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苦手な方はご注意ください。

【競作】 死に愛された夏と二人

【競作・転】 死に愛された夏と二人

作者: 暁 時雨

 始まりました四連続競作イベント『起・承・転・結』


 今回は第三回目『転』。お題は『花火』です。


 今回の作品は四部完結の第三章となります。


 物語もいよいよ確信へと近づいてまいりました。

 前作から読んで頂いている方も、今回が初めての方も楽しんで頂けたら幸いです。

 儚く灯る線香花火が、暑い夏の夜をどんなホラーの花で彩るのか?

 それではどうぞ!

 第三章 『花の灯火と走馬灯』




【一、闇に浮かぶ五つの……】


(暗い……)


 何も見えない暗闇の中を俺は歩いていた。


(ここはどこだ?)


 俺は漆黒の闇の中をフラフラと彷徨う。


(どうして俺はこんな所にいる?)


 その問いに答えてくれる者はいない。

 ここにあるのは深い静寂と無限の暗闇だけ。


(……あれは?)


 そんな底知れぬ闇の中で俺はあるものを見つける。


(光だ!)


 俺は走る。

 小さな明りに必死にしがみつく、夏の夜の虫の様に。

 例えその身を焼かれると知っていても、それでも火に飛び込む蛾のように。

 これは本能だ。

 光にすがりたい……例えその先に後悔が待ち受けていたとしても。

 そう、何故なら人は暗闇で生きていくことはできないのだから。


(線香……花火?)


 無我夢中で走り寄った小さな光。

 それは小さな五つの線香花火。

 パチパチと、今にも落ちそうな膨らんだ頭。

 儚く、脆い……それでも必死に『自分』を主張し続ける線香花火。

 命が終わるその瞬間まで、彼らは自分が自分であることを決して放棄しない。

 そして語り続けるのだ。その小さな火花に全ての想いを乗せて。

 その姿を見て俺は思った。


(俺も最後まで自分の意思を貫き通す。大事な人を必ず救うと……!)


 それが俺の生きる意味。俺が続けて来た長い『旅』の目的なのだから。

 俺は線香花火を一つ、そっとつまみ上げる。


(これは……!)


 つまみあげた線香花火の光が映したもの。

 それは全ての始まりの記憶。

 『始めて』愛が死んだ日の物語。


(まるで、マッチ売りの少女……いや違うか)


 マッチ売りの少女が火の光に見たものは、沢山の温もりだった。

 暖かい暖炉、温かい食事、そして……温かな家族。

 この線香花火の火が映しているものは、俺の切り離したい過去。

 そう、思い出したくもない……冷たく忌まわしい記憶だ。


(お前は一体、俺に何を見せたいんだ?)


 線香花火に問いかける。

 無言でパチパチと自分の意思を語る線香花火。

 

(……わかったよ)


 そこまで言うなら見ようじゃないか。

 もう二度と、振り返りたくはなかった。

 如月奨きさらぎつとむ香月愛こうづきめぐみのこの長い長い、夏休みの物語を……。





【二、始まりの七不思議】


 忘れもしない。

 忘れられるわけがない。

 それは初めて愛が死んだ日。

 それは初めての肝試し。

 俺の学校に伝わる七不思議。

 『黒板から生える手』

 どこの小学校にだって一つや二つはある代物だ。

 予想できるわけないじゃないか?

 そんな、どこにでもある与太話が現実に起こって。

 愛を……黒板の向こうに引きずりこむなんて。


「助けて! 助けてつとちゃん!!」


 耳をつんざく愛の悲鳴。

 両手足を緑色の手に掴まれ、ズブズブと黒板に飲み込まれていく愛。

 それを何もできず、ただ見ていることしか出来なかった俺……。


「つとちゃん!! つとっ……!」


 俺の名前を必死に叫びながら、黒板に全身を飲み込まれた愛。


『ボキッ!バキバキッ! ゴキッ』


「ぁ……ぅぅぅ」


 次の瞬間、黒板の向こうから聞こえるのは何か硬い……そう、まるで骨でも砕くような鈍い音。

 その音に混じって、時折聞こえる愛の呻き声。

 気付けば俺は逃げ出していた。

 教室を脱兎のごとく抜け出し、上履きのまま校舎を飛び出して、一人蒸し暑い夜の街をあてもなくただ走っていた。

 そう、俺は逃げたかった。

 ありえない現実から、愛の悲鳴から、そして何より、何もできなかった弱い自分から……。





【三、リセット】


「ハァハァハァ……!」


 肩で息をしながら辿り着いたのは、町外れの小さな商店街跡地。

 近隣に大型ショッピングセンターができたせいでその役目を終え、未だ取り壊されずに町の隅でひっそりともう来ることはない客を待っている『お化け商店街』と呼ばれる一角。

 俺はまるで何かに吸い寄せられるように、フラフラとお化け商店街の中に足を踏み入れる。


「……」


 無言でお化け商店街を歩く。

 精肉店、魚屋、八百屋、小さなブティックに豆腐屋。

 全てシャッターが閉まってはいたが、それらの店の看板や店構えを見ていると、不思議とこの商店街がまだ人で賑わい、活気が溢れていた頃の面影を俺に思い起こさせた。


「えっ?」


 そんなことを思いながら、若干朽ち始めたメイン通路を歩いていると、ふと視界に入る小さな明かり。

 誰も居ないはずの商店街跡地に明かり……何とも言えない薄ら寒さを感じながらも、俺の足は止まることなく、真っ直ぐとその明りに向かって進んでいく。


「ゲー、セン?」


 半開きになっている開いているはずのないシャッター。そこから漏れる小さな光。

 そこは長年雨風に晒され、すっかりくたびれてしまった昔ながらのゲームセンター。

 

「……」

 

 恐る恐る俺は中に入る。

 テレビの情報でしか知らないジャンケンマシーン、スティックとボタンが足元についた足の短い画面付のテーブル、すっかりくたびれた三又フックのUFOキャッチャー。

 まるで、昭和の時代にタイムスリップしてきたかのような……そんな錯覚に俺は陥る。


「おや~、これは珍しい♪ こんな時間にお客さんですか~?」


「っ!?」


 キョロキョロと店の中を見ていた俺の耳に突然飛び込んでくる、少女のような声。

 俺は驚いてビクッと肩を震わせる。


「……」


 驚き横を振り返ると、そこには俺とそう年の変わらない、ベレー帽を被った女の子。


「こんにちは~♪ おっと、今はこんばんわですかね」


 少女がニコニコと笑いながら話しかけてくる。


「……君は?」


 訝しげな視線を少女に送りながら、俺は少女に尋ねる。


「一応、この店の主人ですよ♪」


「主人?」


「はいです♪」


 こんな女の子が店の主人?

 何でこんな時間にこんな場所に?

 そもそもこの商店街はもう潰れているはずでは?

 色んな疑問が俺の頭の中で一気に渦巻く。


「まぁまぁ♪ そんな細かいことはどーでもいいじゃないですか!」


 俺の更に濃くなる警戒の色を察したのか、少女はパタパタとおばさんのように手を振りながら、ケラケラとおどけながら笑う。


「どうでもよくはないだ……」


 俺が非難の言葉を吐こうとすると、ケラケラと愛くるしい笑顔を見せていた女の子の目がスッと細まり、先ほどの笑顔からは想像もつかないような、冷たい笑い顔を浮かべる。


「っ!?」


 その、刺すような冷たい笑顔を見て、俺は蛇に睨まれた蛙のように身じろぎひとつできなくなる。


「あなた……やり直したい過去があるんじゃありませんか?」


「!?」


 いきなりの確信を突いた少女の一言に、俺は驚き目を見開く。


「な、んで……それを?」


 頭に浮かぶ愛の顔。

 そう、俺はやり直したい。

 やり直して、俺は愛を救いたい。


「いえいえ、女の勘というやつですよ♪」


 今しがた感じた氷のような表情と、強烈なプレッシャーは嘘のように無くなり、少女は再びニコニコと愛くるしい笑顔を浮かべながらそう言う。


「勘……ね」


 俺は額に流れる嫌な汗を拭いながら、そう答える。

 すると、小さく長い息を吐き、緊張をほぐしていた俺に少女がにこやかに言う。


「なんと、そんなあなたにピッタリのアイテムがありますよ~♪」


「はっ?」


 少女の言っている意味がわからず、俺は間抜けな声で聞き返す。

 すると少女が再び、あの冷たい表情を浮かべながら、口元を歪め言った。

 そう、……これから先、俺の人生を大きく変えたその『一言』を……


「あるんですよ、ここに。過去をやり直す……そんな夢のようなアイテムが」


「っ!?」


「ただしやり直し一回につき、代償としてあなたの年齢分の寿命を頂きます」


 寿命……その言葉にポタリと、俺の額から不快な汗が流れ地面に落ちる。

 俺の年齢……つまりやり直し一回につき、十二年分の寿命を支払わなければいけないということになる。


(それでも、それで愛が救えるなら……!)


 目の前で死んでいた愛。

 何もできなかった自分。

 その事実に俺は歯を食いしばりながら、拳を痛いくらいに強く握る。


「さぁ、どうしますか?」


 天使の笑顔を浮かべた少女が提案したのは、残酷な悪魔との契約。

 俺は少女の目を真っ直ぐ見る。 

 そして俺は決意する。

 神でも悪魔でも何でもいい。

 それで、愛が救えるのならば……。 

 

「詳しい話を……聞かせてくれ」





【四、次なる記憶へ】


 ポトリ……。

 右手に持っていた線香花火の頭が地面に落ちる。

 役目を終えた線香花火は、命の限り鳴き続け死に行くセミのように、地面の上でゆっくりとその命の灯りを消沈させていく。


「……っ!」


 全ての始まりの時を思い出し、俺は唇を強く噛む。

 あの時の決意はなんだったんだ?

 何故、お前は何度も同じ時間を繰り返している?

 何故、お前は大切な人間を何度も目の前で死なせている?

 自責の念で頭がいっぱいになる。

 そして、俺は自分の不甲斐なさを責め続けながら、二つ目の線香花火を手に取る。


『パチパチパチ!』


 まるでこの時を待っていたと言わんばかりに、手に取った線香花火が激しく火花を散らす。

 その火花が見せるのは最初のやり直しの記憶。

 それは……初めて、愛を自分の手で犯した記憶。





【五、血吸いの十三階段】


 やり直し最初の舞台は『血吸いの十三階段』

 普段は何でもないただの十二階段が、夜になると一段増え、血を求めて人を狂わすという七不思議。


「十、三段……」


 本当に一段増えていた十三段目に立つ俺。

 その瞬間、俺の心に強烈に湧きあがる一つの感情。


『独占欲』


 愛が欲しい、愛の全てが欲しい。

 誰にも渡すもんか、誰にも触らせるもんか。

 泥水のような濁った感情が、とめどなく俺の心から溢れてくる。


『ダレニモ……ダレニモ……ワタサナイ!!』


 楽しそうに俺の後ろから階段を上ってくる愛。

 ゆっくりと愛に振り向く俺。

 愛に向かって突き出される俺の両手。

 そして……。


「あ、ああ……」


 正気に戻った俺の視界に写ったもの。

 まるで無造作に投げ捨てられた人形のように、手や足をありえない方向に曲げ、自らの鮮血で血吸いの十三階段を、鮮やかな朱に染める愛の姿だった。


(殺した、愛を殺した。誰が殺した? 俺が殺したっ!)


 痛いほどの静寂に包まれた夜の校舎に、俺の絶叫が鳴り響く……。





【六、続く悪夢】


 ポトリ……。

 右手に持っていた線香花火の頭が地面に落ちる。

 俺は震える自分の両手を見つめる。

 鮮明に蘇ってくる愛を突き飛ばした感触。


「うっ!」


 その感触に俺は強烈な吐き気を覚え、たまらず口を押さえる。

 もういい、もうたくさんだ。

 これ以上は俺の心が持ちそうにない。


「!?」


 だが、そんな感情とは裏腹に俺の手は無意識に次なる線香花火を手に取る。

 まるでそれは、もう既に決まっている事柄のように。

 俺の意思など関係ないと言わんばかりに。


『パチパチパチ!』


 先ほどのように、激しく火花を散らす線香花火。

 俺に心の準備をする暇などは、どうやら与えてはくれないようだ。

 火花が見せるのは次なるやり直しの記憶。

 悪夢は、まだまだ終わらない……。





【七、月光が照らす絶望】


 次なる舞台は学校、北側校舎の三階。

 そこの女子トイレの一番奥にある開かずの個室。

 昔、ある一人女の子がカッターで首を掻き切り、自殺したとされる場所。

 夜、その個室に近寄ると突然扉が開き、その女の子に中に引きずりこまれ、首を切られるという七不思議スポットだった。


「一応女子トイレなんだから、つとちゃんはここで待ってて」


 そう言って、一人トイレの中に愛が入っていく。

 この辺りから、俺の中にはある懸念が生まれるようになっていた。


『八月三十一日の肝試しの日、愛が死ぬ』


 だが、『考えすぎだ』という、今にして思えば甘すぎる思考と、女子トイレに入るという気恥ずかしさも手伝って、俺は愛を一人でトイレに行かせてしまった。


「……愛?」


 待てど暮らせど、トイレから出てくる気配のない愛を外から呼ぶ。

 だが、トイレの中はシーンと静まり返っており、物音一つ聞こえない。


「愛、開けるぞ?」


 抱えていた懸念がとてつもない不安に変わり、俺はたまらずトイレのドアを開ける。


「愛?」


 開け放ったトイレのドアの先……そこに広がっていたのは、不自然なほどに静寂を守っている誰もいない『無人』のトイレだった。


「! えっ、愛!? おいっ、どこ行ったんだよ!?」


 そこにいなければいけない筈の人間がいない……俺は半ばパニックになり、トイレの中に入る。

 閉まっている個室のドアを手前から順番に開けていく。

 一つ目……いない。

 二つ目……いない。

 そして一番奥……問題の三つ目のドアに俺は恐る恐る手を掛ける。


『ガタガタ』


 だが噂の通り、そのドアは押しても引いても開く気配がなかった。


「愛? 中にいるのか?」


 ガタガタと開かないドアを揺すりながら、俺は愛の名を呼ぶ。


『ピチャ』


 すると突然、そのドアの向こうから水滴が地面に落ちたような音が聞こえる。


「!? 愛、中にいるのか? おい、愛!」


 ドンドンと乱暴に扉を叩きながら、俺は愛の名を呼ぶ。

 だが聞こえてくるのは、先ほどと同じ水滴の落ちる音だけ。


『ピチャ……ピチャ……』


「くそっ!」


 強烈に巻き起こる嫌な予感に、俺は思い切ってそのドアをよじ登り、ドアの上の隙間に頭を突っ込む。


「愛! ……っ!?」


 個室の中に頭を入れた瞬間、生臭い鉄の臭いが俺の鼻腔をくすぐる。

 人生の中で何度か嗅いだ事のある臭い。

 そう、血の臭いだった。


「愛! くそっ!」


 暗いせいで個室の中の様子は全くわからない。

 俺はドアから降りると、思い切り助走をつけてその扉に力一杯の前蹴りを放つ。


『バキバキバキッ!』


 木の板が割れるような音と共に、ゆっくりと外開きのドアが鈍い音を響かせながら開く。


「め……ぐみ?」


 開ききったドアの向こう……ほのかな月明かりに照らされ視界に映る光景に、俺は膝から崩れ落ちる。

 黄金の月光に照らされた、虚ろな目でぐったりと壁にもたれかかる愛。

 首にはぱっくりと大きな口が開いており、そこから溢れ出ている『愛の命』が、雫となり地面を真っ赤に染めながら、ピチャピチャと死の旋律を奏でる。


「お、れのせいだ……俺が愛を一人で行かせたから……。俺が、俺が……」


 ガタガタと震える俺の身体に、後悔という大波が津波となって押し寄せてくる。


「俺のせいだ、俺の……う、うわぁぁぁっ!!」


 俺の絶叫に混じり、フフフッとせせら笑うような女の子の声が聞こえた気がした……。





【八、条件】


 ……気付くと俺は再び深い闇の世界に佇んでいた。

 足元には役目を終え、記憶の光を失った四つの線香花火の残骸。

 黒板から生える手、血吸いの十三階段、開かずのトイレ、真実の鏡。

 そして、俺は先ほどまで『血染めの桜』の記憶をその灯火に映していた、頭の落ちた線香花火を地面に乱暴に投げ捨てる。

 

「あんたの言う『条件』はこれで満たしたぞ」


 思い出したくもなかった記憶を嫌と言うほど見せられ、怒りと後悔で頭がおかしくなりそうな俺は、それでもなんとか平穏を装いつつ、トーンの落ちた声でそう真っ暗な空に告げる。


『おつかれさまでした。これでめでたく、わたしの出した課題は終了です』


 空から聞こえるあのゲーセン店主の少女の声。


「これで、次のやり直しは今までの『記憶』を持ったまま、やり直しができるんだな?」


『はいです♪』


 少女が教えてくれた愛を救う方法……それには二つの条件があった。

 一つは過去の記憶を持ったまま、やり直しをすること。

 今までは過去の記憶を、やり直しの世界に引き継ぐことはできなかった。


『ですが、これまでの過去の記憶をこの『思い出花火』で振り返ることで、これまでの過去の記憶を次の世界に持っていくことができます』


 そう言って少女が俺に差し出した五つの線香花火。

 その思い出花火の記憶をこうして全て見たことで、今めでたく一つ目の条件は満たした。


『行かれるのですか? 『最後』の世界に』


「あぁ」


 俺は頷く。

 このやり直しを行うことで、俺は完全に寿命を使い切る。

 もう、やり直すことはできない。

 正真正銘、愛を救う最後のチャンスだ。


『二つ目の条件……忘れていませんよね?』


「大丈夫だ」


 俺はぶっきらぼう少女の問いに答える。


『本当に、後悔されないんですね?』


「あぁ。何度もそう言ってるだろ」


 俺は目を瞑り、最後のやり直しへの準備をする。


『わかりました……それでは、いってらっしゃい』


 その瞬間、これまでのやり直しの時と同様、世界が瞼の裏で目まぐるしく巻き戻っていき、同時に強烈な眠気に襲われる。


(二つ目の、条件……)


 この世界では、その日に死ぬ人間の数は、俺たちが『神』と呼んでいる存在の手によって予め決められているらしい。

 だが、『誰が死ぬか』までは決められていない。

 決まっているのはあくまで『その日に死ぬ人間の数』だけだ。

 

『つまり二つ目の条件……それは、代わりに死ねばいいのですよ。愛さん以外の誰かが……』

 

 俺は少女が語った二つ目の条件を思い出しながら、深く心地よいまどろみに意識を預けた……。



第三章 『花の灯火と走馬灯』~完~ 

 如何だったでしょうか?

 

 今回は過去を振り返るという形で、これまで不明瞭だった物語の部分を明らかにしてみました。

 そして遂に愛を救う方法を知った奨。

 愛を救うため、奨は二つ目の条件をどうクリアするのか?


 というわけで連作第三章でした。

 次回はとうとう最終章【結】 投稿は8月24日(土)になります。

 

 奨と愛の長い長い夏の物語もいよいよ完結です。

 第四章も、もしお時間がございましたらお立ち寄り頂ければ幸いです。

 それでは、ご読了ありがとうございましたm(__)m

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[良い点] こんにちわ♪ 今回の作品はSFぽいですね。 AならばB、リング系のちゃんと意味がある、知的なホラー感覚がとってもいいです。 最終話で伏線が回収されるのがとても楽しみです。 [一言] 普段の…
2013/08/16 16:53 退会済み
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[一言] 【競作・転】死に愛された夏と二人、拝読させて頂きました。 線香花火が奨に見せ続ける、忌まわしいとしか言いようのない光景のリフレイン。どれひとつとっても二度と見たくない、経験したくないという光…
2013/08/14 23:39 退会済み
管理
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