VRMMO 泉での攻防
山肌の台地頂上に着き魔方陣から出る。
(さて、どうなっているのかな?)
と思いながら泉の方を見てみると、泉の傍でこの前の熊と狼(?)が距離をはさんで睨み合っていた。熊から数歩離れた所では小動物達が身を寄せ合って震えていた。熊の肩と狼の前足はそれぞれ爪か何かで切り裂かれたような傷があり血を流していた。
(どうやら1回戦ったみたいだな。小動物達は恐怖で森まで逃げることさえ出来ないって感じかな。あの狼がモンスターで、倒すことになるんだろうけどどのくらい強いんだろう・・・)
大剣を抜き大盾を構え、ゆっくりと狼に近づきながら「観察」をする。
『ウルフ 狼族の下位モンスター。素早い動き・鋭い爪と牙で攻撃してくる。 レベル9 HP35 属性?? 弱点?? ドロップ品 ?? ?% ?? ?% ?? ?%』
(素早いのか。攻撃するチャンスがあればいいんだけど・・・)
ウルフが近づいてくる自分に気が付いたらしく、目だけを此方に向けてくる。さらに近づくと、ウルフは自分が狙われているのだと気付いたのか身体を此方に向けた、と思ったらいきなり突撃してきた。スライムとは比べ物にならない速さだ。自分は近づくのをやめ、大盾に体重を掛けた。
『ガァン!』と音と共に大盾からの衝撃が身体に伝わる。あまりの衝撃に1歩後ずさる。
(くっ!まるでタックルだな。盾に体重を掛けていなかったら倒れていたかもしれない)
そして反撃しようと大盾をずらし大剣で攻撃しようとすると、ウルフはその間に後ろに跳んで間合いを取ってしまった。
(確かに動きが素早い。このままではダメージを与えれない。どうする。)
再びウルフが突撃してくる。此方も大盾を構えるが、今度は少し斜めに構える。
『ガァン!』とウルフが大盾にぶつかった瞬間、身体への衝撃に耐えながら盾を身体の横にずらすようにして衝撃を和らげながら大剣で攻撃しようとしたが、なんとウルフが大盾の端に噛み付いてそのまま首を回して大盾ごと自分を振り回そうとする。
(なっ!このっ放せ!)
此方も大盾を振り回しウルフを剥がそうとする。と、此方が大盾を大きく振った時にウルフは自ら大盾から離れた。そして大盾を振り回していたせいで鎧でしか守っていない脇腹に突撃してくる。
(しまった!)
『ガァン!』と音と共に脇腹にかなりの衝撃と少しの痛みがあり、体勢を崩され片膝をついてしまう。HPも1割減っていた。とっさにウルフに向かって大剣を構えると、後ろに跳び間合いを取った。そして『ウオオォン!ウオオオォン!』と空に向かって吠えた。
(まずい。このままでは此方が倒される。吠えたのが仲間を呼ぶ為だったらさらにまずい状況だ。何か打開策は・・・)
体勢を立て直しながらウルフと辺りを見渡す。と、熊がウルフの真後ろからゆっくりと此方に近づいてきていた。小動物は森に逃がしたらしい。熊は自分をまっすぐに見つめてくる。その目には警戒の感じは無く強い意志が感じられる。自分が都合よく考えるなら、『自分がウルフを意識を此方に向けさせておいて後ろから奇襲する。』という作戦が思い浮かぶ。ウルフは自分に集中している為、背後の熊には気づいていない。意思が伝わるかどうか不明だが、熊と見つめ合いながら少し頷く(甘い雰囲気では無いのが残念である。)
ウルフが再び突撃してくる。ウルフを熊の手前に跳ばす為にはどうしたらいいか考える。止まって待ち構えていたり受け流そうとしても駄目だったので、思い切って此方からも大盾を構えて突撃し弾き飛ばすことにする。大盾に体重を掛けまっすぐに突撃する。
『ガァァン!』と今までより大きな音と衝撃が身体に伝わる。ウルフにとっては予想外の事だったのか、すぐに後ろに跳んで距離を取ろうとする。と、その着地点にちょうど熊が歩み寄っていた。ウルフは此方を見ながらの後ろ跳びなのでまだ熊に気が付いていない。
『グォオオー!』と熊が吠えながら着地寸前のウルフの背中と足に向かって爪を振り下ろす。突然の声にウルフが振り向いた時、背中と足が爪によって切り裂かれ血が吹き出る。『ヴォオオ!』とウルフが吠えながら着地するが足が切り裂かれたせいか、ふらついている。HPも4割減っていた。(これはチャンス!)と思い自分も大剣を構えウルフに向かっていく。
ウルフは熊からの追撃を逃れようと横に跳ぶが、足に力が入らないのか少しの距離しか跳べなかった。ウルフが着地しながら熊を睨んでいる所に『うおおおお!』と叫びながらウルフに突撃のまま大剣を思いっきり振り下ろした。ウルフは回避も出来ずに首を大剣によって切断されすぐに光の粒になって消えていった。ウルフがいた足元にはアイテムが2つ落ちていた。
(初めての苦戦だったからか、疲れた・・・。)
と思っていると熊が山脈に向かうであろう森林への小道をじっと見ている。見てみると先程のウルフと同じモンスターが2体、此方を見ていた。来るのかと思い戦闘体勢に入ったが、2体はそのまま山脈の方に消えていった。
(助かった。2体同時は熊がいてもきつかっただろうし。にしても何でいきなりウルフが戦いに来たのだろう?)
熊は次に此方を向いてくる。少し警戒しているようだった。戦うつもりが無いことを示す為に大剣を鞘に戻す。熊はそれを見た後、後ろを向いてそのまま小動物を逃がしたであろう森の方に歩いて行きそのまま消えていった。
(いつかは仲良く出来たらいいなあ。)
と、効果音が鳴り『大盾スキルが20になり、スキル『シールドプッシュ』を覚えました』『身体能力スキルが20になり、HPが10%上昇するようになりました』とアナウンスが流れた。『シールドプッシュ』を見てみると、『大盾を構えて突進することにより、相手にダメージ(小)を与えつつ押し飛ばす(小)』との事だった。次にウルフの落としたアイテムを「観察」すると、『狼の毛皮 服飾スキルで使用可』『狼の牙 NPCに売却可』だった。その後本来の目的である泉の水を道具袋に入っていた水筒のような入れ物に入れて、ついでに自分も泉の水を飲んで戦闘で疲れた身体を癒す。この後だが、ここで再びログインしたら新たなクエストが始まるかもしれないと思い、ここでログアウトすることにした。
名前 ダチ
職業 ランク1 重戦士
スキル 盾(大盾) 適性10 レベル14→21
身体能力 適性10 レベル14→21
近戦武器(大剣) 適性9 レベル11→16
観察 適性8 レベル10→13
アクティブスキル シールドプッシュ
装備 初心者用大剣 攻20+2(10%)
初心者用大盾 防22+2(10%)
初心者用鎧 防16
初心者用兜 防10
初心者用グリーブ 防10
総攻22 総防60
肉体疲労10%軽減
HP10%上昇