだけど、私は戦闘に関するスキルを持っていないし、街で受けれるクエストも体力が無いからきついのよ。そこで昨日、チームに加入してくれたまいちゃんと武蔵君との3人で街の外に出てモンスターと戦ってみたんだけど、モンスターの数が多くて私が足手纏いになっちゃって、あまり稼げなかったの。まいちゃんと武蔵君は戦えるから、2人に頼んでモンスターからのドロップ品を分けてもらってもいいんだけど、戦える人数が多い方が2人にも負担が少ないでしょう?そう思っていた所にあなたを見つけたの。見た所強そうだし、もしかしたら私も一緒に外に行けるかもって思ったから頑張って誘ったのよ。」
つまり自分にチームに入ってもらい時々一緒に行動しながら、ドロップ品又はサクルを分けてもらいたい。って事だな。問題は・・・
「今の所サクルで欲しい物は無いからドロップ品の一部は渡せるし、時々の団体行動はいいんだけど、ぼk・・・おれのメリットは?」
「この『Bar Minority』の2階に個室があるから1部屋自由に使っていいわよ。それと店内での飲食料はタダか割引にするわ。後、冒険とかする前に寄ってもらったらお弁当くらいは出すわよ。因みに、この世界の飲食品にはHPやMP・疲労の回復や、一時的なステータス上昇等の効果があるわよ。」
なんだと。料理にそんな効果があったのか。確かにオレンジジュースは美味しい以外に身体の疲れが取れるような感覚があったな。個室は使わないかもしれないけど。まあどうせ『とりあえず入って問題があれば脱退する』と決めていたのだし、入るとするか。
「分かりました。ではとりあえずチームに入ります。」
「入ってくれるの?ありがとう。じゃあ申請するからステータス画面を開いてちょうだい。」
「わーい。ダチ君、これからよろしくね。」
「ダチ、お前の強さに期待してるぜ。」
みんなから祝福されつつステータス画面を開く。すると『ママからチーム『Minority』への加入申請書が来ました。申請しますか?』とメッセージが届いたので『はい』と申し込む。少しの後、『おめでとうございます。チーム『Minority』へ加入しました。』と表示がでた。頭上を見ると、職業の下にチーム名が現れていた。
「じゃあダチ君が加入したから外に出てみる?もしかしたら海までいけるかもしれないよ?」
「そうだな。4人だったら行けるかもな。」
「海かあ。見てみたいわねえ。じゃあ食べ物持って行ってみようかしらね。」
と、これから4人で海を目指して冒険することになったのだった。
名前 ダチ
職業 ランク1 重戦士
スキル 盾(大盾) 適性10 レベル21
身体能力 適性10 レベル21
近戦武器(大剣) 適性9 レベル16
観察 適性8 レベル14
アクティブスキル シールドプッシュ
装備 初心者用大剣 攻20+2(10%)
初心者用大盾 防22+2(10%)
初心者用鎧 防16
初心者用兜 防10
初心者用グリーブ 防10
敏捷の腕輪 防2
総攻22 総防62
肉体疲労10%軽減(身体能力)
HP10%上昇(身体能力)
行動速度10%上昇(敏捷の腕輪)