第7話 彼女は初めてのパーティーを組む
今日も朝が来た。
「あ~、今日もよく寝た!」
『おはよう、カオル。』
俺の相棒、『闇姫』が念話で朝の挨拶をしてくる。
「おはよう、『闇姫』。
さて、歯を磨いてシャワーを浴びてくるか」
『のぅ、カオルよ。一度で良いから、妾も連れて行ってくれぬか?』
「燃えないゴミの日に出してやろうか?」
『前言撤回じゃ』
やれやれ、全く変わらんな、この女好き魔扇は。
だが、3年前からずっと一緒に戦って来た、俺の相棒だ。
「さて、今日も行くか」
朝食を済ませた俺は、準備を整え、塔に向かう。といっても徒歩では無い。転移魔法で一瞬だ。座標さえ解っていれば可能。
俺は塔から帰る際、空間に魔力で印を付けるからな。
現在、塔内。700階を越えた辺りだ。この塔が何階まで有るかは、俺も知らない。
上に行くほど、出てくる魔物は強くなるが、同時により貴重な物が入手出来る。生きて帰る事が出来ればだが…。
ちなみに俺の目的は魔導書や魔導具の類。魔女だからな。
塔内にはいくつもの扉が有り、様々な部屋に通じている。中には魔導書の納められた部屋も有る。もちろん、スカや罠の部屋も有る。大勢死んだが、それでも塔を探索する者は絶えない。減りはしたが。
「ふぅ~、危なかった!」
魔女の眼で見つけた、隠し扉の向こうで、宝を守るガーディアンと戦闘。なんとか勝利。未知の魔導書を入手。
「本当にゲームみたいだな。ただし、命がけだがな…」
さて、帰るとするか。無理しないのが、生き残る秘訣。最強の魔女の俺だが、不死では無い。
家に帰った俺は、今日の収穫を整理。ぶっちゃけ、魔導書や魔導具以外は特に興味無い。
「今回の収穫はこの魔導書だけだな。ガーディアンは最後に自爆したからどうしようも無かったし」
瞬時に結界で防いだがヤバかった…。
「たまには、外で夕飯にするか」
ほぼ毎日、自宅と塔の往復だからな。転移魔法で外に出る。
俺の自宅は、この世界には存在しない、異空間に有る。要は、ハゲ神が俺の為に作った転生先の部屋と同じ。これも俺の3年間の成果だ。
ぶっちゃけ、平穏無事を求めるなら、部屋に閉じこもれば良いのだが、それはそれでつまらない。平穏無事を望んでいるはずなのに、矛盾しているな、俺。
まぁ、平穏無事と退屈は紙一重って事かな。
外に出た俺は町を歩く。異世界だけあって、人間以外の種族、エルフやドワーフ、獣人等が普通にいる。しかも、この世界は魔学文明が発展し、スマホ、ネットが当たり前。エルフがスマホを操作している姿は何度見ても、違和感を感じる。ファンタジーぶち壊し。まぁ、これがこの世界の現実。
俺は外での夕飯を済ませ、自宅に帰って来た。
「今日の収穫の魔導書の解読をするか…」
俺が特に磨きをかけているのが幻術。俺の戦い方は極力、戦わない。故に幻術は都合が良いのだ。
だが、この魔導書は残念ながら幻術系では無かった。
俺は解読を続けていたが、今日はここまでにして、風呂に入って寝た。
翌朝、シャワーを浴びて着替えている途中だった。
突然、何かが室内に転移してきた!。そして…。
「カオル、お久しぶりです!」
「カオルさん、お久しぶりっす!」
3年ぶりのアンジュさん、ジュリとの再会だった。
本来なら感動の再会と言っても良いはずだが、俺は今、着替え中。しかもパンティ一丁だった…。3年前のアンジュさんと初めて会った時を思い出す、俺だった…。
「すみません、カオル。わざとでは無いのです」
「本当っす。わざとじゃ無いっす。良い眼の保養になったっすけど」
「怒るぞ」
「すみませんっす!」
変わって無いなこいつは…。
俺は3人分の緑茶と茶請けの煎餅を出す。
そして、アンジュさんが口を開く。
「カオル、今回私とジュリは貴女の塔探索を助ける様、主より命ぜられました」
そんな事だろうと思っていた。あのハゲらしいが、ほいほい天使長と副天使長を派遣するな。しかし、それにしては、派遣するのが遅いな。天界の事情か。
「本当はもっと早く来たかったっすけど、高位悪魔達との戦いやら世界処分やらで忙しかったっす」
「それがやっと片付いて、今回の任務となったのです」
アンジュさんとジュリが、俺に同行してくれる。非常にありがたい話だった。実力は超一流だからな。
俺は二人に言った。
「では、よろしく。アンジュさん、ジュリ」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、カオル」
「任せて下さいっす!」
かくして、俺は異世界で初めて、パーティーを組んだのだった。
アンジュさんの見た目は、25~26歳ぐらい。銀髪のロング。赤い眼で色白のいわゆるアルビノ。
ジュリの見た目は、22~23歳ぐらい。銀髪のショートカット。赤い眼で色白。
別にこの二人に限った事では無く、暗黒天使は皆、アルビノです。