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第8話 彼女の3年間奮戦記

あぁ、周りの視線が痛い。特に男共の。


俺は今、アンジュさんとジュリに頼まれ、町の中を案内中。その結果、周りの視線を集めまくり。


理由は分かりきっている。俺達の容姿に惹き付けられているのだ。


自分で言うのも何だが、俺は絶世の美女だ。サラサラ、艶々の長い黒髪、切れ長の紫の瞳、新雪のような白い肌。スタイルも抜群で巫女服着用。


アンジュさんは、サラサラの長い銀髪に切れ長の赤い瞳、白い肌。やはり見事なスタイルで、スーツ姿が決まっている。


ジュリは、銀髪のショートにパッチリした赤い瞳。白い肌。ややスレンダーだが、ボーイッシュな服装が良く似合っている。


と、この様に三者三様で、周りの視線を集めまくっていた。


俺としては、今すぐ自宅に帰りたかった。俺は周りに注目されるのが、嫌いなのだ。


俺一人だけでも、注目されまくるのに、三人になったら、更に大変な事になった。


挙げ句の果てに、男女を問わず、俺達に言い寄って来る。鬱陶しい事、極まり無い。


「一緒にお食事でも…」



「写真撮らせて下さい!」


「お姉さまと呼ばせて下さい!」


その他色々…。


俺はうんざりしていたが、アンジュさんとジュリが全て対処してくれた。


ありがとう、二人共。俺には無理。元、一般人だし…。


そして今、俺達はベンチに座って休憩中。俺の両側にはアンジュさんとジュリが座っている。美人二人に挟まれ、いわゆる両手に花の状態だ。でも今の俺は女。素直に喜べない…。


前世では考えられなかった状況だな。女っ気0だったからな。女になってから、女っ気が増えるとは…。




「で、ここが冒険者ギルド。俺は塔で見つけた物の内、不要な物を買い取ってもらっている」


町の案内を再開、と言っても俺自身、それほど町の中に詳しい訳ではない。


そんな俺が二人を案内したのが、冒険者ギルド。俺が比較的、立ち寄る場所だし、二人が俺の塔探索に同行する以上、ここを教えておく。表向きは二人共、冒険者だからな。


「エリスさん、こんにちは。今日は知り合いを連れて来ました」


俺は受付のエリスさんに話かけた。


「驚きました!カオルさんが他の人と一緒にいるなんて!」


えらく驚かれた。無理も無いか、俺は今まで一人でやってきたからな。


その後、エリスさんは俺の武勇伝を二人に聞かせ、なんとかギルドに登録させる様に頼み込んでいた。


もちろん、今回も断ったけどな。




「カオルは3年間ずっと一人でやってきたのですね」


「エリスさんもカオルさんの事、大絶賛してたっす」


「この3年間、真面目に努力してきたからな」


強くなって、誰も俺に手出ししようと思わない様にする為に…。


本当に前世とは大違いだな俺。




その後も何だかんだと二人に振り回された末にやっと帰って来た我が家。


「カオル、今日はとても楽しかったです!」


「現世をたっぷり堪能したっす!」


「そりゃ、良かったな…」


俺は心底、疲れたよ…。


だが、休んでいるわけにはいかない。夕食を作らねば。


何せ、アンジュさんもジュリも家事全般出来ないからな。よって俺が作るしかない。


「今日は、チャーハンにするか」


流石に今日は疲れたので、手早く済ませる。




「美味しいっす!カオルさんの料理は最高っす!」


「美味しいです、カオル。3年前より更に腕を上げましたね」


二人とも、俺のチャーハンを誉めてくれる。有り合わせの食材で作っただけだが、やはり誉められると嬉しい。


「そうだ、カオルさん良かったら、3年間の話を聞かせて欲しいっす」


「もう話しただろう、真面目に努力してきただけだ」


「もっと詳しく聞きたいっす、ギルドのエリスさんも、大絶賛してたっすから」


「私も興味が有ります。カオル、貴女がこの3年間をどう生きて来たのか?」


興味津々の表情で聞いてくる二人。これは話さない訳にはいかないか…。


「分かった、話す。でも御期待に沿えるかどうかは責任持てないからな…」




その夜、私はリビングでジュリと二人、話をしていた。


カオルは今日は疲れたと言い、一足先に入浴すると、寝てしまった。


「先輩、カオルさん、凄くハードな3年間を送って来たんすね…」


ジュリが珍しくしんみりした調子で言う。


「そうですね。良く今まで生き延びて来たものです」


私達がカオルから聞いた、この3年間の話の内容は大変な物だった。


狂魔学者に研究対象として狙われたり、国家間の騒動に巻き込まれたり、新たな魔王を生み出さんとする邪教集団と戦ったり、その他色々。


カオルは強大な力を持つが故に、多くの者達から狙われた。だが彼女は生き延びた。


勝つより負けない、無理をしない、無事に生き延びる事が最優先。されど、必要と有れば戦う。


これが、今のカオルの考え方。


「カオルさん、3年前より遥かに強くなったっすね。でも、血を見るのは嫌いだし、出来れば戦いたくないって言ってたっす」


確かにカオルは3年前より遥かに強くなった。だが、本質的な部分は変わっていない様だ。


カオルは力に溺れていない。血に餓えた殺戮者になっていない。その事が私には嬉しかった。


「何か嬉しそうっすね、先輩?」


「何でもありません!」


慌てて否定する私。そんな私をジュリがニヤニヤしながら見ている…。


「まぁ、良いっす。それじゃ、アタシももう寝るっす」


そう言ってジュリは自室に戻って行った。


「全く、あの子は…」


内心を見透かされ、実に恥ずかしい…。私としたことが…。


「私もまだまだ未熟と言う事ですね」


私は自分にそう言い聞かせると、自室に戻るのだった。


明日からの私達三人での塔探索に心踊らせながら…。


カオルは、戦うと決めた時は、非常にえげつない戦い方をします。呪術で、敵を弱体化したり、幻術で惑わせ、同士討ちさせたり。正面切って戦う事は稀です。


後、色々な事件を解決していますが、全て自分の為であり、世間の評判は結果的にそうなっただけに過ぎません。


誰も手出しできない程、強くなり、平穏無事な生活を手に入れるという目的の達成は、まだまだ遠い様です。



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