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声が聞こえる  作者: ぴら
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おしどり夫婦

 

 声が聞こえる。

 

 少年のような、女性のような、いろんな声。

 その声は語る。


 『戻ってきて。目を覚まして。帰ってきて。』


 どこに?自分は眠ったりしていない。帰るもなにもここが我が家。


 ただ、とても焦っている。泣きそうな声で訴えかけるその声はどこか懐かしかった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 シュリアンナというこの国は皇帝陛下とその后がとんでもなく仲が良い国で評判である。

 そのため、皇帝陛下、皇后を守る専属騎士、通称"皇士(こうし)"であるこの四人はいつもいつも苦労している。


 「セイル様、いい加減にしてください…、マジで」

 その皇士の一人であり、戦士の肩書をもつアル=ノーディリスは陛下の寝室前で体はドアを叩き、心の中では頭を抱えていた。

 「一体、婚儀を済まされたあとから何日たってるとお思いですか!?一週間だぞ、一週間!おかげでこっちはてめぇの代わりにどれだけの仕事を、執務をこなしたと思っているんです!?」

 ところどころ言葉づかいが悪いのは御愛嬌。出身が男爵クラスの身分の低い貴族出身でもセイルの幼馴染なら、これぐらい言っても許される。はず。何より今のアルの中では怒りの方が敬う気持よりかなり上回っているので、仕方がない。

 ドンドンと扉を叩いていると、ひょっこり現れた現・皇帝陛下セイル=オルガー。ものすごーくしあわせそうにふわふわした笑顔でアルに向かって言った。

 「んー、暇すぎてシルシアちゃんとデート行っちゃうくらい?」

 「てめぇ、いいからさっさと出てこいやー!!!!!!」

 セイルがふざけているのがわかったアルは怒りが頂点に達し、ドアを蹴破り、寝室へ。

 

 セイルの妻であるレナ=オルガーはそこにはいなかった。


 「…、へっ?」

 てっきりあの妹もこの馬鹿陛下と一緒になってにやにやしているかと思ったのに。

 

 「なんで、いないんだ…?ま・さ・か」

 「んー、それはケンカしちゃったからなんだなー、ハハハ…」

 

 と、今度はものすごい負のオーラを出しながらすごすごと部屋に戻ろうとするセイルの首根っこを掴み、執務室に連れ戻す。

 このクソ忙しい中にまたひとつ面倒事が増えた。この二、三カ月こいつらの婚儀の準備から何までロクに休めていない。そのことをこの馬鹿夫婦に知ってもらわないとならないようである。


 とりあえず、馬鹿な妹を連れださねば。

 「ぜってー、こいつらにも俺たちと同じ忙しさを味あわせてやる…」

 アルは執務室にセイルを放り投げて鍵をかけて閉じ込め、実家であるノーディリス家に向かった。

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